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サイトカイン療法は免疫細胞が産生する蛋白を使う非特異的免疫療法 |
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サイトカイン (cytokine) とは,免疫細胞などの細胞から放出される微量タンパク質であり,細胞のレセプターに結合することで,細胞活性,増殖,細胞自死など生理的変化を与えます。
サイトカインの機能はホルモンと似ていますが,ホルモンは,低分子のペプチドが多く,特定の臓器から放出されるという点で異なります。
また,リンパ球に関係するサイトカインを,リンフォカイン (lymphokine) と呼んでいます。
サイトカイン療法では,サイトカインの機能を利用して,免疫細胞を活性化,増殖させることにより,免疫反応を高めようとするがんの免疫治療です。
現在では,インターロイキンやインターフェロンなどのサイトカインは遺伝子操作による細菌や培養細胞での大量生産が可能になり,医薬品として認可されています。
サイトカインは100種類以上存在することが確認されていますが,がん免疫療法に利用されているのは数種類です。
サイトカイン療法の多くは,発熱や悪寒などの副作用がともないます。
サイトカインの本来の作用として,体温を上昇させる機能があります。
たとえば,風邪をひいた時などに発熱するのは,ウィルスに対して免疫細胞が活性化することで,サイトカインの放出量が増えることにより,発熱します。
免疫細胞から放出されたサイトカインは,脳にはこばれ,プロスタグランジンという物質の産生を促します。
この物質が脳の体温を調節する中枢にはたらきかけ,体温を上昇っせるのです。
この体温の上昇により,免疫細胞は活動しやすくなり,ウィルスを攻撃する力も大きくなるというわけです。
サイトカインの点滴による全身投与では,効果を発揮するだけの量を投与すると発熱やむくみなど副作用が強すぎるという問題もあります。
そこで,現在は腫瘍局所への投与や,サイトカインの遺伝子を利用した治療法が試みられています。
がん免疫療法に用いられる主なサイトカイン
種類 |
効果と副作用 |
インターロイキン2 (IL2) |
免疫細胞であるT細胞を増殖させる機能があります。
転移性腎細胞がんや転移性悪性黒色種に対して,15~20%の確率で,腫瘍の増殖が抑制されたり,縮小が確認されています。
日本では,転移性腎細胞がんに対して,保険適用が認められています。
副作用としては,血管から体液がしみだし,全身のむくみがみられます。
また,臓器の機能低下や,低血圧などが起こることもあります。
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インターロイキン12 (IL-12) |
免疫細胞であるNK細胞やT細胞を刺激して免疫反応を高めたり,これらの細胞からのサイトカイン放出を促進させます。
動物実験では,転移を抑制したり,腫瘍を縮小させる効果が確認されています。
アメリカで開発された合成IL-12(レコンビナントIL−12)は臨床試験で強い副作用がみられ,死者も出たことからこの薬剤の開発は中止されています。
現時点では第I相試験が終了した段階で,有効かどうかの結論はまだ出ていません。
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インターフェロン
(IFN-α) |
慢性骨髄性白血病に対しては,世界各国で臨床試験がおこなわれ,化学療法と同等か,もしくはそれ以上の効果があると報告されています。
悪性黒色腫や腎細胞がんなどを対象にした試験もおこなわれています。
副作用として風邪様状態がみられたり,うつ状態を招くことがあります。 |
腫瘍壊死因子
(TNF) |
TNF(腫瘍壊死因子)は主としてマクロファージにより産生され,腫瘍を壊死させる作用があります。
動物実験ではTNFを投与により短期間でがんが縮小し,抗がん効果のあるサイトカインとして期待されましたが,全身投与では,発熱,血圧低下等の重篤な副作用が報告され,臨床試験も進んでいません。
そこで悪性黒色腫ではがん局所への注入が試みられより高い効果が認められたと報告もされています。
また,このTNFは抗腫瘍効果がみられる一方で,炎症を促進し,腫瘍を成長させてしまうはたらきもあります。
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