濾胞がんは進行速度はゆるやかですが,骨や肺などに遠隔転移を起こしているか,いないかで手術も異なります。 右図のように遠隔転移がない場合,甲状腺の片側を切除する腺葉手術になります。 手術後5〜10年間は血中サイログロブリンが異常に上昇しないことを確認します。 また,遠隔転移がある場合ですと,甲状腺の全摘手術になります。 その後は放射性ヨードによるシンチグラム検査を行い,転移した状態の診断をします。 そこで,あらためて放射性ヨードを服用して転移したがんの治療を行います。 濾胞がんの場合遠隔転移をしても進行は遅いことが多いのですが,完全に治すことは難しいといわれています。
髄様がんには遺伝子(RET遺伝子)の突然変異が原因の遺伝性のものと,遺伝に関係ない散発型のものとがあり,血液の遺伝子検査で診断できます。 遺伝性の場合,甲状腺の両側腺葉(りょうそくせんよう)にがんができるので,甲状腺全摘手術が必要です。
リンパ節転移が予後を悪くするケースが多いので,リンパ節郭清も行います。遠隔転移が見られる場合には抗がん剤治療などが行われます。 予後は乳頭がんや濾胞がんなどと比較するとあまり良くありません。
すでに述べたように,未分化がんは悪性度が高く,手術だけでは対応できないことが多く,放射線治療,抗がん剤などを組み合わせて治療を行います。 抗がん剤はアドリアシン(ドキソルビシン)とシスプラチン(ブリプラチン),エトポシド(ラステッド)の3剤併用や最近ではタキソール(パクリタキセル)と放射線治療を組み合わせたり,他の抗がん剤の組み合わせも行われています。 悪性リンパ腫が甲状腺にできた場合,抗がん剤と放射線による治療が中心ですが,ひとりひとり悪性度が異なるため治療法も異なってきます。
また,昆布などの海藻類にはヨードが含まれていて、甲状腺機能を低下させる作用があるので,甲状腺の切除によって甲状腺機能が低くなった人は,昆布などに含まれるヨードの過剰摂取に気をつける必要があります。 退院後は当初は3ヶ月に1度,その後は半年に1度,そして1年に1回は必ず検査を受け,再発の早期発見に努めると共に,甲状腺ホルモンの低下を監視する必要があります。