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これから期待される放射線治療

 現在がん治療では,手術,抗がん剤治療,放射線治療が三大治療として確立され,がん治療の中心となっていますが,この中でも放射線治療は治療機器の進歩と共に近年,QOLを下げない治療法として,世界的に期待されるようになっています。

 特に,欧米ではがん治療において放射線治療を選択する患者が増加し,がん患者の約60%が受けています。これに対し日本では全体の25%が受けているに過ぎません。 日本では手術と同等の生存率が得られる場合でも,放射線治療ではなく手術を選択してしまうケースが多いと言えます。

 日本は欧米と比較して放射線治療の専門家がきわめて少ないという実態があります。日本では外科医約10万人に対して放射線腫瘍医は500人程度と言われています。 また,医学カリキュラムも放射線医療に関しては十分な時間が確保されていないという教育制度上の問題もあるようです。

 これまで日本の医療は特に胃がんなど手術によって世界的に見ても良好な成績を修めており,がん治療=手術という観念ができてしまっているようです。
 
 このようなことからがんと診断されるとすぐに外科医にまわされ,外科医が治療方針を決めてしまうことが多いのです。

 患者ががん治療を始める上で医師から手術を勧められても,セカンドオピニオンを受けるなどして,放射線治療の可能性を検討することも必要です。
 
 手術を勧められても,放射線治療で同等の生存率が得られるならば,臓器を切除せずに済み,肉体的負担が少く,術後のQOL低下の少ない放射線治療の方がメリットが大きいと言えます。

 近年,放射線治療機器の技術革新はめざましく,腫瘍部へのピンポイント照射が可能となり,治療効果が飛躍的に向上しただけでなく,副作用なども軽減されています。

 このページでは放射線治療の特徴や部位別治療法,最新治療機器などについて解説していきますので,治療の選択肢の一つとして参考にしてください。
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放射線治療とは何か



 X線やガンマ線,電子線などの電磁波をがん細胞へ照射することによって,がん細胞を死滅させる方法です。 さらに,近年では陽子や炭素の原子核を治療に用いることも可能となり,それぞれ「陽子腺治療」,「重粒子線治療」とよばれ大きな成果を上げています。

 放射線治療はがん細胞が細胞分裂を行っているときに照射することで,がん細胞を死滅させることができます。 細胞は細胞分裂を行っている時は,不安定であり,このときに放射線が作用することで,正常なコピーができなくなってしまうのです。

 細胞分裂を際限なくおこなうがん細胞は正常細胞よりも放射線の影響を受けやすく,DNAの破壊や切断も起こりやすいのです。 また,放射線によって傷つけられたとしても,正常細胞は損傷を修復させる力ががん細胞よりも強く,がん細胞よりも生き延びることができます。

 また,これはあまり知られていないことですが,実は放射線療法は免疫細胞の協力を得て成り立っています。 これはどのようなことを意味するかというと,放射線のみでがん細胞は死滅させられるわけではなく,放射線照射の後,まだ生き残っているがん細胞を免疫細胞が取り巻き,これらを死滅させているのです。

 がん細胞はもともと正常細胞から変化したものなので,免疫細胞ががん細胞と認識できず,見過ごしてしまうことも多いのですが,放射線を照射されることで,免疫細胞ががん細胞を異常な細胞と認識し,攻撃しやすくなります。
 
 さらに,放射線により,がん細胞の数が減らされたことで,免疫細胞が数的にも有利になり,効果を上げることができるのです。

 確かに放射線によってもがんにも効果のある白血球は減少しますが,白血球などの免疫細胞は主に骨髄でつくられるので,骨髄を避け,がん細胞に集中して照射されることで,免疫力低下は避けられるようになってきています。

 これからは,免疫細胞療法と放射線治療をいかにうまく組み合わせていくかが,有効ながん治療の一つの方向性と考えられ,今後の研究が期待されるところです。


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放射線治療の方法

 放射線治療には大きく分けて身体の外部から放射線を照射する外部照射法と,体の中に放射線の出る物質を入れて治療する密封小線源治療と呼ばれる内部照射とがあります。

 また,手術と併用する場合,手術前に照射することを術前照射,手術中に行うことを術中照射,手術後に行うことを術後照射と呼んでいます。


外部照射
 
 外部照射は最も多く行われている治療法です。現在,外部照射はほとんどすべてのがんで用いられています。また,症状を緩和するためにも用いられます。

 照射方法はがんの種類,広がり,深さ,患者の全身状態,治療歴などによって異なります。 外部照射は多くの場合身体的負担が少ないため,入院は必要とせず,普通は外来治療で行われます。


術前照射 
 
 がんが大きすぎて切除が困難な場合,手術前に照射することでがんを縮小させ,切除範囲を小さくして患者の負担や後遺症を軽減させるという目的で行われます。

 また,手術前に,病巣付近の肉眼ではわからない微少ながん細胞を死滅させておくという目的もあります。 たとえば直腸がんでは手術前の骨盤照射によって,術後の再発率を低下させることができます。


術中照射

 術中照射は,手術でがんを切除した後,隣接臓器に再発する危険性がある場合などに,肉眼では確認できない微少ながんを死滅させるために用いられ,手術中に病巣部に一回の高線量照射が行われます。


 開腹した状態なので,正常細胞への照射リスクを軽減でき,副作用も低下させることができます。この術中照射はすい臓がんや胆管がん,直腸がんなどで行われます。


術後照射

 術後照射は,手術でがんを切除した後,取り残した可能性のある微少ながんの再発を予防する目的で行われます。乳がんの乳房温存療法がこれにあたり,放射線で再発を防ぐことができるため,切除範囲が最小限ですむというメリットがあります。

 また,通常の方法では切除できない部位にまでがんが拡がっている場合,切除可能な部位だけを切除し,切除できなかった部位を放射線で治療するという方法もあります。


密封小線源治療 

 密封小線源治療には,高線量を短時間に照射する高線量率照射と,線量の低い線源を一定期間あるいは永久に入れる低線量率照射の2種類があります。


 さらに密封小線源治療には腫瘍の内部に直接線源を置く組織内照射と,食道や気管,子宮などの管腔臓器に放射線線源を置いて照射する腔内照射とがあります。この密封小線源治療では入院が必要な場合もあります。

 この組織内照射は主に頭頸部,前立腺,子宮頸部,卵巣,乳房,肛門周囲や骨盤領域の腫瘍を治療する際に用いられます。

 腔内照射はアプリケーターを用いて体内に挿入します。この方法は上咽頭がん,食道がん,胆管がん,子宮がんなどに用いられます。


 また,外部照射法とこの密封小線源治療を組み合わせて治療することもあります。



放射線治療効果を飛躍的に高めた定位放射線治療

 放射線治療の理想は「がん細胞には最大の線量を,正常細胞には最小限の線量を」という言葉で表現されるように,がん細胞のみにピンポイントで照射することです。
 しかし,がん細胞は体の内部にあるため,放射線が正常細胞を突き抜けないと,がん細胞には到達しません。

 したがって,従来の放射線治療では,病巣だけに放射線を照射することが難しいため,副作用が生じたり,十分な線量をかけられないため,治療効果もあまり上がりませんでした。

 現在は,複数の角度からがん細胞へ集中して照射することで,正常細胞への影響を極力減らすという方法が確立されています。


 さらに腫瘍の輪郭に沿って,正確に照射することができるようになりました。これが定位放射線治療であり,体の副作用やダメージを抑えつつ,より強力な放射線を照射できるようになったのです。

 この定位放射線照射を行うには病巣の正確な形態の把握,誤差1mm以下の正確な照射,患部に放射する線量の3次元的把握などが必要となります。

 現在,ある調査によれば,この定位放射線治療により,病期が1A,1B期の肺がんでは従来の放射線治療成績を上回るだけでなく,5年生存率が手術の67.57%に対して,77.68%と,約10%も高い治療成績を残しています。

 ただ定位放射線治療ができるこの最新放射線治療機器は高額である上に設置施設にも大きな費用がかかるため,設置施設も限られ,病院間の格差も大きいと言えるでしょう。

 病院の選択は,放射線治療の専門家すなわち放射線腫瘍医がいることと,最新放射線治療機器を導入しているかが一つの目安となるでしょう。



粒子線治療

がん細胞内部で最大の効果を発揮する粒子線治療

 近年,サイクロトロン(円形加速器)やシンクロトロン(同期加速器)などの加速器を使って,陽子や炭素の原子核を加速し,がんに集中して照射する治療法が確立されました。 粒子のなかでも陽子を使う粒子線治療を陽子線治療と言い,炭素の原子核を使う治療を重粒子線治療と言います。

 この粒子線治療の特徴は粒子が運動を停止する直前に最大のエネルギーを放出するという性質(ブラッグピーク)を利用し,がん病巣内部で粒子が最大のエネルギーを放出するようコントロールされているということで,従来の放射線治療では困難であった膵臓などのがん治療にも成果をあげています。

 特に重粒子線治療では,X線やガンマ線で殺せないタイプのがん細胞も殺すことができます。しかし胃や腸のように不規則に動く臓器や,白血病のように全身に広がっているがん,広く転移したがんには適応できず,効果は固形腫瘍に限定されます。


 陽子線治療は,国立がん研究センター東病院筑波大学陽子線医学利用研究センター兵庫県立粒子線医療センター若狭湾エネルギー研究センター静岡県立静岡がんセンターの5ヵ所で行われています。

 また,独立行政法人放射線医学総合研究所では,炭素を使った重粒子線治療を行っており,2003年10月に高度先進医療として認可されました
HIMAC重粒子加速器(シンクロトロン) 
提供 独立行政法人 放射線医学総合研究所



定位放射線照射治療機器の種類

 
ガンマナイフ
 
 この治療装置
は,ヘルメット型の固定具を患者の頭部にかぶせ,そのヘルメット型の固定具から,コバルト60という放射線が,がん細胞の1点に集中して放射されるというもので,脳腫瘍の治療に使用され,ナイフで切り取ったようなシャープな効果が得られることから,このように呼ばれています。

 30年ほど前から始まり,脳腫瘍には治療実績もあります。ただし,患者の頭部は動かないよう金属でしっかりと固定される必要があります。

γナイフ照射装置
提供 日本ガンマナイフサポート協会




サイバーナイフ
 
 ガンマナイフをさらに進化させた治療器がサイバーナイフと呼ばれるものです。この治療法では自由な位置と角度から弱いX線を患部の1点にコンピュータ制御のロボットにより集中して照射します。2台のX線透視用カメラが患者の動きをモニターし,患者のセットアップ時のずれや治療中の微妙な動きを自動的に検出し,ビームを補正します。 

 この装置では病巣位置の確認のため,メッシュ状のマスクをつけますが,ガンマナイフと異なり,頭部を金属で固定する必要がありません。

 日本ではまだ首から上の脳腫瘍や耳鼻科,口腔外科の腫瘍などに限定されますが,この方式でアメリカなどでは肺がんや膵臓がんへの治療も行われ,正常細胞へのダメージが少ないことから今後の発展が期待されます。

サイバーナイフU
提供 (株)千代田テクノル


強度変調放射線治療(IMRT)

 強度変調放射線治療(Intensity Modulated Radiation Therapy: IMRT)とは,コンピュータとの連携により,照射する形態,照射量を計算し,腫瘍部分のみに放射線を集中して照射できる画期的な照射技術です。

 リニアックと呼ばれる放射線治療器で照射する場合,照射ビームの形を変形させるのはマルチリーフコリメーターと呼ばれる,タングステンからなる可変遮蔽板です。これが高速で動くことにより,ビームの形や線量を変えることができるのです。

 強度変調放射線治療は様々な疾患に対して適用可能ですが,固形腫瘍が主にその対象となります。 この強度変調放射線治療の保険治療の対象疾患は前立腺がん,頭頸部がん,脳腫瘍,食道がん,肝臓がん,肺がん,膵臓がん,子宮がん,乳がんなどの局所に限定した腫瘍です。


 ●
リニアックナイフ(ライナックナイフ)


 従来から使用されてきたリニアックまたはライナックと呼ばれる直線加速放射線治療器に,円筒形コリメータを装着し,球形の照射領域を作る方法と,マイクロマルチリーフ装置(AccuKnifeシステムなど)で不整形照射領域を作る方法とがあります。

 これにより,これまでは1cm程度の腫瘍に照射する場合でも最低4cm程度の照射範囲が必要でしたが,病巣部に多方向から正確に1mm〜2mmという誤差で集中照射が可能となりました。
 
 ガンマナイフと違って多数回照射(分割照射)ができるので,病変部位周辺の正常細胞への影響を低く抑えることができます。またガンマナイフより大きな病巣も治療できます。

 治療成績はガンマナイフと同程度といわれ,主に頭頸部がんに使用されますが,最近では前立腺がんなど体幹部のがんにも照射も行われるようになりました。全国の基幹病院で採用されています。
 
動体追跡照射装置


提供 北海道大学病院−


動体追跡用透視装置

治療用X線
装置(リニアック)
 北海道大学が1998年に開発した4次元放射線治療と呼ぶシステムは,肺がんなど動く患部に直径2mmの金の粒を埋め込み,それを動体追跡用装置でスキャンし,金の粒が一定の位置に来た時のみに照射することで,患部の動きによる正常細胞への照射リスクを無くした装置です。

 北大では,この技術は単に動体追跡だけではなく,CT,MRI,PETなどの画像ネットワークの整備による高精度な診断があって初めて成り立つと言っています。

 


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トモセラピー

 アメリカの医療機器メーカー・トモセラピー社が2003年に開発した次世代放射線治療装置トモセラピー(TomoTherapy)は世界的に注目されている治療器です。このメカニズムは放射線照射装置にヘリカルCTの原理を応用し,放射線ビームをらせん状に回転させながら患部のみ正確に照射することを可能にしたものです。

 トモセラピーでは加速器の1回転360度中,51方向もビーム射出ポイントがあり,他の装置での7〜9方向と比較して正常細胞への照射量を減らせるだけでなく,腫瘍への線量集中性を高く設定できます。

 また,この装置はピンポイント照射が可能なだけでなく,複雑な病巣や,一度に複数の腫瘍に対応できるというメリットがあります。 従来は難しいとされていた前立腺がんや多発性肺がんなどの放射線治療も可能となり,集中照射から広範囲な照射まで可能なため,サイバーナイフやリニアックナイフより多くのがんに対応できます。

トモセラピーCTで病巣を撮影 360度から放射線を照射
提供 武田病院グループ 宇治武田病院


 ●
ノバリス
Novalis
 ノバリスはドイツのブレインラボ社が開発した強度変調放射線治療器の1種です。これもいろいろな方向から立体照射ができます。

 照射位置決定が高速で処理され,患部に高エネルギーを集中できるため,治療時間が20分〜30分と短く,外来でも治療が可能というメリットがあります。

 頭頸部腫瘍だけでなく,肝臓がん,肺がん,脊椎がん,前立腺がん等,適応するがんの種類が多く,全身のがん治療が可能です。

 効果は手術と同等かそれ以上と言われていますが,ピンポイント照射を得意としているだけに,広範な遠隔転移や腫瘍の形がはっきりしない型のものには使えません。

提供 ブレインラボ株式会社

Novalis TX

 この「ノバリス」の精度を向上させ,より広範囲な照射を可能にした装置が「ノバリスTX」です。

 この「ノバリスTX」はドイツのブレインラボ社とアメリカのメディカルシステムズ社の技術提携により,共同開発されたものです。
 この「ノバリスTX」は従来型の「ノバリス」と比較して,大幅に照射範囲が拡大しました。

 放射線ビームを腫瘍の形状に合わせて変形照射するための高精度成形装置「マイクロマルチリーフコリメータ (MLC)」を拡大することで,ノバリスで10x10cmだった照射範囲が22x40cmまで拡大し,より大きな腫瘍の治療が可能になると同時に,適応部位も拡大されています。

 また,従来のX線画像と赤外線だけでなく,CT画像撮像装置を搭載したことでより精確な位置決定が可能となりました。


提供 ブレインラボ株式会社

 内部臓器の動きをCT画像で把握することで,コンピューター計画時との誤差を0.1mmとし,算出したずれをロボット寝台が自動的に補正し精密な治療を実現します。呼吸運動のリズムにあわせビーム発射を行う呼吸同期機能も備えています。 

 さらに現在より薄いリーフコリメータを使用することで,放射線照射絞りの幅が5mmから,2.5mmになり,より精密に放射線ビームを腫瘍の形状に一致させることが可能となりました。
 治療時間も照射線量率の向上(最大1000MU/分)で,さらに短縮されています。

 日本では広島平和クリニックで初めて導入され,その後,熊本放射線外科岐阜大学医学病院松下記念病院聖隷三方原病院で導入されています。

 ノバリスTXを日本で初めて導入した広島平和クリニックでは,これまで60名の患者が治療を受けました。その中で25名からがんが消失しています。

 この60名の多くの方が他の医療機関から「完治は困難である。」と診断されていることを考慮すると,いかに最新治療機器が優れているか判断できます。


 

フォーカルユニット 

 放射線治療装置(ライナック)(リニアック)とCTを一体化させた装置です。放射線治療の前にCTで照射する部位を確認し,照射するため,高精度の治療が可能です。放射線の位置を縦・横・高さの三次元で変化させられるので三次元フォーカルユニットとも呼ばれています。
 
 この装置は日本で開発されたもので,この機器を設計した植松 稔氏によると,平面方向すなわち二次元で変化させる照射よりも正常細胞への影響が少なく,より効果が大きいということです。(下図参照−「明るいがん治療」より引用)

 さらに2006年より,鹿児島のUASオンコロジーセンターで,病巣に対する照射精度をさらに上げ,肺がんや肝臓がん,前立腺がんなど患部が動きやすい病巣にも追跡照射できるスーパーフォーカルユニットが完成し,稼働しています。

 これはライナック(リニアック)とCTを組み合わせた大型のサイバーナイフの一種と考えられます。このスーパーフォーカルユニットは植松医師の著書「明るいがん治療2」によると他で治療をあきらめざるを得ないほどのがんも治癒しています。

 彼は,このような成果を上げられたのはピンポイント照射の正確さであると言っています。フォーカルユニットがさらに改良され,スーパーフォーカルユニットとなり,より精密な照射が可能になったのです。(下図参照)

 また,体験談を読むと医師による適切な放射線量や放射回数などの治療計画がいかに重要かがわかります。放射線治療は専門的な高度な判断ができる医師と高度な治療機器の両方が大切であるということを改めて感じさせてくれます。
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(1)
 図(1)二次元照射
 
 がん(図の丸印)を標的として矢印の方向から照射すると正常細胞(図のアミ部分)にも同じ量の放射線がかかる。正常細胞にダメージ(副作用)がでるので少量しかかけられないが広い範囲にかけるには向く方法。
(2)
 図(2)二次元ピンポイント照射 
 
 がん(図の丸印)を標的として複数の方向から照射する。 一見効率が良さそうに見えるが,近くの正常細胞のダメージ(副作用)は図@とほとんど変わらない。
(3)
 図(3)三次元ピンポイント照射
 
 いろいろな平面のいろいろな方向から照射する。1カ所にかかる放射線は少量なので正常細胞にダメージを出さずに標的の腫瘍には大量に集中させられる。ダメージが少ないことは,頭への二次元照射では頭髪が抜けるが,三次元ピンポイント照射のみではめったに抜けないことからも分かる。


 
 このフォーカルユニットでは5cm程度の乳がんを切除せずに,治療に成功しており,その他大きな脳腫瘍,肺がん,肝臓がん,悪性リンパ腫の治療にも好成績をあげているとのことです。  
 

 また植松氏はフォーカルユニットを改良し,肺がんなど呼吸とともに動く腫瘍を追跡照射するメカニズム(チェイシングビーム)を取り入れ,スーパーフォーカルユニットとして完成させています。
  
フォーカルユニット
ピンポイント照射解説
スーパーフォーカル
ユニット・治療体験談
放射線治療講座
 このフォーカルユニットやピンポイント照射を詳しく知りたい方は,植松氏の著書「明るいがん治療」[明るいがん治療2」「明るいがん治療3」を参考にしてください。
  フォーカルユニット
ベットが回転し位置合わせを行う
 スーパーフォーカルユニット
 ベットが横に移動するだけなので正確な照射が可能

部位別放射線治療
 
 従来の放射線治療では,効果のあるがんはある程度限定されていました。しかし放射線治療技術の進歩により,ほとんどのがんに使用することができるようになりました。

 たとえば,大腸がん,胃がん,前立腺がんなど腫瘍部が動いてしまい,これまで治療が困難であった部位ですが,放射線装置に動体追跡装置を組み合わせることにより,治療が可能となっています。


 
脳腫瘍

 
従来は手術が確実な方法でしたが,ガンマナイフ,サイバーナイフ,リニアックを使用した定位放射治療の確立により,放射線は脳腫瘍の治療において大きな役割を果たすようになっています。

 脳腫瘍には脳自体から発生する「原発性脳腫瘍」と他の部位から転移した「転移性脳腫瘍」の2種類があります。

 この中で転移性脳腫瘍は,脳の正常細胞との境界線がはっきりしているため,ガンマナイフなど上記のピンポイント照射には向いており,成果を上げています。

 また,原発性脳腫瘍に対しては手術が基本ですが,腫瘍部が組織に食い込んでいますので完全に切除することは難しく,術後に放射線治療を行う治療が一般的です。

 しかし,最近では,原発性脳腫瘍に対しても定位放射線治療を実施している施設もあり,また,筑波大学のように陽子線治療を取り入れ,悪性神経膠腫などに対しても成果を上げている施設もあります。

頭頸部がん


 頭頸部とは脳より下方で,鎖骨より上方の領域を言い,鼻や口腔,のど,顔面,頸部などが含まれます。早期がんでは手術と放射線治療を比較した場合,治癒率に大きな差はありません。

 頭頸部がんは発生部位によって異なりますが,放射線治療効果のある扁平上皮がんが多く,形態を維持し,QOLを維持しやすい放射線療法が第一の選択肢となることが多いがんです。

 しかし,放射線治療でもあまり効果が上がらなかった場合,手術での切除が行われます。この中で舌がんは外部照射よりも密封小線源治療の方が治癒率が高いとされています。

 また,上咽頭がんは手術が難しい場所であり,放射線治療が中心となりますが,下咽頭がんは発見された時は,喉頭まで拡がっていたり,頸部リンパ節転移をともなっていることが多く手術が第一の選択肢となることが多いがんと言えます。


乳がん 

 かつて乳がんに対しては乳房を切除する乳房全摘手術が主流でした。しかし現在では放射線治療と手術を併用することで,がん病巣だけを取り除いても全摘手術と変わらない生存率を得ています。

 乳がんの放射線治療は,多くの場合,乳房温存手術後に再発防止を目的として行います。乳房温存療法の対象となるのは0〜2期までで,3期以降は乳房摘出手術が行われますが,乳房切除術後,放射線を照射し,再発を予防します。

 この他にも腫瘍が大きく,通常では乳房温存手術が不可能な場合でも放射線治療で縮小した後,乳房温存手術を行う場合もあります。


食道がん

 これまでは手術での切除が主流でしたが,この部位は手術による負担が大きいだけでなく,術後のQOLの低下も大きいというデメリットがありました。

 しかし,近年放射線と抗がん剤を組み合わせる化学放射線療法で,手術治療と同等の5年生存率が得られることがわかり,治療の苦痛も少なく,QOLも低下しないため,この方法で治療を行っている病院も増えています。

 放射線治療には体の外から照射する体外照射とプラスチックチューブに微量の放射性物質を入れ,病巣に照射する腔内照射があります。

 年齢が高い場合や心疾患など他の病気で手術ができない場合にも放射線治療が行われます。また,食道の狭窄で食事がとれない場合など,症状の改善を目的に放射線治療を行う場合もあります。



 肺がん 

 肺がんは大きく小細胞肺がんと非小細胞肺がんの2つの種類に分けられます。

○小細胞肺がん
 小細胞がんは化学療法の治療効果が大きいがんであり,抗がん剤使用が治療の中心となりますが,放射線の効果も大きく,限局型の小細胞がんには放射線療法と抗がん剤が併用されます。
○非小細胞肺がん
 術が困難な3期や4期の患者を対象に行われることが多く,4期では転移による痛みを和らげるため放射線治療を行うこともあります。 最近では化学療法と併用されることが多く,効果を上げています。
 
 現在は放射線の体外照射の他に,プラスチックのチューブに放射性物質を入れ,がん病巣のある気管支に挿入する腔内照射も行われています。この方法により,がん病巣に集中して照射が可能になり,副作用を軽減することができます。

 また,サイバーナイフ,ノバリス,ライナックなどによるピンポイント照射は肺がんの治療にも有効であり,特にトモセラピーの登場により,従来は治療が難しいとされていた多発性肺がんなどの放射線治療も可能となりました。 

 

 胆管がん

 これまでは,胆管に対する照射は,隣接する胃や小腸に影響が出るため手術が中心であり,手術の前後に補助的に照射したり,胆管の腫瘍を小さくして黄疸の症状を改善したりするために行われることが多く,切除できない進行がんで放射線治療が行われていました。

 しかし,近年ピンポイント照射技術が確立されたことで,外部照射も積極的に行われるようになりました。また,外照射と組み合わせて腔内照射が行われることもあります。これは胆管の中に挿入してある細いチューブを通して放射線をあてる方法です。


 膵臓がん

 膵臓がんは放射線に対する感受性が低いため,術中照射が効果的とされ,放射性物質をチューブに入れ,がんの中に埋め込む方法もあり,正常細胞へのダメージを少なくすることができます。

 放射線単独で治癒することは難しく,抗がん剤5FUやゲムシタビンとの併用が有効です。
 
 体の深部で最大限のエネルギーを放出する粒子線治療は他の臓器の奥にある膵臓がんの治療には適しており,数少ない有効な治療法です。国内では臨床試験が行われているところです。


 胃がん
 放射線は胃がんにはあまり効果がないと言われ,胃がん治療の基本は手術とされて放射線治療はあまり行われていません。

 放射線治療は手術が不可能な場合の疼痛緩和や術前にがんを縮小させる手段として用いられることがあります。

 最近のアメリカの研究報告ではタキサン系抗がん剤パクリタキセル(タキソール)と放射線治療の併用が著しい効果をあげていると発表されています。

 また,フォーカルユニットで胃がんの3期を放射線治療だけで治療した報告例もあります。


 大腸がん・直腸がん

 大腸がんは基本的には手術が有効とされています。放射線治療は補助的なものであり,リンパ節転移が多数ある場合や,がんが周囲に拡がっている場合などに,再発の予防を目的に,術後に放射線治療を行うことがあります。

 直腸がんも手術が中心です。進行がんの場合,手術の前や後に放射線治療と化学療法を併用する化学放射線治療が成果を上げています。また,肛門を温存するため,手術の前に放射線治療を行う 場合もあります。

 これまで大腸などの臓器は時間と共に変化するため,正確な放射線の照射は難しいとされていましたが,最近では時間とともに変化する患部の動きに合わせた,4次元放射が可能となり,放射線だけで治療に成功している例もあります。


 子宮がん

 子宮がんは子宮の入り口にできる子宮頸がんと子宮の中心部にできる子宮体がんに別れ,治療法も異なります。

 子宮頸がんはステージT〜U期までは手術で行われることが多く,手術が困難なV期〜W期は主に放射腺や化学療法で治療します。

 欧米ではT〜U期でも放射線が使われることが多く,手術と同等の治療成績が得られています。しかし,V期〜W期の場合,手術も難しく,放射線治療でもあまりよい治療成績は得られていません。
 
 放射線治療には,身体の外から放射線を病巣に照射する外部照射法と,直接放射線を発生させる物質をがんのある部位にプラスチックの筒を通して挿入する膣内照射があります。病状により方法を選択します。 放射線治療と化学療法との併用は,副作用はありますが,高い治療効果を示しています。
 
 また,子宮体がんは腺がんで放射線はあまり効果がなく,手術が中心ですが,術後に放射線をかけることもあります。


 前立腺がん

 前立腺は放射線感受性が高く,トモセラピーやノバリス,リニアックナイフなどのIMRTの登場や密封小線源治療の確立により,近年では放射線治療が補助的治療ではなく,根治的治療法として確立できるようになりました。

 放射線治療では,外科療法で見られる術後の勃起不全や尿失禁を避けることができ,QOLの低下を防ぐことができるというメリットがあります。

 放射線治療では体の外側から放射線を当てる外照射と内部から放射線を照射する組織内照射方法があります。

 また組織内照射は,ブラキーセラピー(小線源治療)と呼ばれ,ハイドース(高線量照射)とロウドース(低線量照射)の2つに分かれます。
  
 高線量照射は,下半身に麻酔をかけ,会陰部から針を前立腺内に差し込み,針金状の放射線源を針の中空部分を通して前立腺内部に到達させて,短時間照射するという治療法です。
 
 低線量照射でもやり方は同じですが,針先から放射線源50〜100個を前立腺内に押し出して永久に埋め込むという方法で,QOLが良好で,今後普及すると考えられます。 


 悪性リンパ腫

ホジキンリンパ腫
 ホジキンリンパ腫は放射線に対する感受性が高く,病期T期の段階では放射線治療のみでも約90%の5年生存率を示しています。

 したがってT〜U期で病巣が一カ所に限局している場合は放射線治療が中心となります。以前は標準的な治療として放射線療法で,リンパ腫の病変の存在する部分を中心に,広範囲に放射線照射を行っていました。

 しかし,広範囲の放射線治療では,二次発がんがみられたり,治療後数カ月経ってから放射線性肺臓炎や放射線性心嚢炎(しんのうえん)などの生命を脅かすような副作用がみられることがあり,最近の治療では,化学療法と放射線療法を併用することが増え,放射線照射領域を縮小する傾向にあります。


非ホジキンリンパ腫

 非ホジキンリンパ腫も放射線は効果的です。ホジキンリンパ腫と異なり,リンパ管を不連続に進むので放射線治療では難しい面もあり,抗がん剤治療が中心となりますが,首やのどに出来た場合は放射線だけでも根治することができます。



放射線治療の副作用 
 
 日本は唯一の被爆国であり,放射線は恐ろしいものという,いわば放射線アレルギーがあり,患者も放射線治療に抵抗感を持っている人も多いようです。

 また,一昔前の放射線治療の情報で,副作用が強く,皮膚のただれを起こすというイメージを持っているという人も少なくありません。

 現在の治療機器はピンポイント照射をすることで,大きな免疫力低下は避けられるようになり,また,皮膚炎を起こすことは少なくなっています。

 とはいえ,放射線の副作用がなくなったというわけではなく,注意が必要です。 放射線治療の副作用には,放射線をかけている時に起こる「急性放射線障害」と放射線治療後半年以上立ってから起こる「晩発性放射線障害」の2種類があります。


急性放射線障害の主な症状
 
 副作用として皮膚が赤くなったり,口内炎や下痢など細胞分裂の激しい部位は影響がでます。これは抗がん剤と同様ですが,命にかかわることはなく,放射線治療後はほとんどが完治します。


  皮膚の炎症
 皮膚の炎症は照射腺量や部位によっても異なりますが,赤くなったり,かゆみを生じたり,時に水ぶくれのようになったり,表皮がむけて痛むこともあります。多くは治療開始後2週間後に現れ,治療終了後2〜4週間で改善されます。 

 治療機器の進歩した現在,びらんや潰瘍になるほど重症化することはまれですが,抗がん剤と併用すると症状が長く続く場合もあります。

 皮膚への刺激を避け,石けんなども刺激性のないものを使いましょう。症状が重い場合,かゆみ止めや抗炎症薬,ステロイド剤の軟膏を処方してもらいましょう。


  白血球減少(骨髄抑制)
 白血球は骨髄でつくられるので,骨髄に放射線が照射されると白血球が減少します。しかし,骨髄移植前に行われる全身照射など特殊な治療を除いて化学療法などに比べて軽度です。

 白血球が減少すると,感染症になりやすく,主に感染をおこしやすいのは,口腔や呼吸器,消化器,尿路,肛門などです。腫れや痛み,発熱など見られた場合感染症の可能性がありますのですぐに医師に報告しましょう。 

 感染症を防ぐため,体を清潔に保ち,生活環境も清潔にすることが大切です。現在は白血球減少に対する治療薬も開発されています。
 

  脱毛
 放射線治療は抗がん剤とは異なり,照射した部位だけが脱毛します。頭部全体にかけると全体の毛が抜けますが,一部に照射すると円形脱毛症のようになります。

 脱毛は治療をはじめて1週間〜3週間後にあらわれますが,一時的なもので,治療終了後,数ヶ月で生え始めます。


 
 宿酔(しゅくすい)症状
  いわば二日酔いのような症状であり,原因はまだはっきりと解明されていませんが,腹部に広範囲に照射した時に起こることがあります。

 具体症状としては全身倦怠感,めまい,吐き気,嘔吐,頭痛などで2〜3日で治ってしまうことが多い症状です。症状が重い時には,吐き気止めや抗ヒスタミン剤などで対処します。

   
  口内炎,口の渇き
 口腔や咽頭に放射線が照射されると,細胞分裂の激しい粘膜に急性の炎症が起こり,最初は粘膜が赤くなり,軽い痛みやしみる感じがしますが,さらには,白い膜のような斑点や潰瘍が生じ,悪化するとただれや出血も見られるようになります。

 また,放射線の影響で唾液分泌腺の機能が低下し,口の中が乾くこともあります。この乾きは口内炎を悪化させる原因にもなります。

 通常,治療後1〜2週間で改善しますが,抗がん剤を併用するとなかなか治らない場合もあります。消炎,鎮痛薬の内服や軟膏,うがい薬で対処し,細菌感染を防ぐためにも,やわらかい歯ブラシでの歯磨き,うがいの励行が必要です。


  味覚障害
 舌にある味蕾細胞は放射線の影響を受けやすく,口腔や咽頭への照射によってこの部位がダメージを受けると,味覚障害が生じ,味覚が変化し,味に関して鈍くなったり,苦みを感じるようになったりします。 通常は数ヶ月で改善され,長期にわたることはまれです。


 
 のどの痛み,乾き,声がれ
 頸部に放射線が照射されると,咽頭炎や喉頭炎が起こることがあります。照射後2〜3週間で発症し,のどの痛み,乾き,せき,たん,声がれなどの症状が出ます。
 
 マスクやうがいをするなどして,のどに潤いを与えることが大切ですが,症状が重い場合,医師から処方される吸入剤で対処します。


 ● 胸焼け,嚥下(えんげ)痛 
 食道に放射線が照射されると,食道の粘膜がダメージを受け,胸焼けや食べ物を飲み込む時の痛み(嚥下痛)を感じることがあります。

 照射開始後,2週間程度で症状があらわれ,通常は治療終了後,2〜4週間で治りますが,抗がん剤と併用すると,症状が強く,長くでる場合もあります。 辛い物や熱い物,冷たい物などを避け,内服薬で対処します。
 

  胃の不快感,痛み,吐き気
上腹部に照射されると,胃や十二指腸の粘膜が炎症を起こし,胃の不快感や痛み,吐き気などが起こることがあります。通常治療終了後1〜2週間で治りますが,まれに半年以上たってから,消化管に潰瘍ができ,出血することがありますので注意が必要です。 

 辛いもの,熱いものなど刺激性のある食べ物やアルコールを控えます。症状によって,制吐剤,胃粘膜保護剤,抗潰瘍薬などを処方してもらい,対処します。


  下痢・腹痛
 下腹部への照射により,腸管粘膜がダメージを受けると,下痢が起こりやすくなり,腹痛をともなうこともあります。また,直腸や肛門に放射線が照射されると,粘膜がただれ,排便時に痛みを感じることがあります。

 通常は治療終了後,2〜3週間で治りますが,抗がん剤を併用すると,症状が強く,長くでる場合があります。腸粘膜を刺激する,冷たい物や脂肪の多い食品,繊維質の多い物,アルコールなどは避け,消化吸収のよい食べ物を選びましょう。

 下痢の症状が強い場合,整腸薬や下痢止めで対処し,脱水症状を防ぐためにも水分補給には冷たくないスポーツドリンクなどがよいでしょう。

 
  頻尿・排尿痛・残尿感 
 放射線により膀胱粘膜が炎症を起こすと,尿意が頻繁におこります。また,多くが排尿時に痛みをともない,残尿感もあります。また,尿道にむくみが生じると排尿が困難になることもあります。

 尿意が強くても,水分制限はせず,十分な水分を補給することが,細菌感染を防ぐ意味でも大切です。また,コーヒーなど刺激性のある飲食物は控えましょう。また,抗炎症薬や抗頻尿薬の処方で対処します。



晩発性放射線障害の主な症状
  
 放射線治療後,時間が経過してから起こる「晩発性放射線障害」の重篤な副作用は治療技術の進歩により,非常にまれにしか起こりませんが,症状がでるまで半年以上も経過しているため,見逃してしまうこともありますので
定期的な診察を欠かさないよう注意してください。


 頭部
 脳に大量に照射した場合など,脳の組織が壊死したり,脳の一部が梗塞を起こすことがあり,さらに脳神経の障害から,難聴,顔面神経麻痺,脳障害,下垂体機能低下などを起こすことがあります。

 眼に照射された場合は,白内障や網膜症などの視力障害が出ることがあり,耳に照射した場合中耳炎やめまいなどの症状が現れることがあります。



口腔・頸部

 唾液腺の機能が低下し,口の中が渇いたり,味覚が変化することがあります。またあごが開きにくくなり,リハビリが必要になる場合もあります。


胸部
 肺では照射した部分の肺が繊維化し硬くなり,その容積が大きいと呼吸困難になることがあります。さらに肋骨が弱くなり,骨折がおこりやすくなります。また,食道壁が繊維化して硬くなり,食道が細くなることで通過障害が起こり,手術が必要な場合があります。

 まれに,心臓を包む心膜内に水がたまり,心不全になることもあり,女性の場合,乳腺が萎縮したり,壊死したりという障害が起こることもあります。 上腕神経に障害をおこし,腕,手がしびれたり,力が入らなくなったりすることがあります。


腹部
 腎臓は放射線に対して敏感で,腎機能が低下し,腎炎が起こる場合があります。また,直腸・結腸の内腔が狭くなったり,まれに胃や腸に潰瘍ができ,出血を起こすことがあります。

 まれに膀胱炎が慢性化し,悪化すると膀胱の繊維化や萎縮がおこり,頻尿になったり,血尿が出たりすることがあります。

 
骨盤

 生殖器は放射線に対して敏感な器官であり,卵巣や精巣に照射されると不妊になるリスクが高くなります。また,足の付け根に照射されると,リンパ液が停滞し,下肢がむくむことがあります。


その他
  子供の場合,骨に照射すると,,少ない照射量でも骨の成長が止まることがあり,筋肉へ照射されると筋肉が萎縮することがあります。





放射線治療のメリットと課題

 
これまで説明してきたように,治療機器の進歩により,放射線治療の副作用は大幅に低減され,治療効果も格段に高くなっています。

 日本では,外国と比較して治療機器では高度なものが設置されているにもかかわらず,十分には活用されていないと言ってよいでしょう。

 やはり,日本でがん治療の中心は外科であり,手術が第一の選択肢なっていることが多いのですが,放射線治療機器の進歩を考えると,放射線治療はもっと見直されるべきではないかと考えます。

 放射線治療は手術と比較して,治療費は安いことが多く,入院しなくとも通院でも可能です。手術は,切除するため,その肉体的な負担は大きく,QOLの低下から術後の生活に苦しんでいる人も少なくありませんが,放射線治療は器官が損なわれず,治療前と同様の生活が可能です。

 さらに,これまでは切除しないと治癒は不可能と考えられていたがんでさえ,根治も可能となってきています。

 しかし,放射線治療も問題はあり,日本での最大の課題は前述したように,放射線の専門家が少ないということです。1回の放射線量をどれくらいにし,何回程度放射したらよいかなどの治療計画は,がんの種類,大きさ,患者の状態などから総合的に判断されなくてはなりません。

 いくら,高度な治療機器を設置したところで,うまく使いこなし成果を上げるには,医師の適切な判断なくしてはあり得ないのです。

 また,抗がん剤ほどではないにせよ,副作用をともなうことは事実であり,まれと言っても,晩発性放射線障害では有効な治療の手だてがないケースも多いのです。

 さらにがんが再発した場合,すでに放射線治療を受けている患者は多くの場合,細胞がダメージを受けているため,放射線での治療は困難です。

 とは言っても,これから放射線治療機器はさらに進歩し,放射線治療を選択する患者はますます増加することは間違いないでしょう。

 上記に紹介した最新の治療機器は最新放射線治療機器設置病院のページで紹介していますので参考にしてください。


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