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癌治療における遺伝子検査とは
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現在,がん治療において,遺伝子検査が積極的におこなわれるようになり,重要な意味を持つようになりました。
現在,がんに関係する遺伝子検査は,大きく分けて3種類あります。
その一つは,その人が,がんの遺伝的要素を持っているかどうかという検査です。
多くのがんは,遺伝はしません。しかし,ごく一部の人ですが,遺伝によりがんが発生しやすい体質の人もいます。
遺伝的性質が強いがんとして,子供のがんで,眼の奥にできる網膜芽細胞腫があります。
その他,大腸癌や乳癌,甲状腺癌の一部に遺伝的性質を持ったものがあります。
通常,正常細胞ががん細胞へと変わるためには,一種類ではなく,何種類もの遺伝子が変異をしなければなりません。
上記に示したがんになった人の中には,生まれつき変異した遺伝子のいくつかを持っていて,その後何らかの影響で,残りの遺伝子のいくつかが変異してしまうことによってがんになってしまった人もいます。
つまり,正常な遺伝子を受け継いでいる人よりも,少しの影響でがんになってしまう人が家系的にいるということです。
この遺伝子検査に関するニュースとして,アメリカの女優アンジェリーナ・ジョリー女史が,遺伝子検査により,乳がんになる確率が87%といわれ,がんが全く発生してはいないにもかかわらず,両乳房の全切除手術を受けたという話題もありました。
ちなみに,彼女の母親もそして叔母も乳がんで亡くなっています。
乳房切除の是非は別にしても,このように遺伝子検査が進歩することにより,一部のがんではありますが,発生する確率が予測できるようにもなったのです。
二つめはその人にがん細胞が存在するリスクを調べるどうかの検査です。
画像や内視鏡検査では発見できない微細な5mm以下のがん細胞でも, がん細胞から血液中に遊離されるDNA,RNA等を分析することにより,微細ながん細胞をも検出し,存在リスクを調べることが可能になりました。
これにより,特定の臓器の前がん状態のリスクがわかり,がん発生の早期発見,早期治療に役立てることが可能になったのです。
さらに,この検査と腫瘍マーカーの検査を併用することで,超早期のがんから進行がんまで,その存在リスクがわかるようになりました。
ただし,これだけでがんとは確定できず,確定診断をおこなうためには,画像による診断や顕微鏡による細胞診が必要です。
現在,このような遺伝子解析を積極的におこない,がんの診断やがん治療に生かしている病院もあります。
三つめは採取したがんの組織の遺伝子を解析し,その特徴やその悪性度を判断し,その後の治療方針に役立てようとするものです。
特に,この遺伝子解析が特に役立つものが分子標的治療薬です。
分子標的治療薬は,がんの表面に存在する,増殖や転移を促すはたらきのある分子を標的として,機能する薬剤です。
したがって,分子標的治療薬を投与する前に,この薬剤が標的とする分子に関わる遺伝子を事前に調べることにより,効果のある人とない人がわかるようになってきたのです。
これにより,副作用だけみられて効果があがらないという事態を避けることができるようになりました。
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