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血液悪性疾患白血病・悪性リンパ種
  血液悪性三大疾患とよばれるものには「白血病」「悪性リンパ腫」「多発性骨髄腫」の3種類があります。骨髄中の造血幹細胞ががん化したものが白血病で,リンパ球ががん化したものが悪性リンパ腫,骨髄中の形質細胞ががん化したものが多発性骨髄腫です。

 血液悪性疾患は「どのような細胞」が「どの段階」でがん化したによって,様々な病名があります。

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 白血病
 白血球は大きく,「顆粒球」と「リンパ球」とに分けることができます。これらの細胞は骨髄の中の「造血幹細胞」から分化し,芽球(がきゅう)と呼ばれる中間の段階を経て成熟します。
 
 これらの成熟していない芽球ががん化し,際限なく増殖してしまう病期が白血病です。白血病は「骨髄性白血病」と「リンパ性白血病」に分けることができ,さらにその進行速度により「急性」と「慢性」に分けることができます。

 白血病は年間約6000人以上発症していると推測されています。白血病は近年,骨髄移植などの治療法が確立し,また抗がん剤も進歩したため,5年生存率はかなり向上し,50%を上回っています。

白血病の原因   
 
 白血病の原因は十分には解明されていません。しかし,白血病の発がん因子と指摘されているものに,放射線,抗がん剤,タバコなどがあります。

 フレンド白血球ウィルスやヒト細胞白血病ウィルス1型(HTLV-1)などのウィルスが関与していることも解明されています。

 さらに遺伝子の異常が白血病の発症に関わっていることが解明されています。急性骨髄性白血病では第15番染色体と第17番染色体の一部が切断されて互いに入れかわる相互転座ということがおこり,白血病の分化が停止してしまうことが原因とされています。

 また急性リンパ性白血病や慢性骨髄性白血病でも第9番染色体と第22番染色体が途中で切れて,互いに入れかわり結合することにより形成されるフィラデルフィア染色体と呼ばれる異常な染色体が見られます。

 この染色体により,異常タンパクが形成され,そのタンパクにより,白血球の分化が阻害されることが原因であると解明されています。

急性白血病

急性骨髄性白血病
 我が国での急性白血病の発症頻度は人口10万人あたり約6人で,成人では骨髄性白血病が80%以上を占めます。急性骨髄性白血病(AML)とは,骨髄でつくられる顆粒球の成熟前の芽球が,がん化したものです。

 この急性骨髄性白血病は,がん化した細胞の型により( M0 ~ M7 )の8種類に分類できます。(FAB分類)

病型       病名               特徴
M0 最未分化型急性骨髄性白血病 細胞が骨髄系幹細胞に近い状態
M1 未分化型急性骨髄性白血病 ほとんどの細胞が顆粒球に分化する前の未熟な骨髄芽球としての状態
M2 分化型急性骨髄性白血病 前骨髄球へ分化しつつある成熟傾向のある骨髄芽球としての状態
M3 急性前骨髄球性白血病 細胞が前骨髄球のレベルにまで分化している状態。
M4 急性骨髄単球性白血病 顆粒球細胞と単球細胞へ分化傾向のある細胞が混在している状態
M5 急性単球性白血病 M5a 未分化で単芽球が大半を占めた状態
M5b 前単球や単球の未熟な細胞と成熟した細胞が混在している状態
M6 赤白血病 骨髄の50%以上が異型性のある異常赤芽球に占められている状態
M7 急性巨核芽球性白血病 血小板をつくる巨核球性細胞が増殖し続けている状態

急性リンパ性白血病
 リンパ球は白血球の1種で,免疫機能を持ち,骨髄の幹細胞から分化して,B細胞,T細胞,またNK細胞として成熟します。

 この成熟前の芽球細胞
の段階で,この細胞ががん化し,
骨髄や血液のなかで異常増殖する病気が急性リンパ性白血病(ALL)です。

 この急性リンパ性白血病の特徴は小児に多く発症するという特徴があり,7歳までの発症が特に多く,それ以降は低下します。

 この病期はリンパ芽球の大きさや形態により,L1~L3まで分類されています。
病型 特徴
L1(小細胞均一型) 小型のリンパ芽球が増殖する。小児の急性リンパ性白血病の大半を占める。
L2(大細胞不均一型) 比較的大型のリンパ芽球が増殖する。成人の急性リンパ性白血病の大半を占める。
L3(バーキット型) B細胞型のバーキットリンパ腫白血病化したもので,芽球細胞は大きい。

急性白血病の症状
 
 急性白血病の症状は貧血,出血,感染症の3つが特徴的な症状です。急性白血病では,血液中に未熟な白血球が異常増殖し,赤血球や血小板が減少していきます。未熟な白血球は本来の病原体に対する免疫能力を持たず,感染症とそれにともなう発熱がみられるようになります。

 一方で赤血球不足は倦怠感や息切れなどの貧血症状を招き,血小板不足は口腔粘膜出血など様々な出血症状となります。

 また,白血病細胞が臓器へ浸潤した場合,リンパ節腫脹(腫れ),歯肉腫脹,脾臓,肝臓の腫脹などがみられるようになります。


急性白血病の検査と診断
 
 急性白血病の検査では,まず血液検査により,白血病細胞の芽球を特定します。次に骨髄穿刺(せんし)検査を行います。胸の中央にある胸骨や骨盤を構成している腸骨に穿刺し,骨髄液を採取します。

 採取した骨髄液は染色をして,顕微鏡で観察し,細胞の形態から病型診断をします。さらに現在は細胞表面抗原検査や染色体・遺伝子検査も行い,白血病細胞の細胞系列と分化段階を確定します。



急性白血病の治療

 白血病治療の基本は,まず血液を「完全寛解(かんかい)」にすることです。完全寛解とは体内の白血病細胞が減少し,白血球や赤血球,血小板がも正常値にもどり,骨髄中の白血病細胞も5%以下になった状態のことです。

 また白血病細胞がある程度減少し,病状が改善した状態を部分寛解と言いますが,完全寛解とは完治したということではありません。 この後さらに強力な地固め療法や維持療法を行い,完治を目指します。

 急性白血病は抗がん剤療法が最も効果的です。しかし,急性骨髄性白血病と急性リンパ性白血病とでは使用される抗がん剤も異なります。

急性骨髄性白血病の治療
(1)寛解導入療法
 完全寛解をめざして,抗がん剤により白血病細胞の減少を目指す治療です。急性骨髄性白血病では、ダウノルビシンやイダルビシンなどの抗生物質系薬剤ととシタラビンなどの代謝拮抗剤を組み合わせた治療が,標準的な治療法とされています。

 これらの抗がん剤は1週間~10日間投与されますが,それでも完全寛解にならない場合は,同じ治療を2回以上繰り返します。

 これらの抗がん剤は正常細胞にも影響を与え,その結果,嘔吐,脱毛,造血作用の抑制がみられるだけでなく正常な白血球もさらに減少するため,感染症を合併する危険性があります。そこで抗菌剤や抗ウィルス剤の投与が必要になります。また貧血に対する成分輸血も必要で,これらは支持療法と呼ばれます。

(2)寛解後療法
 
完全寛解という状態になっても体内にはまだ白血病細胞が残存しています。これらを根絶し,再発を阻止するために行われる治療法が寛解後療法と呼ばれるものです。

 通常は完全寛解を得られた併用化学療法を1コース以上行います。これを地固め療法とよんでいます。また定期的な化学療法を長期にわたり続ける場合もあり,これを維持療法とよびます。

(3)造血幹細胞移植(骨髄移植)療法
 この治療法では,移植前に大量の抗がん剤投与や,放射線照射を行い,骨髄中の白血病細胞を徹底的に破壊します。しかし,正常な血液細胞や骨髄の造血幹細胞も死滅してしまいます。そこで造血幹細胞をドナーから移植し,造血機能を回復させます。

 ドナーは親子や,兄弟,骨髄バンク登録者などのケースがあります。この治療法では再発率は低いものの,副作用が大変強く,通常の抗がん剤治療では予後が期待できないケースに限られます。

 近年では,分娩後の胎盤と臍帯に残った血液中に含まれる造血幹細胞を採取して移植する臍帯血移植も実施されるようになっています。

急性前骨髄球性白血病の治療
 
急性骨髄性白血病の一つである急性前骨髄球性白血病(APL)では,第15番染色体と第17番染色体の一部が切断されて互いに入れかわる相互転座という遺伝子異常が見られますが,ここに活性ビタミンA(レチノイン酸)を投与することで,白血球の分化の停止がなくなり,正常細胞への分化が促進されるという分化誘導療法が開発され,治療成績は著しく向上しました。
 
 しかし,レチノイン酸のみではやがて再発し,耐性をもつので,完全寛解後には化学療法も併用されます。このレチノイン酸と併用化学療法による治療法では90%は完全寛解に至っています。

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急性リンパ性白血病の治療
 
急性リンパ性白血病(ALL)では第9番染色体と第22番染色体が途中から切れて,互いに入れかわり結合することによって,フィラデルフィア染色体と呼ばれる異常な染色体が見られるケースがあります。

 また第4番と第11番の染色体間で転座が起こったり,第7番染色体が欠けたり失われることなどもあり,予後や治療法にも関わってくる重要な因子の一つです。


(1)寛解導入療法
 抗がん剤を中心とした治療法は,急性骨髄性白血病と変わりませんが,投与される抗ガン剤は異なってきています。寛解導入療法でよく使用される抗がん剤は,ビンクリスチン(植物アルカロイド),ドキソルビシン(抗生物質),メソトレキセート(代謝拮抗剤),シクロホスファミド(アルキル化剤),L-アスパラギナーゼ(酵素剤)などです。これらの併用療法が,一般的で,この治療による寛解導入率は70~90%とされています。

(2)寛解後療法
 
完全寛解という寛解導入療法によって寛解が得られた後にも白血病細胞を減らし,再発を防ぐため,地固め療法が行われます。これは寛解導入療法で用いた抗がん剤に,シタラビンなどの代謝拮抗剤と呼ばれる抗がん剤を併用し,数ヵ月にわたって投与します。

 維持療法は地固め療法によって減少した白血病細胞を,さらに根絶させる目的で行われます。少量のメソトレキセート,メルカプトプリンなどの代謝拮抗剤やビンクリスチン(植物アルカロイド)やステロイド剤などの抗がん剤を組み合わせて行います。通常投薬は1年~2年行います。


(3)造血幹細胞移植(骨髄移植)療法
 この治療法は,基本的に急性骨髄性白血病に対する移植療法と同じです。最近ではミニ移植と呼ばれる新しい移植法が効果を上げ,注目されています。

 従来の造血幹細胞移植ではまず,通常の数倍から数十倍もの大量の抗がん剤投与や放射線照射でがん細胞を徹底的にたたく前処置を行います。

 しかし,前処置は骨髄以外にも正常な臓器や組織に大きなダメージを与え,患者の負担も大きく,移植患者は内臓障害のない,副作用に耐えられる55歳程度までと制限されていました。
 
 そこで抗がん剤投与量を減らすなど前処置を軽く抑え,がん細胞を弱らせた状態で移植したリンパ球により,弱ったがん細胞を死滅させるという治療法が考案され,ミニ移植と呼ばれています。 

 この治療法のメリットは,抗がん剤の副作用が少なく,高齢者や臓器障害のある患者にも移植が可能になったという点です。ただ,移植リンパ球もがん細胞だけでなく正常組織をも攻撃するため,免疫抑制剤の微妙な量の投与も必要となり,まだ実験段階のため,限られた施設でおこなわれています。
 

(4)フィラデルフィア染色体をともなう急性リンパ性白血病(Ph陽性ALL)の治療
 前述したように急性リンパ性白血病には異常染色体であるフィラデルフィア染色体がみられる場合もあります。これまではその染色体異常がないPh陰性ALLと同様の通常化学療法が行われ,寛解率は50~80%とされていました。しかし再発率がきわめて高く,予後も不良で,長期に寛解を維持できるのは10%前後と言われています。

 このように,Ph陽性ALLは化学療法だけでは治癒を期待することが困難なため,治癒を目指した治療法として,ドナーから骨髄を提供される造血幹細胞移植(骨髄移植)が行われています。

 また近年では分子標的療薬としてイマチニブ(メシル酸イマチニブ)が開発されました。この分子標的治療薬はがん細胞が異常に増殖するために重要な,細胞膜にある受容体のチロシンキナーゼという酵素の働きを妨害するものです。

 このイマチニブはPh陽性ALLにも効果があると期待されていますが,慢性骨髄性白血病には適用となっているものの,急性リンパ性白血病には,保険適用がなく,いまだ臨床試験中の段階です。

 しかしJALSG
を通して試験的にイマチニブによる治療も可能なケースもあるので問い合わせてみてください。

JALSG(日本成人白血病治療共同研究グループ)について
 
 日本成人白血病治療共同研究グループ(JALSG)は1987年に設立された多施設による臨床研究グループです。国内173施設が参加しており,我が国で最大であるばかりでなく国際的にも活躍しています。

 ここでは白血病と名のつく疾患とその近縁の病気,骨髄異型性症候群と多発性骨髄腫に対する臨床研究が行われています。また悪性リンパ腫に関してはJCOGという別のグループで行われています。


慢性白血病 
 
 急性白血病は,急激に未熟な白血球が増加するという症状がみられますが,慢性白血病ではゆっくりと白血球が増加するという症状がみられます。

 また慢性白血病は,増殖する細胞が未成熟の芽球が中心の急性白血病に対し,成熟した白血球細胞が中心となります。この慢性白血病は慢性骨髄性白血病と慢性リンパ性白血病に分けられます。

慢性骨髄性白血病
 
慢性骨髄性白血病は造血幹細胞の腫瘍化によって生じる白血病です。慢性骨髄性白血病は,病期が慢性期,移行期,急性転化期の3段階に分かれます。慢性期では成熟した白血球の数が増大します。

 それが移行期では未熟な芽球も増加します。さらに急性転化期に入ると,芽球細胞の数も30パーセントとなり,抗がん剤療法では治療が困難になり,6ヶ月未満で死亡するケースが多くなります。
白血病細胞が骨髄以外の骨やリンパ節にがんの固まりを形成することもあります。

 慢性骨髄性白血病患者の約90%に異常なフィラデルフィア染色体がみられます。これは第9番染色体と第22番染色体が途中から切れて,互いに入れ替わり結合した状態で「転座」と呼ばれます。その結果bcr-ablという融合遺伝子が出現し,異常増殖が起こります。

慢性骨髄性白血病の症状
 慢慢性骨髄性白血病は,慢性期,移行期,急性転化期に分けられます。慢性期の場合は無症状で,健康診断で偶然に発見されるケースが多いと言えます。病気の進行とともに赤血球が減少し,貧血になります。白血球数が増加するに従い,倦怠感,体重減少,寝汗,脾臓腫大による腹部膨満感などの症状が現れます。

慢性骨髄性白血病の治療
 慢性白血病の治療では,化学療法,インターフェロンを中心とした免疫療法,骨髄移植(急性白血病を参照)などの治療法があります。化学療法では近年開発された分子標的治療薬イマチニブ(メシル酸イマチニブ)が効果を上げています。

 この分子標的治療薬はがん細胞が異常に増殖するために重要な,細胞膜にある受容体のチロシンキナーゼという酵素の働きを妨害し,正常な白血球の分化を促すものです。

 長期にわたる有効性は確立していませんが,短期では染色体異常が正常化されるなど高い有効性を示しています。

 インターフェロンはたんぱく質の1種で,生体内に存在し,ウイルスの増殖やがん細胞の増殖を抑える働きがあります。皮下注射により,投与を続けるとフィラデルフィア染色体をもった白血病細胞が減少,もしくは消失する場合もあります。

 イマチニブが無効な場合に使用されたり,イマチニブと併用されたりする場合があります。インターフェロンの副作用として感冒様症状(発熱,悪寒,筋肉痛,倦怠感,食欲不振など)が見られることがあります。


慢性リンパ性白血病
 慢性リンパ性白血病(CLL)では,急性と異なり,芽球ではなく,成熟したリンパ球ががん化します。がん化したリンパ球はリンパ節や骨髄,脾臓のなかでゆっくりと増殖していき,やがて血液中でリンパ球が異常増殖する結果となります。

 リンパ球には抗体をつくる「B細胞」,Bリンパ球を補助したり,ウィルスに感染した細胞を破壊する「T細胞」,がん細胞や細菌を破壊する「NK細胞」に分類されますが,慢性リンパ性白血病ではほとんどがB細胞由来のものです。

 慢性リンパ性白血病は,日本では発症率も少なく,欧米の約1/10程度です。発症は50歳以後の中高年に多く,女性より男性の方が多いことが特徴です。また慢性リンパ性白血病は環境よりも遺伝的要素との関わりが高いと言われています。

慢性リンパ性白血病の症状
 慢性リンパ性白血病は初期の段階ではほとんど自覚症状はありません。やがて倦怠感,食欲不振,寝汗,微熱,体重減少などがみられます。また患者の多くにリンパ節の腫脹がみられ,脾臓が腫れることもあります。

 また慢性リンパ性白血病では,他の白血病に比べて,丘疹や水疱,帯状疱疹など皮膚病変が多いことも特徴です。

慢性リンパ性白血病の治療
 慢性リンパ性白血病の治療では初期には経過観察だけの場合もありますが,症状が進行すると,アルキル化剤の抗がん剤,シクロフォスファミド(エンドキサン)の投与による治療法が行われます。

 これに,アンスラサイクリン系のドキソルビシンや植物アルカロイドのビンクリスチンなどの抗がん剤を併用する場合もあります。近年では核酸合成阻害剤のフルダラビンが効果を上げていると報告されています。

 放射線療法がリンパ節腫大部位や脾臓の病変に対し,一時的な症状軽減のために局所照射として行われることがあります。また低線量での全身照射を行う場合もあります。

 慢性リンパ性白血病では細菌やウィルスに対する抵抗力が落ちて感染症にかかりやすくなるため,感染症に対しての治療も必要になってきます。

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