膵臓がん・がん治療

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膵臓がん

 
 膵臓は胃の後部に水平に位置する長さ15cm程度の臓器です。 膵臓のはたらきは大きく2種類あります。その一つは血液中の血糖値をコントロールするホルモンの分泌であり,もう一つは消化を助ける消化酵素の分泌です。
 
 血糖値をコントロールするホルモンとして血糖値を下げるインスリンと血糖値を上げるグルカゴンがあり,これらがランゲルハンス島と呼ばれる内分泌細胞から血液中に送り込まれます。
 
 また消化酵素にはアミラーゼ,トリプシン,リパーゼなどの,炭水化物,たんぱく質,脂肪の消化を助ける酵素があり,これらを含んだ膵液が外分泌細胞から十二指腸へと送り出されます。

 膵臓がんは,近年増加傾向にあり,膵臓がんの死亡率は男性では肺がん,胃がん,大腸がん,肝臓がんについで第5位,女性では第7位で,日本では年間に約1万5千人が亡くなっています。膵臓がは早期では自覚症状があらわれにくく,進行も速いため,5年生存率もきわめて低く,治療が困難ながんと言われています。


 
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膵臓がんの原因
 現在のところ,膵臓がん発症の原因ははっきりと解明されていません。しかし統計学的には,喫煙,肉食過多などが原因と考えられ,糖尿病患者や慢性膵炎の患者も膵臓がんになりやすい傾向があります。また50歳以上の高齢者に多いことも特徴です。

 近年の研究により,膵臓がんの患者の90%が18番染色体にある「DPC遺伝子」と呼ばれるがんの発症を抑える遺伝子に変異が起こっていることが解明されています。現在遺伝子の変異による膵臓がんの早期発見方法が研究されています。

膵臓がんの症状
 早期では自覚症状があらわれにくいことが多いのですが,進行すると腹痛,背部痛,黄疸,体重減少,食欲不振などの症状が見られます。
 
 膵頭部と呼ばれる十二指腸側にがんが発症した場合は胆管がつまることにより黄疸の症状を示すことが多くなります。 また膵頭下部や膵臓の中央に位置する膵体部,膵頭部と反対側の膵尾部に発症した場合は黄疸は見られず,腹痛がおもな症状です。

 膵臓がんは腹部の鈍痛として現れることが多く,血液検査でも異常が発見されにくいため,病院でも胃炎や胆石のための検査しか行われないことが多いようです。そのためがんが発見できず,胃の痛みを抑える薬の投与で一時的に治癒したかの様に思えて,腹部の痛みが再発し,進行してしまっているケースがあるので注意が必要です。

 膵管造影剤検査はがん発見の確実な方法ですが,苦痛もありますので不安ならPET検査なども有効です。

膵臓がんの日本膵臓学界による病期分類

I期

膵臓がんの大きさが2cm以下で膵臓の内部に限局している状態

II期

膵臓がんは膵臓内部に留まっているが,大きさが2cm以上である。または大きさは2cm以下であるが,第一群リンパ節まで転移がある状態

III期

膵臓がんは膵臓の外へ少し出ているがリンパ節転移は無いか,第一群リンパ節までに限られている。または,がんは膵臓内部に留まっているが第二群リンパ節まで転移している状態

IV期

がんが膵臓の周囲の臓器や器官に浸潤しているか,遠隔転移がある状態

膵臓がんのUICC病期分類(国際的に使われている分類)

I期

膵臓がんが膵臓の内部に留まっているか,ごく近くの組織までに留まり転移は無い状態。

II期

がんは膵臓周辺の臓器や器官に浸潤しているが,リンパ節転移はない状態。

III期

がんは膵臓に隣接したリンパ節に転移している状態。

IV期

がんが胃や脾臓,大腸,大血管,肝臓,肺などに転移している状態。

 





膵臓がんの治療

 膵臓がんの治療は手術,放射線,抗がん剤の三大がん治療がありますが,進行度が速い部位のため,発見されてから手術で切除可能なケースは10%~40%程度です。放射線に対する感受性も低く,また膵臓がんの腫瘍は血流が少ないため,抗がん剤もあまり効果的ではないとされています。

手術
 早期の段階では最も治療効果が期待できる治療法です。膵頭部のがんでは,膵臓頭部,付近の胃のや十二指腸の一部,総胆管,胆嚢などを一緒に切除するのが一般的な方法です。最近では胃の出口にあたる幽門輪を残し,術後のQOLの低下を防ぐ方法も行われています。(全胃幽門輪温存膵頭十二指腸切除術) 
 
 膵体・膵尾部のがんは膵頭部を残して切除する方法が一般的です。また膵臓すべてを取り出す,全摘手術はインスリンの分泌がなくなり糖尿病になったり,外分泌系の消化酵素が分泌されなくなるため,最近ではあまり行われていません。

 膵頭部付近にできるがんは黄疸をともなうことが多いのですが,近年皮膚からチューブを挿入して胆汁を外に出したり,人工胆道が開発されたりして,開腹せずに黄疸の症状を軽くする治療が可能となっています。

放射線治療
 
膵臓がんは放射線に対する感受性が低いため,術中照射が効果的とされ,放射性物質をチューブに入れ,がんの中に埋め込む方法もあり,正常細胞へのダメージを少なくすることができます。
また抗がん剤ゲムシタビンとの併用は有効であるとの報告があります。
 
 体の深部で最大限のエネルギーを放出する粒子線治療は他の臓器の奥にある膵臓がんの治療には適しており,数少ない有効な治療法です。国内では臨床試験が行われているところです。

抗がん剤治療
 膵臓がんは抗がん剤は効きにくいとされ,複数の抗ガン剤を組み合わせることも多いようです。抗がん剤としてよく用いられるものにフルオロウラシル(5-FU)があり,がんの切除後に放射線と併用することで再発防止に効果があるとされます。
 
 最近細胞内でで代謝され,三リン酸化合物となり,DNAの合成を阻害する作用を持つ塩酸ゲムシタビンという抗がん剤が開発され,延命効果や疼痛緩和効果などが認められています。

分子標的治療薬
 現在,がん細胞の特異構造を標的としてはたらき,正常細胞への影響はないとする分子標的治療薬の研究が進んでいます。肺がんに効くと言われたイレッサの他にも同様の分子標的治療薬タルセバ(エルロチニブ)が開発され,肺がんや膵臓がんに投与の臨床試験が行われています。副作用として湿疹や下痢などが報告されていますが,効果を上げているようです。ただ臨床試験中のため保険の適用が受けられません。 

免疫細胞療法
 
手術もできない場合,免疫細胞療法も一つの選択肢ですが,そのなかでも活性化自己リンパ球療法は高度先進医療として8カ所の大学病院が指定を受け,実施しています。ここでは免疫療法は特別治療費として全額負担となりますが,診察や検査,入院費などは保険の適用を受けられます。

 また新しい免疫細胞療法の一つである樹状細胞療法に限れば東京女子医大病院,東北大学病院、福島県立医大病院,京都府立医科大病院などで臨床試験として実施されています。免疫細胞療法の実施病院に関してはがん治療の病院のページをご覧下さい。


膵臓がん予防最新情報
 果物や野菜を豊富に摂取していると膵がんのリスクが50%軽減することが,米カルフォルニア大学の研究で明らかになりました。

 今回の研究結果は,膵がん患者532例および無作為化により抽出したサンフランシスコ地域の住民1700例以上を対象とした調査の結果で,膵臓がんの予防効果が強く認められたのは,タマネギ,ニンニク,マメ類,黄色野菜(ニンジン,ヤマイモ,サツマイモ,トウモロコシ,カボチャ),緑色野菜,アブラナ科野菜などです。

 果物にも予防効果が認められたものの,野菜ほどの効果はなく,果物の中で最も予防効果が優れていたのは柑橘類であるということです。

 こうした野菜や果物を1日に少なくとも5皿分摂取すると,2皿分以下摂取したグループよりも膵臓がんリスクが50%低く,9皿分摂取すると,5皿分以下摂取したグループより膵がんリスクが50%低いと報告されています。

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