大腸がん・がん治療

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大腸がん
 近年国内の大腸がん患者は急増し,死亡者数は男性では肺がん,胃がん,肝臓がんについで第4位で,女性では胃がんに続いて第2位です。

 大腸は結腸と直腸からなります。結腸と直腸をあわせた長さは1.5mほどで,大腸がんを発生部位によって結腸がんまたは直腸がんとよぶこともあります。

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 大腸の壁の構造は,内側から粘膜,粘膜筋板,粘膜下層,固有筋層,漿膜下層,漿膜という層からなりたっており,がんはこの粘膜から発生します。

 大腸がんはその形態により,腺がんと表在性のがんにわけられます。大腸がんの90~95%をしめるのは,粘膜層の腸腺に発生するがん(腺がん)です。このタイプのがんは比較的発見が容易で,ポリープががんに変化するまで何年もかかるため,ポリープのうちに切除すれば予防ができます。

 大腸がんの生存率は比較的高く,5年生存率は平均60%~70%です。がんが腸壁にとどまっている早期のがんでは5年生存率は90%になります。

大腸がん進行度とリンパ節転移率

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大腸がんの原因

 大腸がんの原因はまだ十分に解明されてはいませんが,それでも近年の研究により,大きく2つの要因が関与していることがわかってきています。その一つは遺伝的要素であり,もう一つは食生活です。

 大腸がんは遺伝的傾向が強く,すべての大腸がんのなかで,約50%は遺伝によるものであるという研究報告もあります。大腸がんの患者の80%は細胞の増殖を抑えるApc遺伝子になんらかの異常があるとみられています。

 特に遺伝性と考えられる大腸がんになりやすい病気として家族性大腸腺腫症があります。これは遺伝的にポリープを発生しやすい家系の人が発症しやすく,この病気になると大腸内に無数のポリープが発生し,やがて腺がんへと発展します。

 また遺伝性大腸がんとして家族性大腸がん(遺伝性ポリポーシス性大腸がん)があります。 このがんはポリープを多発させないまま大腸がんを発症させるもので,遺伝子の異常によるものであり,大腸がんの5%~10%を占めます。


 もう一つの要因である食生活に関しては,アルコールの多飲,喫煙,肉など動物性脂肪の過剰摂取,食物繊維摂取不足などがあげられます。

 あるデータによると,アルコール摂取量が日本酒にして1日平均1合以上2合未満の人は,飲酒しない人に比べて,大腸がんの発生率が1.4倍,1日平均2合以上の人は,2.1倍でした。(日本酒1合と同じアルコール量は,ビールで大ビン1本,ワインでグラス2杯,ウイスキーダブルで1杯程度)
  
 喫煙に関しては,毎日の喫煙量が多く,喫煙年数が長い人ほどリスクが高く,大腸がんでも若いころから喫煙をしていた人ほどがんの発症率が高いというデータもあります。

 動物性脂肪は,消化・吸収される過程で悪玉菌により,発がん物質が生成され,腸の粘膜をがん化させると考えられています。

 食物繊維は発がん物質が粘膜に接触することを減らし,発がんリスクを低下させます。また食物繊維が腸内細菌の発酵により分解されると,単鎖脂肪酸が産生されます。単鎖脂肪酸は,悪玉菌の増殖を抑え,乳酸菌などの善玉菌を増やし,大腸がんの発生を抑制します。

 
 このようなことから第二次大戦後大腸がんが急激に増加したのは,食物繊維摂取の少ない肉食を中心とした欧米型の食事の普及が原因と考えられています。

大腸がんの症状
 大腸がんに特有の症状はありませんが,血便や便通異常(便秘や下痢),腹痛などがあげられます。
 2cm以下の早期がんは無症状のことが多いのですが,便に少量の血液がまじることもあります。

 肛門からの距離がある盲腸がんや上行結腸がんでは排泄までの長さがあるため血便を自覚することは少なく,腹部のしこりや貧血症状があらわれてはじめて気がつくこともあります。

 体の左側の下行結腸やS状結腸では,便も硬化しはじめるので,通過障害で便秘になったり,腹痛もあり,症状が重くなると腸閉塞を起こすこともあります。また肛門に比較的近いので,血便もわかりやすくなります。

 また直腸がんは肛門のそばなので,血液も赤みがあり,血便として気が付きやすい部位です。腫瘍がここにできるとその影響で便が細くなったり(便柱細小),残便感があったりします。肛門からの出血を痔と勘違いして
大腸がんの発見を遅らせてしまう人も多いので注意しましょう。


大腸がんの病期(ステージ)

 大腸がんの病期には,デュークス分類とステージ分類が使われます。大腸壁の中にがんがどの程度深く浸潤しているか,及びリンパ節転移,遠隔転移の有無によって進行度が規定されています。( )内は各病期の手術後の5年生存率を示します。

 この2つの分類はわずかな違いなので,デュークスAは0・Ⅰ期に,デュークスBはⅡ期に,デュークスCはⅢ期に,デュークスDはⅣ期に相当するものと考えられます。デュークス分類は,国際的に広く用いられています。

デュークス分類
デュークス A(95%) 腫瘍が3項目(単発,2cm以下,血管への浸潤を伴わない)のうち,すべての項目が合致し,かつリンパ節転移,遠隔転移を伴わないもの。
デュークス B(80%) 腫瘍が3項目のうち2項目が合致し,かつリンパ節転移,遠隔転移を伴わないもの。
デュークス C(70%) 腫瘍が3項目のうち1項目が合致し,かつリンパ節転移,遠隔転移を伴わないもの。
デュークス D(25%) 腫瘍が3項目のどれも合致しないか,リンパ節転移もしくは遠隔転移を伴うもの

ステージ分類

0期 がんが粘膜にとどまるもの  
I期 がんが大腸壁にとどまるもの
II期 がんが大腸壁を越えているが,隣接臓器におよんでいないもの
III期 がんが隣接臓器に浸潤(しんじゅん:周囲に拡がること)しているか,リンパ節転移のあるもの
IV期 腹膜,肝,肺などへの遠隔転移のあるもの



大腸がんの治療
 
現在大腸がんの最も有効な方法は手術と言われています。それは抗がん剤や放射線が大腸がんでは効果が低いという理由もあるからです。どちらかと言えば抗がん剤や放射線は手術を補助する目的で使われることが多いと言えます。
 がんの切除する方法は進行度や発症している部位によって異なってきます。

内視鏡手術
 がんが粘膜下層まで浸潤しておらず,リンパ節への転移がないものは早期がんに分類されこの場合約60%が内視鏡手術で治療できます。

 現在では早期がんは適切な治療を施せば100%治癒すると言われています。早期がんと診断されるのは大腸がんと診断される人の20~30%です。

 大腸早期がんで20mmまでのポリープ状のものは大腸ファイバースコープを入れ,スネアというリング状の器具でポリープを締め上げ,高周波電流で焼き切るポリペクトミーと呼ばれる治療が一般的です。

 また扁平なポリープには生理食塩水を注射し患部を浮き上がらせてスネアで締め上げ焼き切るストリップバイオプシーと呼ばれる治療法もあります。

 
腹腔鏡手術
 早期がんでも,内視鏡的治療が困難な大きながんには腹腔鏡手術が行われます。また最近では進行がんでも腹腔鏡手術が行われるようになりました。この方法は開腹手術に比べ,患者の負担が少ないという大きなメリットがあります。

 しかし,進行がんに対しても開腹手術と同等の安全性や治療成績が得られるかどうかは評価が定まらず,現在,国内では進行がんに対する腹腔鏡手術と開腹手術の臨床比較試験が実施されています。しかし今後は技術も進歩し,患者への負担の少ない腹腔鏡手術はその適応範囲が拡大されると予想されます。


開腹手術

 内視鏡や腹腔鏡手術もさかんに行われるようになりましたが大腸がんではリンパ節への転移が見られることが多く,現在でも大腸がんではリンパ節廓清のしやすい開腹手術が主流です。
 
 大腸がんの根治手術は転移からの発症を防ぐため病巣から約10cmくらい離れたところまでを切除し,腸管に近い1群のリンパ節だけでなく2群,~3群までのリンパ節を廓清し,腸管を縫合する方法が一般的です。また結腸がんの場合このような方法でも,手術後の機能障害はほとんど起こりません。

 直腸がんの根治手術は進行がんの場合,多くの問題を克服しなければなりません。それは直腸の周囲には,膀胱や尿道,前立腺,子宮,膣などの泌尿器,生殖器などがあり,さらに肛門など重要な器官があるからです。

 直腸がんの根治手術は,大きくわけて2種類あります。その一つは直腸とともに肛門も切除し,S状結腸に人工肛門(ストーマ)をつくる方法であり,もう一つは肛門括約筋を残して,直腸を切除し,腸管を縫合して肛門をそのまま機能させる括約筋温存直腸切除術です。

 現在では直腸がんの手術で約70%が肛門が温存され,下部の直腸がんでも約50%が温存されるようになってきています。

 さらに最近では泌尿器や生殖器の機能に関係する自律神経を温存させる手術も確立し,術後のQOLの低下を抑えることができるようになりました。

 しかし,病期が3期以降では骨盤内臓器全摘出手術が行われることもあり,この場合,排尿機能や性機能は温存できなくなります。したがってこの方法を実施する場合は医師から術後の障害についてよく説明を受ける必要があります。

 
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