Vol.1免疫細胞療法

 

免疫抑制細胞を阻害する薬剤の開発より,免疫細胞療法の効果が高まる可能性

         
     これまで,免疫細胞療法は多くの研究機関で研究が進められていました。 患者自身の免疫力を高め,がんを攻撃する治療なので,抗がん剤や放射線治療のような副作用もほとんどなく,手術のような身体的負担もなく,ある面では理想的な治療法ともいえます。

 しかし,リンパ球を活性化したり,その数を大幅に増やすことなどは成功してきましたが,その効果が思ったようにでないケースもありました。

 ところが,近年の研究により免疫力を高めても,免疫細胞ががん細胞を思うように攻撃しない原因の一つとして,がん細胞がこの制御性T細胞(免疫制御細胞)を盾として,がん細胞のまわりをとりかこませ,リンパ球が攻撃できないよう自らを守っているというシステムが明らかになったのです。

 この制御性T細胞は抑制性サイトカインであるIL-10やTGF-βなどを産生して,がん細胞を攻撃するT細胞の活性化を抑制していると考えられていますが,その詳しいメカニズムは明らかになっていません。

        現在,成人T細胞白血病(ATL)の治療薬として販売されている抗CCR4抗体モガムリズマブという治療薬は,この制御性T細胞と結合し,この細胞を排除できることが可能であることがわかり,臨床試験が進行中です。

 この免疫制御細胞はがん細胞のためだけにあるわけではありません。 

 個体自身の免疫が時として過剰になり,自らの組織を攻撃しないよう機能するものが,制御性T細胞なのです。

 この細胞は大阪大の坂口志文教授が発見しました。
 
 

 また,このT細胞の攻撃能力を無力化することを防ぐ治療薬も登場しています。 

 たとえば,2011年にアメリカのFDA(食品医薬品局)で承認されたイピリマブという薬品は,T細胞の活性化を抑制するCTLA−4と呼ばれる受容体に結合することで,T細胞の無力化を防ぐことが可能となりました。

 さらに,単クローン抗体であるDTA−1が制御性T細胞を減らし,T細胞を活性化することがラットの実験により成功したため,現在では人の単クローン抗体を作成して,実験を進める段階となっています。
 
 また,未だ作用のメカニズムははっきりとわかっていませんが,シイタケの菌糸体がこの制御細胞の力を弱めることも明らかになりました。

 これまで,アガリクスやシイタケなどに含まれるβ−グルカンと呼ばれる多糖類が免疫力を高めることは知られていました。

 しかし,このシイタケの菌糸体が制御細胞の力を弱めるということは知られていませんでした。今後の研究により,他のキノコの菌糸体にも同様の効果があると明らかになる可能性もあります。

 今まで,抗がんサプリメントとして,民間で使用されてきたキノコが再び,脚光をあびるようになるかもしれません。


 いずれにせよ,このがん細胞に関わる免疫制御細胞の発見とそれを阻害する薬剤の開発の成功により免疫細胞療法は大きく前進したことになり,今後の成果が期待されます。

   
         
   
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