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がん治療における抗がん剤とは

   

がん治療において抗がん剤治療は手術放射線治療と並ぶ,三大治療法の一つです。

抗がん剤はそれ自体が,がんを殺す能力を持ったものであり,投与方法としては点滴や静脈注射,経口投与の他に患部へ直接投与する方法もあります。
 
これらは作用する機序により,いくつかの種類に分類されますが,基本的には,がん細胞が細胞分裂を行う時に作用し,がん細胞のDNAの合成や複製を阻止することで,がん細胞を死滅させるというはたらきをもっています。

がん細胞は際限なく増殖を繰り返す細胞なので,正常細胞よりも抗がん剤の作用を受けやすいと言えます。しかし,この細胞分裂は正常細胞でもおこなわれ,正常細胞もこの影響から逃れることはできません。 

この治療は静脈への投与,あるいは経口投与などにより,血流と共に全身をめぐるため,全身にちらばったがん,手術が不可能ながん,白血病や悪性リンパ腫などの血液のがんの全身療法として使用されますが,放射線療法や手術療法の併用療法として,また,術前や術後に転移しているがんを縮小させる目的で使用される場合もあります。

抗がん剤投与に関しては,その目標として(1)がんの治癒 (2)治癒ができない場合の延命 (3)症状の緩和の3つに大別することができますが,治療法もそれぞれの目的によって異なってきます。


 
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抗がん剤が効くがんと効かないがん
   
抗がん剤はすべてのがんに有効というわけではありません。抗がん剤のがん細胞を死滅させる効果を薬剤感受性と言いますが,この薬剤感受性はがんの種類によって大きく異なり,もっとも効果のあるものから,ほとんど効果が期待できないものまで,4段階に分けることができます。(下図参照)


抗がん剤薬剤感受性分類 がん診療レジデントマニュアル(国立がんセンター内科レジデント)より
薬剤感受性 治癒臨床効果 種類2000年版 種類2010年版  種類2013年版
 A よく効くがん 延命,治癒共に期待できる
治癒率25%~90%
一時的症状改善など臨床効果は80%以上
 
急性骨髄性白血病
急性リンパ性白血病
ホジキン病

(悪性リンパ腫)

非ホジキンリンパ腫
(中高悪性度リンパ腫)
胚細胞腫瘍
絨毛がん 
急性骨髄性白血病
急性リンパ性白血病
ホジキン病
(悪性リンパ腫)
非ホジキンリンパ腫((中高悪性度リンパ腫)
胚細胞腫瘍
絨毛がん 
急性骨髄性白血病
急性リンパ性白血病
ホジキン病
(悪性リンパ腫)
非ホジキンリンパ腫
(中高悪性度リンパ腫)
胚細胞腫瘍
絨毛がん 
 B 比較的よく効くがん   治癒はあまり期待できない延命は期待できる 
治癒率25%以下
一時的症状改善など臨床効果は80%以上
乳がん・卵巣がん
小細胞肺がん
多発性骨髄腫
非ホジキンリンパ腫
(低悪性度・悪性リンパ腫)
慢性骨髄性白血病
骨肉腫   
乳がん・卵巣がん
小細胞肺がん
多発性骨髄腫
非ホジキンリンパ腫
(低悪性度・悪性リンパ腫)
慢性骨髄性白血病
骨肉腫・
大腸がん  
乳がん・卵巣がん
小細胞肺がん
多発性骨髄腫
非ホジキンリンパ腫
(低悪性度・悪性リンパ腫
慢性骨髄性白血病
骨肉腫・
大腸がん
悪性黒色腫
 C あまり効かないがん   症状緩和が期待できる 

臨床効果は40%程度
軟部組織腫瘍
頭頸部がん
食道がん・子宮がん
非小細胞肺がん
胃がん・
大腸がん
膀胱がん
前立腺がん
膵臓がん  
軟部組織腫瘍
頭頸部がん
食道がん・子宮がん
非小細胞肺がん
胃がん
膀胱がん・
肝臓がん
前立腺がん・
脳腫瘍
膵臓がん・
腎臓がん
軟部組織腫瘍
頭頸部がん
食道がん・子宮がん
非小細胞肺がん
胃がん・胆道がん
膀胱がん・
肝臓がん
前立腺がん・脳腫瘍
膵臓がん・腎臓がん
 D ほとんど効かないがん   効果の期待が少ない
治癒も延命効果もほとんど期待できない  
悪性黒色腫・肝臓がん脳腫瘍・腎臓がん・甲状腺がん  悪性黒色腫
甲状腺がん 
甲状腺がん 
(2014年ソラフェニブ・レンバチニブ承認により上位ランクへ)

ただし,この薬剤感受性の分類に関しては,専門家の中でも意見が分かれているものもあります。

上記の表からもわかるように,抗がん剤単独治療で治癒が期待できるのは,主に白血病や悪性リンパ腫などの血液のがんであり,それ以外は治癒というより,延命が主な目的となります。

このように,薬剤単独での効果は限定的ですが,手術や放射線療法など,他の治療法との併用では,完治できる場合もあります。

また,2000年と2010年にかけて,大腸・肝臓・脳・腎臓がんにおいて,ランクが上がっています。これは分子標的薬など,新しい薬剤が承認されたことによります。

特に,悪性黒色腫(メラノーマ)では,免疫細胞の機能を阻害するがん細胞の働きをブロックする免疫チェックポイント阻害剤とよばれる分子標的薬ニボルマブ(オプジーボ)が承認され,延命がかなり期待できるようになり,DからBランクへと感受性効果が向上しています。

さらに,これまで,抗がん剤の効果はほとんど期待できなかった甲状腺がんですが,2014年に分子標的薬ソラフェニブ・レンバチニブが承認されたため,今後はDランクからBランクへ移動すると推測されます。

これからもも新しい薬剤の登場により,上記の表は変わり,治療効果も上がっていくと考えられます。

ただし,これらはがんの組織型,病期によっても異なることがありますし,個人差も大きいことが特徴でもありますので,上記の表は目安と考え,詳しくは主治医に確認してください。
 

 
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抗がん剤の副作用


抗がん剤にはほとんど副作用が見られます。この副作用は個人差が大きく,同じ種類の薬剤,同じ投与量でも,その副作用が現れる程度はまちまちです。

この原因は,酒に弱い人と強い人がいるように,代謝酵素のはたらきが異なるため,薬剤の代謝に個人差があるためと考えられています。

したがって,現在の体重から薬剤の投与量を決定するという方法は,薬剤の代謝が弱い人には,副作用も強くでてしまうという問題があります。その場合,薬剤の減量が必要になることもあります。

ちなみに,アルコールに弱い人は,抗がん剤でも副作用が出やすいということにはなりません。

前述した通り,抗がん剤は正常細胞にもダメージを与え,その結果,副作用が起こるのです。正常細胞の中でも特に細胞分裂のさかんな部位ではよりダメージを受けます。

脱毛や口内炎,下痢,おう吐がよく副作用として見られるのも,これらの毛根細胞や口腔粘膜,消化管粘膜は細胞分裂がさかんなためです。

また,白血球の減少や貧血なども副作用としてよく見られますが,これは骨髄にあるすべての血球のもとになる造血幹細胞が傷つき,白血球や赤血球が産生されなくなるためです。(骨髄抑制)

近年,吐き気に対しては制吐剤が,白血球の減少にはG-CSF製剤が開発され,成果をあげています。

このG-CSF製剤の使用により,抗がん剤投与による白血球減少のために,次の投与まで3週間あけなければならなかったものが2週間ですむようになりました。

しかし,このG-CSF製剤は白血球のなかでも,細菌感染などに効果のある顆粒球を増加させるための薬剤であり,がん細胞に対して効果があるといわれるリンパ球を増加させることはできません。


 
 
 
   
抗がん剤の主な副作用と発現時期

抗がん剤治療では,個人差が大きいなものではありますが,必ず副作用があらわれます。

この副作用は,その持続期間によって大きく2種類に分けることができます。

一つは,抗がん剤治療が終了すればまもなく終息する一時的な副作用であり,もう一つは,抗がん剤治療が終了後にも継続する,長期的な副作用です。

  悪心・おう吐・アレルギー反応は早く出現する。


たとえば,吐き気や嘔吐は,たいていは投与開始後すぐか翌日くらいから始まり,数日間続きます。

しかし,抗がん剤の投与をやめれば,数日以内に吐き気は止まります。

危険なアレルギーの副作用として,開始直後からあらわれ,全身の臓器に重い症状を引き起こすアナフィラキシーがあります。

このアナフィラキシーは,症状が早くあらわれるほど重い場合が多く,急激な血圧低下をともなうアナフィラキシーショツクは,生命の危険に関わることも多く,注意が必要です。


  骨髄抑制は投与後1~2週間くらいから起こる。


白血球や赤血球,血小板の減少である骨髄抑制は多くの抗がん剤でみられますが,多くの場合,投与開始の1~3週間後に血球の数が最低になります。

骨髄抑制は,進行すると重症な感染症や出血が起こるため,注意が必要です。

この副作用は,通常は抗がん剤の投与を終了すれば,まもなく血球数は回復します。


  下痢や便秘,口内炎などは投与終了後まもなく治癒


下痢や便秘,口内炎,のどの炎症などは抗がん剤の投与が終わればまもなく終了しますが,

下痢には腸の蠕動(ぜんどう)運動が活発になることで,24時間以内に起こるものと,抗がん剤によって腸の粘膜がダメージを受けたことによる,24時間以降に現れる遅発性下痢とがあります。

また,口内炎のは,抗がん剤そのものによる場合と,口腔内細菌感染によるものとがあります。


  脱毛や手足のしびれは投与後2~3週間ぐらいから


脱毛は,抗がん剤投与後2~3週間後にはじまりますが,一時的なもので,抗がん剤治療終了後,2~3ヶ月後には多くの場合,回復します。

末梢神経の障害で起こる手足のしびれや痛みなども,投与後2~3週間後くらいであらわれ,回復に長い時間がかかる場合が多く,数ヶ月~1年以上かかることもあります。


  長期的なく副作用があらわれることも


抗がん剤の副作用の中には,1年以上にわたって続く長間的なものや後遺症として一生残るものもあります。

腎機能低下,心臓や肺の障害,味覚変化,神経異常,聴覚異常,認知力低下,生殖機能低下などの副作用は,長期的に続く場合があります。

   
  主な副作用の現れる時期と期間
   


副作用発現時期 副作用の種類
投与日 アレルギー反応,吐き気,おう吐,血管痛,発熱,血圧低下
投与後2~7日 だるさ,食欲不振,吐き気,おう吐,下痢
投与後1週間~2週間 口内炎,下痢,食欲不振,胃もたれ,貧血,白血球減少,血小板減少
投与後2週間~4週間 脱毛,皮膚の角化,しみ,手足のしびれ,膀胱炎

 


 
 
 
   
抗がん剤治療におけるインフォームド・コンセントと
インフォームド・チョイス

抗がん剤の治療に関しては,副作用や費用など,肉体的,精神的,経済的負担が伴います。したがって主治医からの詳しい説明とその治療に関する患者の同意(インフォームド・コンセント)が必要不可欠です。 疑問点などはあいまいにせず必ず医師に確認しておきましょう。

また,医師にこの治療法以外の方法はないか確認し,自ら判断して選択する(インフォームド・チョイス)ということも必要ですが,提示された治療法に疑問を感じたり,自己選択が難しいと感じた場合,他の病院や他の医師の意見(セカンド・オピニオン)を求めることも必要です。
   

治療開始前に医師に確認しておきたいこと

(1)治療の目的と根拠
(2)期待できる治療効果と治療期間
(3)抗がん剤の種類,副作用,後遺症などのリスクとその抑止方法
(4)この治療法以外に考えられる治療法
(5)治療費はどの程度で保険適用が可能かどうか
 




(1)抗がん剤治療の目的と根拠
 治療の目的は大きく3つあります。1つめは「治癒を目指すこと。」 2つめは「治癒は困難であるが延命をめざすこと。」 3つめは「症状の緩和」です。さらに手術前にがんを縮小させる場合や手術後の再発予防のためにおこなうこともあります。

 したがって患者は現在自分がおかれている病状を確認した上で,その目的を理解し,納得しておくことが必要です。


(2)期待できる抗がん剤の治療効果と治療期間
 治療効果を尋ねた場合,医師から「奏効率は~%です。」とか,「~%の人に効果があります。」と説明される場合もありますが,ここで重要なことは「効果がある=治癒するということを示すことではない。」ということです。この点に関しては後ほど詳しく説明したいと思います。

 したがって,はっきりと治癒率や無治療と比較しての延命効果,生存期間などについて尋ねる勇気も必要です。上記に示したように現状では抗がん剤のみの治癒率は決してだれもが満足いくものではなく,主治医もその厳しいデータを示すことにためらうこともあると思います。

 つらい抗がん剤治療を行っても延命はわずかという場合も少なくありません。 しかし,副作用や効果に納得できない場合,他の治療法を選択するというという方法もありますので,治療効果をあいまいにしたまま,治療は受けないほうがよいでしょう。
 

(3)抗がん剤の種類,副作用,後遺症などのリスクとその抑止方法 
 抗がん剤治療ではほとんどの場合,強い副作用がでます。そこで,どのような副作用が起こりうるのか,その副作用を抑える方法にはどのようなものがあるのか,確認しておきましょう。

 現在は優れた制吐剤が開発され,おう吐や吐き気などはかなり軽減されることができるようになっています。また,副作用が予想以上に現れた場合,医師の判断で,他の抗がん剤に切り替える場合もあります。

 抗がん剤によっては副作用だけでなく,神経障害や腎臓障害,聴覚異常などの長期にわたる後遺症が現れる場合もありますので,その可能性やその後の対応についても確認しておきたいものです。
 

(4)この抗がん剤以外に考えられる治療法
 現在,多くの抗がん剤が開発されており,選択肢も一つではありません。したがって,他の治療薬の選択肢もないのか,またその効果や副作用なども尋ねる必要があります。また,有効な治療薬がない場合でも,欧米では承認されているが,日本ではまだ未承認であるものを使用する方法も考えられます。

 また,放射線治療の方が効果的な場合もあり,抗がん剤と併用する化学放射線療法は,近年,その有効性が証明されてきています。しかし,医師には誰でも得意な専門分野とそうでない分野とがあり,医師の示した治療方針に納得のいかない場合,セカンド・オピニオンによって他の医師から他の治療方法について意見を求めることも必要です。


(5)治療費はどの程度で保険が適用されるか
 抗がん剤治療においては保険適用されている薬剤においても,高額なものもあります。さらに診察費や各種検査費用もかかるので,あらかじめ費用を確認しておいたほうがよいでしょう。

 厚生労働省が承認した標準治療を行う場合,1ヶ月間に病院に支払う医療費が一定額を超えると,申請すると超過分が高額医療費補助として支給される制度もあります。

 しかし,未承認のものを使用する場合は,保険適用を受けられないのは抗がん剤だけでなく,検査費用や入院費用などすべてが,自由診療扱いとなり,全額が患者の負担となります。

                    

 
     
 

 
   
抗がん剤治療の効果の判定とその後の治療

 抗がん剤は同じものを長期にわたって使用しても,あまり効果が得られないどころか,それによって悪化する場合も多いといえます。

 また,標準的治療といえども,検証された効果があったということで,その治療薬がその患者に効果を示すとは限りません。同じがんの種類でも,患者の体質によって抗がん剤を変える必要があります。

 抗がん剤の効果がでるまでに平均1~2ヶ月かかりますが,その時の治療効果の判定により,効果が見られない場合はすぐに他の抗がん剤に切り替える必要があります。

 がんの治療効果判定は標的病変の大きさの変化や腫瘍マーカー検査の結果などが判定の基準となります。
      

   固形がんの治療効果判定のための新ガイドライン RECIST JCOG版

標的病変の
判定基準
CR=Complete Response
 (完全奏効,著効)
腫瘍の消失が4週間以上続いた場合
PR=Partial Response  
 (部分奏効,有効)
腫瘍の最長径の和の30%以上が縮小
SD=Stable Disease    
 (安   定) 
PRとPDどちらの基準も満たさない。
PD=Progressive Disease
 (進   行)
腫瘍の最長径の和が20%以上増加

非標的病変の
判定基準
CR=Complete Response
 (完全奏効)
すべての非標的病変が消失,腫瘍マーカーの値の正常化
IR=Imcomplete Response   (不完全奏効)
SD=Stable Disease
 (安定)
非標的病変の残存,腫瘍マーカーが正常上限値を超える。
PD=Progressive Disease
 (進   行)
非標的病変の明らかな増加


 
 この判定でPDの場合,抗がん剤治療を中止し,変更する必要があります。また,PRやSDでは,一般的には治療は継続されますが,患者の副作用や様態を見ながら慎重に行われる必要があります。

 ここで,注意しておきたいことは,完全奏効と判断されてもこれは画像診断上,わかりやすく言えば目に見える範囲での腫瘍の消失ということで,ミクロのレベルでは多数のがん細胞が残っていることもあります。

 このような見かけ上の消失が4週間続けば,完全奏効という判定になりますが,その後もその状態が保証されるということではありません。

                    

 
 

 
 
 
  抗がん剤治療 Q&A
 
食道がんには化学放射線療法が有効と聞きました。どのような治療法か教えてください 
 
抗がん剤治療中の食事で気をつけなければならないことを教えてください。 
 
抗がん剤治療を受けるべきか迷っています。どう判断すればよいのでしょうか?  
 
抗がん剤治療では骨髄抑制という言葉をよく耳にしますが,どのような意味ですか? 
 
小児のがん治療に抗がん剤を使用してもよいのでしょうか?  
 
抗がん剤治療の治験についてどのようなものか,メリットはあるのか教えてください。 
 
抗がん剤の標準治療薬,一次選択薬,二次選択薬とはどのようなものか教えてください 
 
抗がん剤は使い続けると効かなくなるというのは本当ですか?
 
 
 

 
   

抗がん剤治療の問題点

ここではこの化学療法の問題点として考えられることを説明します。

抗がん剤治療はそもそも矛盾を抱えた治療です。なぜならがんの治癒や延命を目的としながら,人間が本来持っている免疫力,体力をも低下させる治療であるからです。

一般に抗がん剤の副作用と呼ばれている作用は,細胞分裂を停止させ細胞を破壊する毒性です。したがって,がん細胞を弱らせると同時に全身の細胞にもダメージを与えるという問題を常に抱えています。

抗がん剤治療においては,患者が副作用に耐えられる量まで,最大量の投与をすることが,効果的であるとの考え方が基本的にあり,この考えは,あくまで腫瘍の縮小を第一に考えたもので,この結果,腫瘍は縮小したが,抗がん剤の影響で身体が衰弱し,延命はできなかったというケースも多々あります。

腫瘍が一時的に縮小あるいは消失したと喜んでいても,生き残ったがん細胞は使用された薬剤に対して耐性を持つものであり,抗がん剤によるがん細胞への免疫力低下も影響して,腫瘍は再び増大するケースが多いのです。

この腫瘍縮小を第一とする考えの背景には,抗がん剤の承認において,これまで,腫瘍縮小が必須条件であるという点や,腫瘍が縮小すれば,延命もできるであろうという考え方がありました。

最近では,腫瘍縮小は延命につながらないということがわかり,一方で,腫瘍縮小の効果は弱いものの,がんとの共存しながら延命効果が期待できる分子標的薬の登場により,抗がん剤の新薬の承認には,延命効果が必須となっています。

ただし,この新薬承認の治験において,延命効果が,これまでの治療よりおよそ1ヶ月以上長ければ,承認されるというゆるいものです。

ですから,承認されている抗がん剤の延命効果といっても,多くが数ヶ月程度の延命など,それほど長いものではないという点も問題といえるでしょう。

また,抗がん剤治療を始めるにあたり,医師から「この抗がん剤治療の奏効率は30%です。」という説明があったとすると,「腫瘍が完全消失する場合か,腫瘍が画像診断上の面積で50%以下の大きさに縮小した状態が4週間以上続く人が30%程度いる。」ということで,30%の人が治癒するという意味ではありません。

仮に,その30%の中に入れた患者がいたとして,その患者の腫瘍が再び増大し,わずか1ヶ月後に亡くなったとしても,一時期腫瘍が縮小したため,その治療は有効であったとされてしまうのです。

また,抗がん剤治療における「奏効率」や「有効」などの表現は,患者が望む,治癒や延命を意味せず,患者に対し多くの誤解を与えるものになっており,医師はこの言葉の意味をわかりやすく説明する責任があります。
 
患者の立場としては,示された奏効率の中で,完全奏効は何%あるか,確認すべきです。なぜなら,腫瘍が完全消失しないと治癒は望めないからです。

しかし,前述した通り,完全奏効すなわち腫瘍が完全消失した状態であっても,それは目に見える範囲での状態であって,がん細胞が残存している可能性はあります。

がん細胞が完全消失した状態が最低で4週間保てれば完全奏効と見なされますが,その後,消失した腫瘍が再び増大するという可能性も言外に含まれ,抗がん剤がよく効くがん以外はその可能性の方が大きいのです。

また,腫瘍が縮小するにとどまるという効果では,抗がん剤を変えるなどして,腫瘍が再び増大してくるまでの時間を稼ぐ,という期待しかできません。

このように抗がん剤治療には副作用だけでなく,多くの問題があります。患者側としては,この治療法に効果のあるがんとないがんを知っておく必要がありますし,特にこの「奏効率~%」とか「効果がある。」「有効」などの具体性を欠いた表現はその意味を医師によく確認しましょう。


最近では,すでに述べたように,分子標的薬の登場により,腫瘍縮小効果は小さいものの,がんと共存しながら,延命できるケースが増えており,抗がん剤治療においては,腫瘍が消失あるいは縮小しなくとも,延命できればよしとするという考え方に変わりつつあります。

 

 
 
 
 
   

新しい抗がん剤治療


極小量療法

 抗がん剤はがん細胞を死滅させる力はありますが,同時に免疫細胞などの正常細胞にもダメージを与えてしまいます。
 従来の標準的抗がん剤治療では,奏効率,すなわち見かけ上の腫瘍の縮小効果を第一に考えられていたため,副作用に耐えられる限度まで大量に抗がん剤が投与されるケースが多く,腫瘍は一時的に縮小しても,免疫細胞をはじめとする正常細胞のダメージにより,腫瘍が再び増大するというリバウンド現象はよく見られます。 
 そこで,投与量を極小量にして患者に投与したころ,本来ならば腫瘍が悪化するはずなのに,良好な治療成績が得られるケースが見られました。
 この方法に免疫力を上げる薬剤を投与するなどの方法を併用することにより,標準的な抗がん剤治療を上回る延命効果が報告されています。
薬剤をごく少量に減らすことにより,免疫細胞にはダメージを与えず,がん細胞を弱らせることで,がん細胞が免疫細胞に認識されやすくなるのではないかと考えられています。
 このがん治療法は,まだごく一部の施設でしか実施されていませんが,従来の抗がん剤治療の常識を覆す治療法です。                             
                         

局所投与法
 抗がん剤は静脈注射で投与されることが多く,その結果,正常細胞へはダメージを与える一方で,代謝されたり,広く拡散するため,腫瘍には十分な濃度の抗がん剤が届かないという欠点があります。
 そこで,直接腫瘍に投与する,あるいは限られた一定の範囲でしか抗がん剤が循環しないよう工夫した治療法が考案され,副作用が軽減される一方でがん細胞には高濃度ではたらくことができるため,成果もあがっています。

(1)動注化学療法
 薬剤を動脈内に注入することを一般に動注といいますが,がんのある部位の栄養動脈にカテーテルを挿入し,高濃度の抗がん剤を注入する抗がん剤治療を動注化学療法といいます。
 この治療法は主に肝臓や腎臓など太い動脈のある臓器のがんに適用されていますが,その他にも頭頸部がん,骨腫瘍,卵巣がん,前立腺がん,膵臓がん,乳がんなどにも適用されることがあります。
 この中でも特に肝臓がんでの治療では「肝動注化学療法」と呼ばれ,抗がん剤5-FUとインターフェロンの併用で進行肝がんにも大きな成果があがっています。
 また,動脈内に投与する方法ではありませんが,脳や脊髄の随腔内あるいは胸腔や腹腔内に直接抗がん剤を投与する方法もあります。

(2)
閉鎖循環下骨盤内灌流化学療法
 この治療法は骨盤内にある臓器のがん,すなわち膀胱がん,直腸がん,子宮がんなどに対する治療法で,骨盤内へ入る血流や骨盤外へ出て行く血流を遮断し,一時的に骨盤内だけを血液が循環するようにし,そこに大量の抗がん剤を投与するという方法です。
 実際の方法としては,そけい部(太ももの付け根)からバルーンつきカテーテルを挿入し,バルーンをふくらませることで,骨盤内臓器への血流を遮断した後,ポンプで骨盤内だけに大量の抗がん剤を循環させます。 また,処置後は血液透析を行い,抗がん剤を完全に濾過し,3時間ほどで終了します。
 この治療法では1回の治療で腫瘍が消滅することも多く,副作用も少ないうえに,腫瘍の消失,縮小,さらに普遍も含めると奏効率は100%に及ぶと報告され,治療が困難であるほどの進行がんにも大きな効果があると報告されています。

(3)経皮的肝灌流化学療法(PIHP) 

 この治療法では,肝臓をはさんで下大静脈の上下をバルーンでふさぎます。そして,肝動脈から通常の10倍の高濃度抗がん剤を投与します。
 その抗がん剤は血流とともに肝臓の腫瘍を経て,肝静脈から下大静脈に入りますが,その上下をバルーンでふさがれているため,血流はバルーンについたカテーテルの穴に入り,そこから体外へと送られ,抗がん剤が濾過された後に,体内に戻されるという方法です。
 つまり,この方法ですと,高濃度の薬剤を肝臓のみに集中できる上に,体外で濾過されるため,他の部分には送られず,副作用も大幅に軽減できるというメリットがあります。


多剤併用療法
 がんに効果のある抗がん剤は1種類ではなく,複数あります。現在抗がん剤の標準治療として,多剤併用療法が主流となっています。
 多剤併用療法のメリットとしては,作用のメカニズムが異なる薬剤を組み合わせることで,より大きな効果を発揮することができるということがあげられます。
 さらに,がん細胞は抗がん剤に対して耐性を持ち,生き残ったがん細胞がまた増殖すると治療が困難になるため,あらかじめ複数のものを投与することで,より多くのタイプのがん細胞を効率よく死滅させることができます。また,組み合わせの工夫により,副作用も軽減できることがあります。
 この多剤併用療法のもっとも効果的な治療例では,悪性リンパ腫のCHOP療法があります。この治療法では抗がん剤として,シクロフォスアミド,アドリアマイシン,ビンクリスチン,プレドニゾロンが併用されますが,この治療法での5年生存率は50%程度です。
 この治療法に分子標的治療薬リツキシマブを併用する最近開発されたR-CHOP療法ではさらに10%は向上すると考えられています。


生化学的調節法(BCM)
 この治療法は多剤併用療法の1種ですが,抗がん剤を投与する際にその薬の性質やはたらきを変化させる他の薬剤を同時かその前後に投与して,その効果を増強したり,副作用を軽減したりするという方法です。
 
 いくつか例をあげると,フルオロウラシルは抗腫瘍効果を発揮するために,葉酸が必要です。そのために,あらかじめ患者に活性型葉酸の原料となるロイコボリン(ホリナートカルシウム)を点滴で投与し,その後,フルオロウラシル投与することで,高い抗腫瘍効果を発揮することができます。
 この治療法
は大腸がんにおいて優れた効果を発揮し,標準治療法として確立しています。
 
また,TS-1は生化学的調節法の理論に基づいて日本で開発された薬剤です。このTS-1は体内でフルオロウラシルに変化するテガフール,フルオロウラシルが分解されるのを妨げるギメラシル,さらにフルオロウラシルが消化器に与える毒性を低下させるオテラシルカリウムの3種類の薬剤から成り,進行性胃がんにも効果を発揮することが確認されています。


DDS(ドラッグデリバリーシステム)
 抗がん剤の欠点はその作用が全身にわたり,正常な細胞まで痛めてしまうことにあります。それならば抗がん剤ががん細胞のみに効率よく投与されれば,そのような問題は解決します。
 そのために考え出された化学的方法が,抗がん剤を高分子体でおおい,がん細胞付近でその高分子体から抗がん剤を流出させることで,正常細胞への影響は極力減らそうという方法です。
 がん細胞はある程度大きくなると,正常な血管から新しい血管を自己の細胞に向けつくることができます。これを血管新生と呼びます。この新しい血管は血管壁が薄く,水分や高分子の栄養分まで外にしみ出しやすいという性質を持っています。
 これが腹水の原因にもなっていますが,DDSではこの性質を利用したもので,高分子でおおわれた抗がん剤は正常な血管では高分子のため,血管の外へ流れ出せませんが,このがん細胞付近にできた新しい血管なら透過性が高いため,血管壁を通過することができます。
 血管を透過した高分子体はがん細胞付近でやがて壊れ,流出した抗がん剤はがん細胞に効率よく作用します。この高分子体にはリポソームやミセルなどの高分子体が使用されます。
 このがん治療法では抗がん剤アドリアマイシンやタキソール内包ミセルの臨床試験が国立がんセンターで行われているところです。


クロノテラピー(時間治療)
 1日の中で抗がん剤の投与の時間を変えることで,その効果も変わってくるということが近年の研究により報告されています。
  正常細胞が分裂・増殖するリズムは,朝から昼に向かって活発になり,夕方から夜にかけて低下し,夜間にもっとも沈静化すると言われています。
 また,がん細胞が分裂・増殖するリズムは一定ではありませんが,夜間活発になり,日中は低下する傾向が見られることがわかってきています。
 したがって,この細胞分裂の時間のズレを利用し,夜間,抗がん剤を投与すると細胞分裂をおこなっているがん細胞へダメージを与え,細胞分裂をあまりおこなっていない正常細胞への影響を抑えることができます。
 現在,日本ではまだあまり普及していない治療法ですが,横浜市立大学医学部付属病院では,進行大腸がんに対して抗がん剤フルオロウラシルのクロノテラピーによる術前化学療法を行い,良好な治療実績をあげています。



放射線化学療法
 抗がん剤は全身を巡り,広く抗がん作用を発揮することができますが,全身の正常細胞までダメージを与えてしまいます。一方,放射線療法では放射線の照射部位のみ効果を発揮しますが,他の部位の正常細胞にはダメージを与えないというメリットがあります。
 この2つの治療法の機能を組み合わせることでさらに効果を高めることができますし,単独で行った効果が弱い場合でも2つの治療法を併用することで,大きな効果が得られることもできます。
 この治療法は悪性リンパ腫などで大きな成果が報告されています。ただし,悪性リンパ腫でも比較的がんが狭い範囲に限られている場合に限られますが,まず,抗がん剤で全身に転移したがん細胞を殺すとともに原発巣のがんを縮小させます。
 そして原発巣に放射線を照射し,抗がん剤で殺しきれなかったがん細胞を消滅させます。 この治療法では治癒率は80%以上と報告されています。
 この放射線化学療法は小細胞肺がんでは大きな成果があげられることがわかり,標準治療として確立していますし,その他食道がんなどでも良好な治療成績が報告され,手術よりも良好なQOLを保つことができます

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抗がん剤治療の副作用と対処法

   

抗がん剤の副作用の種類とその対策


全身倦怠感
 全身倦怠感は抗がん剤治療を受けた患者の70%近くが感じる症状で,吐き気・嘔吐などと共によく見られる症状です。
 この全身倦怠感は薬剤投与後2~3日で現れ,以後は軽減される場合もありますが,抗がん剤治療を何クールも重ねるごとに倦怠感も増していくことが多く,治療終了後でも長期間残る場合もあります。
 この倦怠感とは具体的には,持続した歩行が困難,手足に力が入らないなどのだるさや疲労感だけでなく,集中力,思考力の低下などの精神的疲労感も含まれます。
 全身倦怠感の原因ははっきりしていませんが,抗がん剤の直接の作用だけでなく,副作用である貧血や,食欲不振,下痢,嘔吐などによる栄養バランスの乱れも関係していると考えられています。
 倦怠感に対する治療法はありませんが,消化のよい栄養価の高い食べ物を摂ることも大切ですし,水分の補給は疲労物質の排出に役立ちます。
 また,入浴やマッサージで全身の血流をよくすることも大切で,適度な運動も効果がありますが,運動に関しては医師に相談してください。
 十分な休息も必要であり,眠れないなどの症状が見られた場合,すぐに医師に相談し,睡眠薬の服用など何らかの対策を立てましょう。




吐き気・嘔吐

 副作用として,吐き気はよく見られる症状ですが,個人差が大きく,抗がん剤の種類によっても発現する程度が異なり,特にイリノテカン,シクロホスファミド,シスプラチン,ダカルバジンなどは吐き気が出やすい薬剤と言われています。
 近年の研究により,抗がん剤による吐き気は脳内伝達物質の1種であるセロトニンが活性化されることにより起こるということが解明され,このセロトニンはたらきを抑制するセロトニンH3ブロッカーが開発されたことにより80%以上の人に制吐効果をもたらすことができました。さらにステロイド剤を併用するとより高い効果があります。
 また,その他にも脳内伝達物質であるドーパミンの受容体に拮抗してはたらく,メトクロプラミドやドンペリドンなども効果があります。
 抗がん剤による嘔吐は投与後30分~1時間で現れ,24時間内でおさまる急性嘔吐と投与後24時間~48時間後に現れ,数日間続く遅延性嘔吐とがあります。
 また,治療に対する不安など,精神的なものが原因となる嘔吐もあり,このような症状には抗不安薬が使用されます。
 このような抗がん剤の副作用である嘔吐は上記のようなすぐれた制吐剤の開発により,かなり抑えられるようになっており,このような症状がでたら,がまんをせずにすぐに医師に相談しましょう。 
 このような吐き気は部屋や食べ物,花などのにおいによっても助長されることがあり,換気をするなどの気配りも大切です。また,からだを締め付ける下着なども避けたほうがよいでしょう。


脱毛
 
脱毛はほとんどの抗がん剤で起こる副作用です。抗がん剤のほとんどはがん細胞が細胞分裂して増殖する時に作用するため,細胞分裂の激しい毛根細胞は抗がん剤の影響を受けやすく脱毛が起こります。
  特にエピルビシン,パクリタキセル,フルオロウラシル,カペシタビン,ドキソルビシン,マイトマイシン,シクロホスファミドなどは脱毛が起こりやすいと言われています。
 一般的に抗がん剤投与の2~3週間後に脱毛がはじまり,抗がん剤使用中は進行し,頭髪すべてが抜け落ちる場合もあります。
 しかし毛根細胞がすべて死ぬわけではなく,脱毛は一時的なものであり,通常は治療終了後4~6週間で再び生え始めます。 しかし,再生した毛髪は色や髪質が本来のものと異なっていることもあります。
 現在のところ,脱毛に対しての有効な防止策はありません。脱毛は特に女性患者にとって大きな精神的ショックとなりますので,抗がん剤の投与前に脱毛の開始時期や再生時期などを確認しておくことも必要です。
 対策としては,あらかじめ髪を短くカットしておき,長い頭髪が失われるという喪失感を和らげたり,ぼうしやかつら,バンダナ,ナイトキャップなどを活用するという方法が一般的にはよく用いられています。
 また,髪をとかすブラシは柔らかく目の粗いものを使用し,頭皮を直射日光にも当てないという工夫も必要です。
 さらに看護師に相談したり,患者さん同士でコミュニケーションをとるなどして精神的なケアをはかるようにしましょう。



口内炎
 口内炎も抗がん剤の副作用としてよく見られる症状です。投与後約40パーセント人に見られるといわれています。 これは口腔粘膜も細胞分裂の盛んな部位であり,抗がん剤の影響を受けやすいからです。
 口内炎は多くの抗がん剤で見られますが,特に口内炎を起こしやすい薬剤としては5-FU(フルオロウラシル),メトトレキサート,ドキソルビシンなどがあります。    
 口内炎には,細胞のダメージと炎症による一次的口内炎と抗がん剤の投与によって免疫力が低下した結果,口腔内感染により起こる二次的口内炎とがあります。
 抗がん剤による口内炎はいったん発症すると治療に時間がかかり,重症化すると食事がとれなくなったり,さらには感染が全身に広がって命に関わることもあり,注意しなければならない副作用です。
 口内炎の症状としては,痛みや腫れ,飲食物がしみる,出血,乾きなどが見られます。しかし,この症状は一時的なものであり,治らないということはありませんが,細菌感染に対抗する白血球が増加し,粘膜の再生が行われるまで,時間がかかることがあります。
 対策としては,細菌感染による悪化を防ぐため,消毒薬でうがいをしたり,歯磨きをしたりして口内を清潔に保つことが大切です。 ブラシは柔らかいものを使用し,口腔粘膜を傷つけないよう注意しましょう。
 口内炎が悪化すると食事も困難になる場合がありますが,香辛料や酸味の強いものなど刺激性のあるものは避け,やわらかいものでしっかりととることが大切です。
 口内炎ができた場合はすぐに医師に相談しましょう。痛みに対しては,局所麻酔を使用したり,アスピリンうがい液である程度対処できます。 さらに細菌感染に効果のある白血球を増加させるG-CSF製剤を投与することもあります。 



感染症(骨髄抑制・白血球減少)
 感染症は生命に関わることにもなるので,抗がん剤投与においては十分に注意しなければなりません。抗がん剤投与により,骨髄がダメージを受け,骨髄でつくられる白血球は減少しますが,その中でも細菌感染を防ぐ顆粒球が極端に減少すると細菌感染を受けやすくなります。
 感染を受けやすい部位は口腔粘膜をはじめ,皮膚,消化管など全身におよびます。感染には発熱がともないますので,発熱したり,はれや痛みを感じたらすぐに医師に報告しましょう。
 白血球が減少し始めるのは抗がん剤投与後,1~2週間であり,この白血球のなかでも細菌感染に効果のある好中球が血液1立方ミリ当たり500個以下になると,感染症を発症しやすくなり,100個以下になると敗血症や肺炎などが起こりやすくなり,生命の危険に関わってきます。
 医師側の対応としては抗生物質の投与や,好中球を増加させることができるG-CSF製剤の投与などの処置が必要となります。
 さらに,急性白血病の治療や骨髄移植などによって極度の白血球減少が見られた場合は無菌室での治療も必要になってきます。
 患者側としてこれらの感染症を防ぐには,部屋を清潔な環境に整え,毎日入浴するとともに清潔な衣類を着用することが必要です。
 さらに手洗いやうがいを徹底し,外出時はマスクの着用もこころがけましょう。食事は加熱処理したものを,調理後すぐに食べるということをこころがけましょう。
 感染症の対策として体温をまめにチェックし,早めに対応することが何より大切です。



貧血(骨髄抑制・赤血球減少)
 抗がん剤は骨髄にダメージを与え,白血球だけでなく,赤血球や血小板をも減少させます。この赤血球はヘモグロビンという赤色色素を含み,この成分が酸素を全身の組織に運びますが,この赤血球減少により,組織が酸素不足になり,貧血という状態になります。
 貧血の症状の発現する時期は個人差や薬剤の種類によっても異なり,赤血球は白血球よりも寿命が長いため,白血球よりも影響が出るのは遅いと言われていますが,症状がでるのは抗がん剤投与後数週間~数ヶ月と言われています。
 貧血の症状としては顔色が青白くなり,さらに動悸,息切れ,めまい,倦怠感,耳鳴りなどの症状も見られることがあります。さらに貧血が重くなると,心不全や低体温,むくみなどが見られ,時には昏睡状態になり,生命の危険にさらされることもあります。
 貧血の対処としてはヘモグロビン値が8g/dl未満になると赤血球輸血が行われます。近年,抗がん剤投与後の貧血に対して,エリスロポエチンという物質の投与が効果的であると発表され,日本では治験中です。
 患者側としては,急激な運動を避け,症状が出たときは何よりも安静にすることが大切です。また,ビタミンB12は葉酸と協力して赤血球の生成にかかわるため,魚介類やレバーやチーズなど,ビタミンB12を多く含む食品の摂取をこころがけましょう。
 また血漿板が大幅に減少し,出血が続き貧血になることもあり,その場合は血漿板輸血が行われます。



下痢
 抗がん剤投与後の下痢は「がん化学療法誘発下痢」とも呼ばれ,症状が長引くと生命の危険にも関わってくるため十分な注意と対応が必要です。
 抗がん剤の副作用としての下痢は早発性下痢と遅発性下痢に分けることができます。早発性の下痢は交感神経と副交感神経のバランスが崩れ,腸の蠕動(ぜんどう)運動が活発化し起こるもので,投与後24時間以内に現れ,比較的短時間でおさまります。
 遅発性の下痢は投与後24時間以降に現れ,原因ははっきりと解明されていませんが,腸粘膜上皮の障害や腸内細菌叢の変化などの要因が関わっていると考えられています。
 副作用で問題となるのはこの遅発性の下痢であり,症状も重くなりがちで,脱水,電解質異常,循環不全などの症状を引き起こすこともあります。
 抗がん剤の中でも特にイリノイテカンやフルオロウラシルは下痢を誘発しやすいと言われ,その他にもメトトレキサート,シタラビン,エトポシド,ドキソルビシンなどにもよく見られます。
  対処法としては下痢止めや整腸薬の投与が中心となりますが,症状が重い場合,水分,電解質,栄養分などの補給も必要となります。
 患者側としては,まず腹部を保温し,腸の蠕動運動を鎮めるようにすることが大切です。また,食品も腸粘膜を刺激する冷たいものや香辛料,食物繊維を多く含む食品は避け,できるだけ,暖かく,消化吸収がよいものを摂取しましょう。
 また水分補給や電解質の補給にはスポーツドリンクなどを冷やさずにゆっくりと摂取するとよいでしょう。



便秘
 抗がん剤投与後に見られる便秘には機能性便秘と言われる精神的なストレス,食事や水分摂取量の減少により起こるケースと,抗がん剤や制吐剤さらには鎮痛剤などが自律神経に作用し,腸の蠕動運動を低下させ起こるケースとがあります。
 後者は薬剤性便秘と呼ばれ,特に植物アルカロイド系の薬剤は便秘になりやすく,特にイリノテカンは下痢の後便秘となり,難治性の麻痺性イレウス(腸閉塞症)を引き起こすことがあります。
 便秘の症状としては,腹痛や腹部膨満感,嘔吐,口臭,イレウス(腸閉塞症)などがあり,時として便汁様の嘔吐が見られることもあります。
 対処法としては,水分を十分補給すると共に下剤を摂取することで,多くの症状は解消することができますが,重い場合などは浣腸などの処置も行われます。
 患者側の対処としては,まず水分を十分に摂り,腹部を温め,食物繊維の多い食事をこころがけるとよいでしょう。さらには腹部のマッサージや医師の許可があれば適度な運動なども効果的です。



食欲不振 
 食欲不振も多くの抗がん剤で見られる副作用です。また味覚障害も多く見られ,これが食欲不振とも関係しています。
 抗がん剤副作用として口内炎,吐き気,嘔吐,下痢,便秘,うつなどの症状が現れることも多く,これらによっても食欲不振につながることがあります。
 味覚障害は味覚をとらえる舌の味蕾細胞や舌神経などが抗がん剤により,ダメージを受け,味覚が変化してしまうことが原因と考えられ,さらには抗がん剤による亜鉛の吸収率低下も味覚障害に関わっています。
 味覚障害になると,食物のにおいや味が感じられず,砂をかんだような味とか,金属のような味を感じる患者が多いようです。 さらに食べ物の好みも変わり,今まで好きだったものが嫌いになるということもしばしば見られます。
 抗がん剤治療を受けている場合,基礎代謝の1.5倍~2倍のエネルギーが必要とされ,薬剤による損傷を回復させるためにも,十分な食事の摂取は必要です。
 味覚障害やその予防に対しては,亜鉛の摂取が有効であり,亜鉛を多く含む魚介類やレバーなどの肉類の摂取が効果的です。さらには亜鉛をサプリメントとして摂取する方法もありますが,その場合は医師に相談してください。
 食事の工夫としては,食事時間を無理に決めず,1日の必要量を何回かに分けて食べることや,メニューも食べられそうなものを栄養のバランスを考えながら組み立てることも必要です。また,グレープフルーツは薬剤の代謝を阻害し,副作用を増強する成分が含まれるため,摂取は控えたほうがよいでしょう。
 食欲不振がとても重い場合,点滴や,鼻腔から胃や十二指腸までチューブを通し,その管を使って栄養補給する方法が必要となります。

 

上腹部痛・上腹部不快感
 胃の粘膜は抗がん剤の影響を受けやすく,胸焼けや胃もたれなどの不快感から,さらに重くなると焼けるような疼痛,さらには胃の粘膜が潰瘍化すると吐き気や嘔吐まで見られます。
 潰瘍になった部位から出血すると嘔吐したときに血液が混じっていたり,便が黒くコールタールのようになることもあります。
 胃の粘膜障害は内服して投与することが多いステロイド系薬剤によく見られますが,その他にもフルオロウラシル,テガフール,TS-1などの抗がん剤も粘膜障害を起こしやすいと言われています。
 さらには解熱鎮痛薬であるアスピリン系薬剤も粘膜障害を助長すると言われています。
 最近では,胃や腸の粘膜障害を予防するため,事前に抗潰瘍薬を投与することが多いようです。また,胸焼けなどの症状は制酸薬で,ある程度抑えることができます。
 食事の点で注意すべきことは,刺激性のある食べものを控えることであり,コーヒーやお茶などのカフェインやアルコール,香辛料の入ったものや強い酸味のあるものは控えましょう。


口内炎
 口内炎も抗がん剤の副作用としてよく見られる症状です。投与後約40パーセント人に見られるといわれています。 これは口腔粘膜も細胞分裂の盛んな部位であり,抗がん剤の影響を受けやすいからです。
 口内炎は多くの抗がん剤で見られますが,特に口内炎を起こしやすい薬剤としては5-FU(フルオロウラシル),メトトレキサート,ドキソルビシンなどがあります。    
 口内炎には,細胞のダメージと炎症による一次的口内炎と抗がん剤の投与によって免疫力が低下した結果,口腔内感染により起こる二次的口内炎とがあります。
 抗がん剤による口内炎はいったん発症すると治療に時間がかかり,重症化すると食事がとれなくなったり,さらには感染が全身に広がって命に関わることもあり,注意しなければならない副作用です。
 口内炎の症状としては,痛みや腫れ,飲食物がしみる,出血,乾きなどが見られます。しかし,この症状は一時的なものであり,治らないということはありませんが,細菌感染に対抗する白血球が増加し,粘膜の再生が行われるまで,時間がかかることがあります。
 対策としては,細菌感染による悪化を防ぐため,消毒薬でうがいをしたり,歯磨きをしたりして口内を清潔に保つことが大切です。 ブラシは柔らかいものを使用し,口腔粘膜を傷つけないよう注意しましょう。
 口内炎が悪化すると食事も困難になる場合がありますが,香辛料や酸味の強いものなど刺激性のあるものは避け,やわらかいものでしっかりととることが大切です。
 口内炎ができた場合はすぐに医師に相談しましょう。痛みに対しては,局所麻酔を使用したり,アスピリンうがい液である程度対処できます。 さらに細菌感染に効果のある白血球を増加させるG-CSF製剤を投与することもあります。 



感染症(骨髄抑制・白血球減少)
 感染症は生命に関わることにもなるので,抗がん剤投与においては十分に注意しなければなりません。抗がん剤投与により,骨髄がダメージを受け,骨髄でつくられる白血球は減少しますが,その中でも細菌感染を防ぐ顆粒球が極端に減少すると細菌感染を受けやすくなります。
 感染を受けやすい部位は口腔粘膜をはじめ,皮膚,消化管など全身におよびます。感染には発熱がともないますので,発熱したり,はれや痛みを感じたらすぐに医師に報告しましょう。
 白血球が減少し始めるのは抗がん剤投与後,1~2週間であり,この白血球のなかでも細菌感染に効果のある好中球が血液1立方ミリ当たり500個以下になると,感染症を発症しやすくなり,100個以下になると敗血症や肺炎などが起こりやすくなり,生命の危険に関わってきます。
 医師側の対応としては抗生物質の投与や,好中球を増加させることができるG-CSF製剤の投与などの処置が必要となります。
 さらに,急性白血病の治療や骨髄移植などによって極度の白血球減少が見られた場合は無菌室での治療も必要になってきます。
 患者側としてこれらの感染症を防ぐには,部屋を清潔な環境に整え,毎日入浴するとともに清潔な衣類を着用することが必要です。
 さらに手洗いやうがいを徹底し,外出時はマスクの着用もこころがけましょう。食事は加熱処理したものを,調理後すぐに食べるということをこころがけましょう。
 感染症の対策として体温をまめにチェックし,早めに対応することが何より大切です。



貧血(骨髄抑制・赤血球減少)
 
抗がん剤は骨髄にダメージを与え,白血球だけでなく,赤血球や血小板をも減少させます。この赤血球はヘモグロビンという赤色色素を含み,この成分が酸素を全身の組織に運びますが,この赤血球減少により,組織が酸素不足になり,貧血という状態になります。
 貧血の症状の発現する時期は個人差や薬剤の種類によっても異なり,赤血球は白血球よりも寿命が長いため,白血球よりも影響が出るのは遅いと言われていますが,症状がでるのは抗がん剤投与後数週間~数ヶ月と言われています。
 貧血の症状としては顔色が青白くなり,さらに動悸,息切れ,めまい,倦怠感,耳鳴りなどの症状も見られることがあります。さらに貧血が重くなると,心不全や低体温,むくみなどが見られ,時には昏睡状態になり,生命の危険にさらされることもあります。
 貧血の対処としてはヘモグロビン値が8g/dl未満になると赤血球輸血が行われます。近年,抗がん剤投与後の貧血に対して,エリスロポエチンという物質の投与が効果的であると発表され,日本では治験中です。
 患者側としては,急激な運動を避け,症状が出たときは何よりも安静にすることが大切です。また,ビタミンB12は葉酸と協力して赤血球の生成にかかわるため,魚介類やレバーやチーズなど,ビタミンB12を多く含む食品の摂取をこころがけましょう。
 また血漿板が大幅に減少し,出血が続き貧血になることもあり,その場合は血漿板輸血が行われます。



下痢
 抗がん剤投与後の下痢は「がん化学療法誘発下痢」とも呼ばれ,症状が長引くと生命の危険にも関わってくるため十分な注意と対応が必要です。
 抗がん剤の副作用としての下痢は早発性下痢と遅発性下痢に分けることができます。早発性の下痢は交感神経と副交感神経のバランスが崩れ,腸の蠕動(ぜんどう)運動が活発化し起こるもので,投与後24時間以内に現れ,比較的短時間でおさまります。
 遅発性の下痢は投与後24時間以降に現れ,原因ははっきりと解明されていませんが,腸粘膜上皮の障害や腸内細菌叢の変化などの要因が関わっていると考えられています。
 副作用で問題となるのはこの遅発性の下痢であり,症状も重くなりがちで,脱水,電解質異常,循環不全などの症状を引き起こすこともあります。
 抗がん剤の中でも特にイリノイテカンやフルオロウラシルは下痢を誘発しやすいと言われ,その他にもメトトレキサート,シタラビン,エトポシド,ドキソルビシンなどにもよく見られます。
  対処法としては下痢止めや整腸薬の投与が中心となりますが,症状が重い場合,水分,電解質,栄養分などの補給も必要となります。
 患者側としては,まず腹部を保温し,腸の蠕動運動を鎮めるようにすることが大切です。また,食品も腸粘膜を刺激する冷たいものや香辛料,食物繊維を多く含む食品は避け,できるだけ,暖かく,消化吸収がよいものを摂取しましょう。
 また水分補給や電解質の補給にはスポーツドリンクなどを冷やさずにゆっくりと摂取するとよいでしょう。



便秘
 
抗がん剤投与後に見られる便秘には機能性便秘と言われる精神的なストレス,食事や水分摂取量の減少により起こるケースと,抗がん剤や制吐剤さらには鎮痛剤などが自律神経に作用し,腸の蠕動運動を低下させ起こるケースとがあります。
 後者は薬剤性便秘と呼ばれ,特に植物アルカロイド系の薬剤は便秘になりやすく,特にイリノテカンは下痢の後便秘となり,難治性の麻痺性イレウス(腸閉塞症)を引き起こすことがあります。
 便秘の症状としては,腹痛や腹部膨満感,嘔吐,口臭,イレウス(腸閉塞症)などがあり,時として便汁様の嘔吐が見られることもあります。
 対処法としては,水分を十分補給すると共に下剤を摂取することで,多くの症状は解消することができますが,重い場合などは浣腸などの処置も行われます。
 患者側の対処としては,まず水分を十分に摂り,腹部を温め,食物繊維の多い食事をこころがけるとよいでしょう。さらには腹部のマッサージや医師の許可があれば適度な運動なども効果的です。



食欲不振 
 食欲不振も多くの抗がん剤で見られる副作用です。また味覚障害も多く見られ,これが食欲不振とも関係しています。
 抗がん剤副作用として口内炎,吐き気,嘔吐,下痢,便秘,うつなどの症状が現れることも多く,これらによっても食欲不振につながることがあります。
 味覚障害は味覚をとらえる舌の
味蕾細胞や舌神経などが抗がん剤により,ダメージを受け,味覚が変化してしまうことが原因と考えられ,さらには抗がん剤による亜鉛の吸収率低下も味覚障害に関わっています。
 味覚障害になると,食物のにおいや味が感じられず,砂をかんだような味とか,金属のような味を感じる患者が多いようです。 さらに食べ物の好みも変わり,今まで好きだったものが嫌いになるということもしばしば見られます。
 抗がん剤治療を受けている場合,基礎代謝の1.5倍~2倍のエネルギーが必要とされ,薬剤による損傷を回復させるためにも,十分な食事の摂取は必要です。
 味覚障害やその予防に対しては,亜鉛の摂取が有効であり,亜鉛を多く含む魚介類やレバーなどの肉類の摂取が効果的です。さらには亜鉛をサプリメントとして摂取する方法もありますが,その場合は医師に相談してください。
 食事の工夫としては,食事時間を無理に決めず,1日の必要量を何回かに分けて食べることや,メニューも食べられそうなものを栄養のバランスを考えながら組み立てることも必要です。また,グレープフルーツは薬剤の代謝を阻害し,副作用を増強する成分が含まれるため,摂取は控えたほうがよいでしょう。
 食欲不振がとても重い場合,点滴や,鼻腔から胃や十二指腸までチューブを通し,その管を使って栄養補給する方法が必要となります。


 
上腹部痛・上腹部不快感
 
胃の粘膜は抗がん剤の影響を受けやすく,胸焼けや胃もたれなどの不快感から,さらに重くなると焼けるような疼痛,さらには胃の粘膜が潰瘍化すると吐き気や嘔吐まで見られます。
 潰瘍になった部位から出血すると嘔吐したときに血液が混じっていたり,便が黒くコールタールのようになることもあります。
 胃の粘膜障害は内服して投与することが多いステロイド系薬剤によく見られますが,その他にもフルオロウラシル,テガフール,TS-1などの抗がん剤も粘膜障害を起こしやすいと言われています。
 さらには解熱鎮痛薬であるアスピリン系薬剤も粘膜障害を助長すると言われています。
 最近では,胃や腸の粘膜障害を予防するため,事前に抗潰瘍薬を投与することが多いようです。また,胸焼けなどの症状は制酸薬で,ある程度抑えることができます。
 食事の点で注意すべきことは,刺激性のある食べものを控えることであり,コーヒーやお茶などのカフェインやアルコール,香辛料の入ったものや強い酸味のあるものは控えましょう。



発疹・色素沈着

 皮膚の基底層は細胞分裂を繰り返しているため,ここが抗がん剤によりダメージを受けると発疹や疼痛,色素沈着などの異常が見られます。皮膚の異常としての副作用は抗がん剤投与後,4週間後くらいに現れることが多いようです。
 発疹の種類は赤斑,丘疹,水疱,びらんなど様々なタイプが見られ,さらには爪の色が黒く変色したり,変形する場合もあり,抗がん剤の中でもフルオロウラシルは特に色素沈着を起こしやすいと言われています。
 その他にも短時間日光を浴びただけで湿疹のような症状となる日光過敏症,皮膚がかゆくなる,そう痒性皮膚炎なども見られることがあります。
 対処法としては,症状が重い場合はステロイド剤を服用し,かゆみがひどい場合はかゆみ止めが処方されます。
 患者側の対策としては,刺激のすくない石けんやシャンプーを使用したり,保湿剤を塗るなどの方法が考えられます。また治療中は強い日光を避けることも大切です。
 
 

肺障害・呼吸困難
 
抗がん剤の副作用は肺に現れることもあり,肺毒性と呼ばれています。この肺毒性は時に間質性肺炎などの深刻な障害を引き起こすこともあり,注意が必要です。
  抗がん剤によって引き起こされる肺障害には2種類あり,一つは抗がん剤が直接肺の細胞にダメージを与える直接的細胞障害であり,もう一つは抗がん剤投与の結果として炎症反応や免疫反応が起こり,その影響で肺の細胞が障害を受ける間接的細胞障害です。
 両者共に発熱,せき,呼吸困難などの症状が見られますが,直接的細胞障害である間質性肺炎は肺胞を取りまいている間質という組織に炎症が起こる症状であり,この症状が進行すると肺は堅く縮小し,呼吸不全につながることもあります。
 この間質性肺炎は抗がん剤のブレオマイシンやイレッサの投与後の副作用として起こることがあり,これらの薬剤投与後に,息切れや呼吸困難,動悸,せき,発熱など風邪によく似た症状がでた場合,間質性肺炎の前兆とも考えられますので,すぐに医師に報告しましょう。

 また,代謝拮抗剤である抗がん剤メトトレキサートは免疫反応により,発熱,せき,呼吸困難などの症状が見られます。
 対処法としては抗がん剤投与をすぐに停止することと,ステロイド剤の投与などの方法がありますが,ステロイド剤は上記のブレオマイシンやイレッサにより引き起こされる間質性肺炎にはあまり有効でないとされます。



肝機能障害
 抗がん剤だけでなく,ほとんどの薬剤は肝臓で代謝されます。そのため,肝臓の代謝能力以上の抗がん剤が肝臓に流れ込むと,肝臓もダメージを受け障害を引き起こすことになります。
 肝障害の症状としては,黄疸,食欲不振,吐き気,嘔吐,下痢,倦怠感,むくみなどが見られます。
肝臓障害は組織が壊死を起こす場合と肝静脈が血流障害を起こす場合,肝臓の組織が繊維化する場合などがあります。
 肝障害はどのような抗がん剤でも起こりますが,特に肝障害を起こしやすい薬剤として,エトポシド,メトトレキサート,L-アスパラキナーゼなどがあげられます。
 肝臓は細胞の増殖が早く,副作用の症状が現れても多くは一時的なもので,多くは薬剤投与を停止後2週間ほどで回復しますが,なかには致命的な障害を引き起こすものもあり,注意が必要です。
 抗がん剤で引き起こされる肝機能障害を根本から予防することはできず,対症療法が中心となりますが,グリチルリチン製剤などの
肝庇護剤が投与され,またステロイド剤が投与されることもあります。
 患者側の対策としては,食事のバランスを考え,タンパク質を十分に摂取することが大切であり,肝臓に負担のかかるアルコールは厳禁です。
  


心筋障害
 
抗がん剤副作用としてそれほど頻度は多くありませんが,抗がん剤によっては心機能低下をもたらすものがあり,注意が必要です。
 特にアントラサイクリン系(抗がん抗生物質)の薬剤は抗がん剤として様々なタイプのがんに使用されていますが,心筋障害を引き起こすことで知られています。
 この心筋障害は多くの場合,総使用量が一定の範囲を超えると症状が現れる「蓄積毒性」であり,一度発症すると治療は困難なため,総投与量に注意しながら進める必要があります。
 このアントラサイクリン系の薬剤として心筋障害を起こしやすいものに,ドキソルビシン,ダウノルビシン,エピルビシン,イダルビシンなどの薬剤がありますが,この中でも特にドキソルビシンは長期連用することが多いため,障害もでやすいと言えます。
 心筋障害の主な症状は動悸や息切れ,さらにはむくみやめまいが起こることがあり,これらの症状が見られたらすぐに医師に報告しましょう。
 また,循環器障害を持っている人は障害が強く出てしまうので事前に医師に報告しましょう。また乳がん治療に使用される分子標的薬トラスツズマブ(ハーセプチン)の併用は障害を増加させると言われています。
 心電図や心エコーなどの検査を定期的に受け,早めに異常に気付くことも大切です。



腎障害・腎不全
  腎臓は血液から体の毒素を排出させる器官です。抗がん剤の一部にはこの腎臓機能を低下させる作用を持つものもあります。
  抗がん剤副作用の結果,腎臓の機能が低下すると,毒素が排出されないだけでなく,腎不全となり人工透析が必要になってしまいます。
 腎障害を起こしやすい抗がん剤として,シスプラチン,メトトレキサート,マイトマイシンCなどがありますが,これらの投与量が多いと,腎障害が発症しやすくなるだけでなく,急激に腎不全に至ることもあります。
 腎不全になると,むくみ,心不全,尿量減少,体重の増加などが見られ,重症の場合,意識障害が起こることもあります。
 また抗がん剤によりがん細胞が破壊され,尿酸やカリウム等が大量に血液中に放出されると,高尿酸血症や高カリウム血症などの代謝異常を生じ,急性腎不全や不整脈などを発症することもあります。
 現在のところ腎障害に対する有効な治療法は確立しておらず,腎機能の低下の早期発見と抗がん剤投与停止などの処置が必要になってきます。
 したがって上記のような症状が見られた場合すぐに医師に報告し,処置をしてもらうことが大切です。
 対処法としては血液検査を定期的に行い,常に腎機能低下をチェックする必要がありますし,十分な水分を補給し,毒素の排出を促し,腎臓への負担を軽くすることが大切です。



末梢神経障害
 
末梢神経とは中枢神経である脳・脊髄から枝分かれして身体の各部位に伸びている神経で体の知覚・運動を制御する体性神経系と内臓・血管などの自動的制御に関わる自律神経系とに分けられます。
 抗がん剤でも特に植物アルカロイド薬剤は細胞分裂時に機能する微小管というものの働きを阻害し,がん細胞を死滅させます。しかし微小管は神経細胞でも重要な働きをするため,手足のしびれなどの神経障害が起こることがあります。
 末梢神経障害が出やすい薬剤としてはパクリタキセル,ドセタキセル,ビンクリスチン,ビンデシン,ビンブラスチン,ビノレルビンなどの植物アルカロイド薬剤の他,シスプラチンやオキサリプラチンなどの白金製剤などがあります。
 末梢神経障害の症状としては手足の指先にピリピリしたりジリジリしたりするようなしびれであり,薬剤の量や頻度が多くなるほど症状も重くなります。

 末梢神経障害で問題となる点は抗がん剤投与を中止しても治るまでに数ヶ月~1年以上かかり,場合によっては完全に治らない場合もあることです。
 プラチナ製剤のエルプラット(オキサリプラチン)は,寒冷刺激で誘発されるという特徴をもっているため,冷たいものを飲んだり,冷たいものに触れたりするという行為は避ける必要があり,特に冬は肌が冷たい外気にさらされないよう注意しましょう。
 現在のところ末梢神経障害に対する治療法は確立しておらず,抗がん剤投与の中止や痛みのある時には消炎鎮痛薬やモルヒネなどの麻薬性鎮痛薬を使用するなどの対症療法が中心となります。 患者側の対策としては冷えがしびれ感を増長させることが多いのでカイロや服で体を温めておくことが大切です。





発疹・色素沈着
 皮膚の基底層は細胞分裂を繰り返しているため,ここが抗がん剤によりダメージを受けると発疹や疼痛,色素沈着などの異常が見られます。皮膚の異常としての副作用は抗がん剤投与後,4週間後くらいに現れることが多いようです。
 発疹の種類は赤斑,丘疹,水疱,びらんなど様々なタイプが見られ,さらには爪の色が黒く変色したり,変形する場合もあり,抗がん剤の中でもフルオロウラシルは特に色素沈着を起こしやすいと言われています。
 その他にも短時間日光を浴びただけで湿疹のような症状となる日光過敏症,皮膚がかゆくなる,そう痒性皮膚炎なども見られることがあります。
 対処法としては,症状が重い場合はステロイド剤を服用し,かゆみがひどい場合はかゆみ止めが処方されます。
 患者側の対策としては,刺激のすくない石けんやシャンプーを使用したり,保湿剤を塗るなどの方法が考えられます。また治療中は強い日光を避けることも大切です。

 

ほてり,発汗,のぼせ
 
 抗がん剤副作用としてのほてりや発汗などは主にホルモン剤投与によって見られることが多く,血管の拡張により,血液が大量に送り込まれることが原因です。
 この
ほてりは個人差があり,軽いほてりから,強いのぼせと発汗まで見られる場合があります。症状は数分間続き,おさまってもまた繰り返すことが多いようです。
 この症状はホルモン剤の投与を中止すれば,おさまるケースが多く,体がホルモン剤に適応して自然におさまる場合もあります。
 症状が強くでた場合は医師に相談し,他の薬剤に変更するなどの処置も必要です。また,タオルや冷湿布で首のまわりを冷やしたりすることで,症状を抑えることもできます。




アレルギー反応(アナフィラキシー)・過敏症
 抗がん剤投与後,アレルギー反応(抗原・抗体反応)によりじんま疹,発疹,発汗,発熱などの症状が見られる場合がありますが,これらはあまり頻度は多くはありません。
 アレルギー反応のなかでも特に心配なケースが,アナフィラキーショックと呼ばれる重度の全身性のアレルギー反応です。
 この場合,呼吸困難や急激な血圧低下が起こり,場合によっては死に至るケースもあります。特にパクリタキセルやドセタキセルなどのタキサン系と呼ばれる抗がん剤は強い全身性のアレルギー反応を起こすことが多く,患者の様子を見ながらゆっくりと点滴で投与する必要があります。
 また,これらの薬剤は,ステロイド剤や抗ヒスタミン剤と共に投与することでアレルギー反応を和らげること
ができます。
 過去に抗がん剤で過敏症が出ている場合,その旨を医師に伝えておくということも大切ですし,多少でも上記のような症状がでたら,すぐに医師に伝えましょう。

 

視覚障害
 抗がん剤の副作用として,視覚に異常が見られる場合があります。その症状としては,目の炎症や痛み,かゆみ,涙目などや,かすむ,ぼやける,光がまぶしく感じる,物がゆがんだりみえるなどの視力低下などが見られます。
 このような視力異常は抗がん剤の種類や投与量によっても様々ですが,特に代謝拮抗剤であるシタラビンの大量投与では,結膜炎がかなりの頻度で現れることが知られています。
 目の炎症などは,症状が現れるのも早く,多くは薬剤投与を中止することでおさまりますが,白内障や緑内障は徐々に進行するため,気付かないことも多く,注意が必要です。
 目やまぶたの炎症やかゆみには,ステロイド剤などの抗炎症薬剤が処方されます。白内障や緑内障は進行するともとには戻らず,外科的な治療が必要にもなりますので,目がかすんだり,視野が狭くなるなどの症状が見られたらすぐに医師に伝えましょう。



聴覚障害
 
抗がん剤による難聴は,内耳から大脳まで音を電気信号に変換し,伝える部分の蝸牛と呼ばれる部分の障害で起こることが多く,この難聴は,感音難聴と呼ばれ,外耳から中耳にかけて物理的に音を伝え部分の障害である伝音難聴と区別されます。
 この難聴は薬剤性難聴と呼ばれ,左右同時に現れ,徐々に進行するため,気付いた時にはかなりの難聴になっていたということもめずらしくありません。
 この蝸牛には平行感覚をつかさどる神経もあるため,薬剤によりこの部分の神経が冒されるとめまいや吐き気などの症状も見られることがあります。
 特に薬剤性難聴を引き起こしやすい薬剤として,シスプラチン,カルボプラチン,ネダプラチンなどのプラチナ製剤やパクリタキセルなどの植物アルカロイド系薬剤などがあります。
 このような聴覚障害はまず耳鳴りから始まることが多く,難聴になってしまうと回復できない場合も多いため,耳鳴りなどの症状はすぐに担当医に相談しましょう。
 治療法としてはステロイド剤や血管拡張剤の投与などが行われるほか,薬剤の投与停止や,変更などの処置がとられることもあります。



嗅覚障害
 嗅覚
障害はにおいを感じ取れなくなる障害であり,鼻粘膜にある嗅覚細胞が抗がん剤によりダメージを受けることが原因と考えられています。
 この嗅覚障害は頻度としてはあまり多くありませんが,そのまま抗がん剤治療を続けると二度と回復しない場合があり,嗅覚に少しでも異常を感じた場合はすぐに医師に相談しましょう。
 このような嗅覚異常が見られた場合,すみやかな抗がん剤投与の中止や変更が求められ,回復しない場合はステロイド剤の点鼻療法などが行われる場合もありますが,完治できない場合もあります。
 この嗅覚障害は味覚と同様に亜鉛の不足で生じる場合もあるため,亜鉛を多く含む食材を摂取することで改善が見られることもあります。

 
 

 
   

抗がん剤の種類 抗がん剤副作用一覧

   

がん細胞に対する作用機序の違いなどによりいくつかに分類できます。抗がん剤の種類と主な抗がん剤副作用を示します。

アルキル化剤 
マスタードガスという毒ガス兵器の研究の結果開発された薬です。アルキル化剤はDNAと結合し,DNAを傷つけ,細胞分裂時にDNAを破壊し,がん細胞を死に至らしめます。 

これは細胞毒と呼ばれる毒薬です。したがって正常細胞にもダメージを与えるだけでなく,DNA損傷は正常細胞のがん化を促す可能性もあります。
抗がん剤名
商品名
適応部位 抗がん剤副作用 投与方法
イホスファミド
イホマイド
小細胞肺がん,子宮頚がん,前立腺がん,骨肉腫,胚細胞腫瘍 吐き気,嘔吐,腎不全,血液障害,脱毛,出血性膀胱炎,排尿障害骨髄抑制 静脈点滴
塩酸ニムスチンニドラン
脳腫瘍,胃がん,肝臓がん,大腸がん,慢性白血病,肺がん,悪性リンパ腫 骨髄抑制,間質性肺炎,吐き気,嘔吐,食欲不振,脱毛,頭痛,倦怠感,口内炎,肝障害,腎障害 静脈注射
塩酸プロカルバジン
ナツラン
悪性リンパ腫 骨髄抑制,倦怠感,出血傾向,貧血,食欲不振,吐き気,嘔吐,脱毛,(間質性肺炎) 内服
シクロホスファミド,フエンドキサン,エンドキサンPァミド 悪性リンパ腫,多発性骨髄腫,急性白血病,肺がん,胃がん,結腸がん,乳がん,卵巣がん,神経腫瘍,骨腫瘍,子宮がんなど 骨髄抑制,吐き気,嘔吐,食欲不振,脱毛,(腎障害,出血性膀胱炎,排尿障害,間質性肺炎) 静脈注射
内服
ダカルバジン 悪性黒色腫,ホジキン病 吐き気,嘔吐,脱毛,発疹,注射部位血管痛,肝障害,骨髄抑制 静脈注射
チオテパ
テスパミン
慢性リンパ性白血病,慢性骨髄性白血病,悪性リンパ腫,胃がん,肺がん,子宮頚がん,子宮体がん,卵巣がん,膀胱がん,乳がん 骨髄抑制,吐き気,嘔吐,食欲不振,発熱,脱毛,肝障害,頻尿,排尿困難,倦怠感 静脈注射
ブスルファン
マブリン
慢性骨髄性白血病 骨髄抑制,紫斑,血便,血尿,間質性肺炎,白内障,肝障害,腎障害,吐き気,嘔吐,口内炎,発疹,脱毛 内服
メルファラン
アルケラン
多発性骨髄腫 吐き気,嘔吐,骨髄抑制,貧血,出血傾向,肝障害,間質性肺炎 内服
静脈注射
ラニムスチン
サイメリン
多発性骨髄種,悪性リンパ腫,慢性骨髄性白血病,膠芽腫(脳腫瘍) 骨髄抑制,出血傾向,貧血,食欲不振,吐き気,嘔吐,肝障害,(問質性肺炎) 静脈注射




代謝拮抗剤 
 増殖の盛んながん細胞に多く含まれる酵素を利用して,分裂を抑え込もうとする薬です。代謝拮抗剤はプロドラッグといって,本来の働きをする前の化学構造をもった薬として投与されます。

 これががん細胞の中にある酵素の働きを受けて活性化され,がん細胞を死に至らしめます。しかし,この酵素は正常細胞にも存在するため,正常細胞もダメージを受けることになります。
抗がん剤名
商品名
適応部位 抗がん剤副作用 投与方法
エノシタビン
サンラビン
急性白血病 骨髄抑制,吐き気,嘔吐,食欲不振,発熱,頭痛,倦怠感,脱毛,頻尿,肝障害,腎障害 静脈注射
塩酸ゲムシタビン
ジェムザール
非小細胞肺がん,膵臓がん 骨髄抑制,吐き気,嘔吐,肝障害,発熱,
(間質性肺炎)
静脈注射
カルモフール
ミフロール
胃がん,大腸がん,乳がん 白質脳症,頻尿,吐き気,嘔吐,下痢,出血性腸炎,骨髄抑制,間質性肺炎,肝機能障害 内服
シタラビン
キロサイド(N)
急性白血病,胃がん,胆のう・胆管がん,膵臓がん,肝がん,大腸がん,肺がん,乳がん,子宮がん,卵巣がん,膀胱がん 吐き気,嘔吐,腹痛,下痢,口内炎,結膜炎,頭痛,発疹,脱毛,血尿,膀胱刺激症状 静脈注射
シタラビンオクホスファート
,スタラシド
急性骨髄性白血病,骨髄異形成症候群 骨髄抑制,間質性肺炎,血液障害,食欲不振,吐き気,嘔吐,発熱,頭痛,倦怠感,脱毛,肝障害 内服
テガフール
アチロン,アフトフール(N),イカルス,サンフラール,ステロジン,テフシール・C,フトラフール,フロフトランE,ルナシン
胃がん,大腸がん,乳がん,頭頚部がん,膀胱がん 下痢,口内炎,倦怠感,出血性腸炎,食欲不振,吐き気,嘔吐,肝障害,口内炎,発熱,関節痛,紅班,骨髄抑制 内服
静脈注射
座薬
テガフール・ウラシル
ユーエフティー
ユーエフティE
頭頚部がん,胃がん,大腸がん,肝臓がん,胆嚢・胆管がん,膵臓がん,肺がん,乳がん,膀胱がん,前立腺がん,子宮頚がん 下痢,口内炎,骨髄抑制,肝障害,脱水,腸炎,スティーブンジョンソン症候群 内服
テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム
ティーエスワン
胃がん,頭頚部がん 骨髄抑制,血液障害、食欲不振,色素沈着,吐き気,嘔吐,発疹,肝障害,消化管潰瘍・出血,スティーブンジョンソン症候群 内服
ドキシフルリジン
フルツロン
胃がん,大腸がん,乳がん,子宮頚がん,膀胱がん 骨髄抑制,下痢,脱水,腎障害,骨髄抑制,腸炎,肝障害 内服
ヒドロキシカルバミド
ハイドレア
慢性骨髄性白血病 骨髄抑制,発疹,吐き気,嘔吐,肝傷害,間質性肺炎 内服
フルオロウラシル
カルゾナール,
5-FU,
ベントン
ルナコールロS,ルナポン
胃がん,大腸がん,乳がん,子宮頚がん,子宮体がん,肝臓かん,膵臓がん,卵巣がん,食道がん,肺がん,頭頚部がん,皮膚がん 食欲不振,吐き気,嘔吐,下痢,倦怠感,腸炎,口内炎,消化管潰瘍,骨髄抑制,間質性肺炎 内服静脈注射軟膏座薬
メトトレキサート
メソトレキセート
急性白血病,慢性リンパ性白血病,慢性骨髄性白血病,絨毛性疾患,肉腫,悪性リンパ腫,胃がん,乳がん 吐き気,嘔吐,下痢,脱毛,口内炎,骨髄抑制,肝障害,アナフィラキシー様反応,腎障害,間質性肺炎 内服静脈注射
メルカプトプリン
ロイケリン
急性白血病、慢性骨髄性白血病 吐き気,嘔吐,血液障害,肝障害,腎障害,吐き気,嘔吐,潰瘍性口内炎 内服
リン酸フルダラビン
フルダラ
慢性リンパ性白血病 発熱,悪心,嘔吐,脱力感,骨髄抑制,肝障害,腎障害,問質性肺炎,精神神経障害,消化管出血 静脈注射



抗がん性抗生物質 
微生物からつくられたもので,一般的な抗生物質が細菌を死滅させるのと同様に,がん細胞を死滅させる抗生物質です。

主な原理はがん細胞のDNA合成阻害と,DNA鎖の切断であり,したがって正常細胞にも影響を与え,骨髄抑制をはじめ,心筋障害や肺繊維症などの副作用も見られます。
抗がん剤名
商品名
適応部位 抗がん剤副作用 投与方法
アクチノマイシンD
コスメゲン
ウィルムス腫瘍,絨毛上皮腫,ユーイング肉腫,横紋筋肉腫 骨髄抑制,食欲不振,吐き気,嘔吐,下痢,口内炎,脱毛,色素沈着,(アナフィラキシー様反応) 静脈注射
アクラルビシン・アクラシノン 胃がん,肺がん,乳がん,卵巣がん,悪性リンパ腫,急性白血病 心臓障害,骨髄抑制,食欲不振,吐き気,嘔吐,下痢,口内炎,肝障害 静脈注射
イダルビシン
イダマイシン
急性骨髄性白血病,慢性白血病 心臓障害,骨髄抑制,吐き気,嘔吐,口内炎,下痢,脱毛,肝障害,腎障害 静脈注射
エピルビシン
ファルモルビシン
急性白血病,悪性リンパ腫,乳がん,卵巣がん,胃がん,肝臓がん,膀胱がん,腎孟・尿管腫瘍 吐き気,嘔吐,骨髄抑制,脱毛,頻尿,排尿痛,血尿,心筋障害 静脈注射
ダウノルビシン・ダウノマイシン 急性白血病,慢性白血病 心臓障害,骨髄抑制,吐き気,嘔吐,口内炎,脱毛,消化管障害,肝障害 静脈注射
ドキソルビシン
(アドリアマイシン)・アドリアシン
悪性リンパ腫,肺がん,胃がん,胆のう・胆管がん,膵臓がん,肝臓がん,大腸がん,乳がん,膀胱がん,骨肉腫 吐き気,嘔吐,脱毛,骨髄抑制,口内炎,心臓障害,膀胱刺激症状 静脈注射
ピラルビシン
テラルビシン,ピノルビン
頭頚部がん,乳がん,胃がん,膀胱がん,腎孟・尿管腫瘍,卵巣がん,子宮がん,急性白血病,悪性リンパ腫 心筋障害,骨髄抑制,吐き気,嘔吐,脱毛,排尿痛,問質性肺炎 静脈注射
ブレオマイシン・ブレオ 皮膚がん,頭頚部がん,肺がん,食道がん,子宮頚がん,悪性リンパ腫,神経膠腫,甲状腺がん 間質性肺炎,肺線維症,皮膚の硬化・色素沈着,発熱・悪寒,吐き気,嘔吐,口内炎,爪の変形・変色,脱毛,倦怠感,食欲不振 静脈注射
ミトキサントロン・ノバントロン 急性白血病,悪性リンパ腫,乳がん,肝臓がん 吐き気,嘔吐,骨髄抑制,脱毛,肝障害,発疹口内炎,心臓障害 静脈注射
ジノスタチンスチマラマー
スマンクス
肝臓がん 肝機能障害(黄疸,肝不全,肝膿瘍),発熱,食欲不振,吐き気,嘔吐,骨髄抑制,腎障害,間質性肺炎,消化管出血・潰瘍,アナフィラキー様ショック 肝動脈注入
マイトマイシンC
マイトマイシン
慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病,胃がん,肝臓がん,大腸がん,肺がん,子宮がん,乳がん,頭頚部がん,膠臓がん,膀胱がん 骨髄抑制,食欲不振,吐き気,嘔吐,腎障害,間質性肺炎 静脈注射
ペプロマイシン・ペプレオ 皮膚がん,頭頚部がん,肺がん,前立腺がん,悪性リンパ腫 発熱,口内炎,脱毛,吐き気,嘔吐,間質性肺炎,肺線維症,皮膚硬化・肥厚,色素沈着,爪の変形・変色 静脈注射



植物アルカロイド 
 植物から作られた薬剤で,細胞分裂時に機能する微小管というものの働きを阻害し,がん細胞を死滅させます。しかし微小管は神経細胞でも重要な働きをするため,手足のしびれなどの神経障害が起こることがあります。
抗がん剤名
商品名
適応部位 抗がん剤副作用 投与方法
エトポシド
ベプシド,ベプシドS,ラステット,ラステットS
小細胞肺がん,子宮頚がん,悪性リンパ腫,急性白血病,睾丸腫瘍,膀胱がん,絨毛性疾患 骨髄抑制,脱毛,食欲不振,吐き気,嘔吐,口内炎,発熱,倦怠感,肝障害,腎障害,間質性肺炎 内服
静脈注射
イリノテカン
カンプト,トポテシン
肺がん,悪性リンパ腫,子宮頚がん,卵巣がん,胃がん,大腸がん,乳がん,有棘細胞がん 間質性肺炎,腸管まひ,腎不全,肝障害,骨髄抑制,下痢,脱水,食欲不振,吐き気,嘔吐,口内炎 静脈注射
ノギテカン
ハイカムチン
小細胞肺がん 骨髄抑制,消化管出血,吐き気,嘔吐,脱毛,口内炎,便秘,肝障害 静脈注射
ビノレルビン
ナベルビン
非小細胞肺がん,乳がん 骨髄抑制,脱毛,吐き気,嘔吐,静脈炎,便秘,肝障害,間質性肺炎,腸閉塞,しびれ感 静脈注射
ドセタキセル
タキソテール
乳がん,非小細胞肺がん,胃がん,頭頸部がん,卵巣がん,食道がん 骨髄抑制,下痢,脱毛,吐き気,嘔吐,口内炎,しびれ感,アナフィラキー様反応,浮腫 静脈注射
パクリタキセル
タキソール
卵巣がん,乳がん,非小細胞肺がん,胃がん,子宮体がん 骨髄抑制,末梢神経障害,関節痛,筋肉痛,吐き気,嘔吐,肝障害,腎障害,低血圧,心筋梗塞,アナフィラキシー様反応,しびれ 静脈注射
ビンクリスチン
オンコビン
白血病,悪性リンパ腫,脳腫瘍,小児悪性腫瘍 便秘,腸閉塞,しびれ感,脱毛,筋まひ,神経障害,吐き気,嘔吐,肝障害 静脈注射
ビンデシン
フィルデシン
急性白血病,悪性リンパ腫,肺がん,食道がん 神経障害,骨髄抑制,神経まひ,けいれん,便秘,腸閉塞,脱毛,吐き気,嘔吐,肝障害,しびれ感,間質性肺炎 静脈注射
ビンブラスチン
エクザール
悪性リンパ腫,絨毛性疾患,胚細胞腫瘍 神経障害,便秘,腸閉塞,骨髄抑制,吐き気,嘔吐,味覚異常,レイノー現象,末梢神経炎,しびれ感 静脈注射



プラチナ製剤 
 プラチナの電極を使って細菌の培養をおこなっているときに,電極に使われているプラチナが培養液に溶け,殺菌作用をもつ化合物に変化していることがわかり,抗がん剤としても使われるようになりました。

 白金製剤はがん細胞のDNAと結合することで,DNAの複製を妨ぎ,分裂できなくなったがん細胞を死滅させます。 ほかの抗がん剤では効かない場合や薬剤耐性をもったがん細胞に対して効果を発揮するのが特長です。 
抗がん剤名
商品名
適応部位 抗がん剤副作用 投与方法
カルボプラチン
パラプラチン
頭頚部がん,肺がん,卵巣がん,子宮頚がん,悪性リンパ腫,睾丸腫瘍 骨髄抑制,腎障害,吐き気,嘔吐,食欲不振,脱毛,下痢,口内炎,便秘,血尿,むくみ,肝障害,頭痛,発熱,しびれ 静脈注射
シスプラチン
プラトシン,ブリプラチン,ランダ
肺がん,膀胱がん,前立腺がん,卵巣がん,頭頸部がん,食道がん,胃がん,子宮頸がん,胚細胞腫瘍,悪性リンパ腫 吐き気,嘔吐,食欲不振,脱毛,倦怠感,腎障害,骨髄抑制,貧血,出血傾向,難聴,視神経炎,しびれ感 静脈注射
ネダプラチン
アクプラ
頭頚部がん,肺がん,食道がん,膀胱がん,睾丸腫瘍,卵巣がん,子宮頚がん 骨髄抑制,血漿板抑制,吐き気,嘔吐,難聴,耳鳴り,間質性肺炎,腎不全 静脈注射
オキサリプラチン
エルプラット
大腸がん 吐き気,嘔吐,食欲不振,頭痛,末梢神経障害,感覚異常,知覚不全,腎障害,聴力障害,骨髄抑制 静脈注射



ホルモン剤
 がんの治療に投与されるホルモン剤は基本的に,がん細胞の増殖を促進させる性ホルモンのはたらきを抑制することによって,がん病巣を縮小させるはたらきをもっています。
 ホルモン剤は反対の性ホルモンを投与する性ホルモン剤,がん細胞のホルモンレセプターと結びつく抗ホルモン剤,性ホルモンの産生を止めるホルモン生成阻害剤,ホルモン分泌阻害剤などがあります。
抗がん剤名
商品名
適応部位 抗がん剤副作用 投与方法
アナストロゾール
アリミデックス
閉経後乳がん ほてり,吐き気,頭痛,無力症,性器出血,脱毛,発熱,関節痛をはじめとしたスティーブンジョンソン症候群 内服
ファドロゾール
アフェマ
閉経後乳がん 吐き気,嘔吐,めまい,不正出血,かゆみ,食欲不振,腎障害,肝障害,高カリウム血症 内服
タモキシフェン
アドパン,エマルック,タスオミン(D),ノルキシフェン,ノルバデックス(D),パンリーフ,フェノルルン,レスポール
乳がん 無月経,月経異常,吐き気,嘔吐,視力異常,血栓症,静脈炎,肝障害,高カルシウム血症,血管浮腫 内服
トレミフェン
フェアストン
閉経後乳がん 疼痛(フレア反応),顔面紅潮,肝障害,吐き気,嘔吐,血栓症,静脈炎 内服
ゴセレリン
ソラデックス
閉経前乳がん,前立腺がん 顔面紅潮,肝障害,高カリウム血漿,月経異常,性欲減退,勃起力低下,浮腫,尿路閉塞 皮下注射
メドロキシプロゲステロン
ヒスロン(H),プロゲストン,
子宮体がん,乳がん 血栓症,脳梗塞,心筋梗塞,肺梗塞,視力低下,消失,発疹,肝障害,しびれ,浮腫,体重増加,吐き気,嘔吐,胃部膨満感,満月様顔貌,無月経,血栓症 内服
リュープロレリン,リュープリン 閉経前乳がん,前立腺がん ほてり,熱感,のぼせ,肩こり,頭痛,不眠,筋肉痛,間質性肺炎,うつ状態 皮下注射
デキサメタゾン
オルガドロン,デカドロン,デキサメサゾン,ミタゾーン
悪性リンパ腫,乳がん,前立線がん,白血病 免疫機能低下,月経異常,胃痛,満月様顔貌,体重増加,糖尿病,消化性潰瘍,精神変調,骨粗鬆症 内服
ビカルタミド
カソデックス
前立腺がん 肝障害,黄疸,乳房の腫れ,痛み,ほてり,性欲減退,勃起力低下 内服
フルタミド
オダイン
前立腺がん 肝障害,排尿困難,ほてり,女性化乳房,下痢,吐き気,嘔吐,貧血,間質性肺炎 内服
プレドニゾロン
プレドニゾロン,プレドニン,プレロン
白血病,悪性リンパ腫,乳がん,前立腺がん 免疫機能低下,感染症,精神変調,血圧上昇,月経異常,満月様顔貌,発熱,疲労感 内服
ホスフェストロール,ホンバン 前立腺がん 血栓症,心筋梗塞,脳梗塞,吐き気,嘔吐,肛門・陰部周囲のかゆみ・灼熱感・しびれ感 内服
静脈注射



分子標的治療薬 
 従来から使用されている抗がん剤は,がん細胞と正常細胞の構造を区別できずに,正常細胞やリンパ球などの免疫細胞までダメージを与えてしまうという副作用がありました。
 

 近年,このような従来型の抗がん剤の欠点を克服すべく,がん細胞が持っているある特定の分子に働く分子標的治療薬が開発されています。

 
しかし,間質性肺炎や心不全など,これまで抗がん剤では問題にならなかったような予想外の重篤な副作用も見られています。
抗がん剤名
商品名
適応部位 抗がん剤副作用 投与方法
ゲフィチニブ
イレッサ
切除不能または再発非小細胞肘がん 間質性肺炎,急性肺障害,発疹,かゆみ,下痢,脱水,吐き気,嘔吐,口内炎 内服
トラスツズマブ
ハーセプチン
HER2過剰発現が確認された転移性乳がん 発熱,吐き気,嘔吐,悪寒,倦怠感,頭痛,運動失調,不全麻痺,下痢,呼吸困難,発疹,心障害,末梢性浮腫,骨髄抑制,肝障害 静脈注射
メシル酸イマチニブ,グリベック 慢性骨髄性白血病 吐き気,嘔吐,発疹,下痢,関節痛,頭痛,不眠,体液貯留,血糖値上昇,肝障害,腎不全,骨髄抑制 内服
リツキシマブ
リツキサン
非ホジキンリンパ腫 発熱,悪寒,かゆみ,血圧上昇,頭痛,発疹,骨髄抑制,肝障害,吐き気,嘔吐,ほてり,心障害,腎障害 静脈注射
ボルテゾミブ
ベルケイド
再発や難治性の多発性骨髄腫 下痢,嘔吐,食欲不振,末梢神経障害,間質性肺炎,血小板減少骨髄抑制,心臓血管障害 静脈注射
ベバシズマブ
アバスチン
転移性大腸がん,切除不能進行・再発非小細胞肺がん 高血圧,発疹,下痢,口内炎,間質性肺疾患,腸穿孔 静脈注射
エルロチニブ
タルセバ
切除不能または再発非小細胞肘がん

皮疹,肝障害,間質性肺疾患,下痢,口内炎

内服
イブリツモマブ
ゼヴァリン
CD20抗原陽性B細胞性非ホジキンリンパ腫 骨髄抑制倦怠感,頭痛,便秘,口内炎,発熱,悪心,下痢,食欲不振,皮下出血,鼻咽頭炎,紅皮症(剥脱性皮膚炎),皮膚粘膜眼症候群 静脈注射
ソラフェニブ
ネクサバール
転移性腎細胞がん,切除不能肝細胞がん 手足症候群,下痢,吐き気,高血圧,肝機能障害,黄疸,脱毛 内服
スニチニブ
スーテント

 
イマチニブ抵抗性の消化管間質腫瘍,切除不能,転移性の腎細胞がん 血小板減少,手足症候群,食欲不振,肝機能異常,疲労感,リンパ球減少 内服
セツキシマブ
アービタックス
EGFR陽性切除不能,再発大腸がん アナフィラキシー様反応,悪寒,発熱,発疹,かゆみ,発赤,気管支喘息類似の症状,低血圧,心不全,下痢,発疹 静脈注射
ダサチニブ
スプリセル

 
イマチニブ抵抗性慢性骨髄性白血病
再発,難治性急性リンパ性白血病

血小板減少,胸水,肺水腫,腹水,脳・硬膜下・消化管出血,間質性肺疾患

内服
ニロチニブ
タシグナ  
イマチニブ抵抗性慢性骨髄性白血病 白血球減少,血小板減少,歯茎出血,皮下出血,,不整脈,発熱,のどの痛み,肝障害,膵炎,間質性肺炎 内服
ラパチニブ
タイケルブ
手術不能,再発乳がん

肝障害,間質性肺炎,心不全,不整脈,発疹,かゆみ,口内炎

内服
エベロリムス
アフィニトール
根治性切除不能,転移性腎細胞がん 間質性肺疾患,白血球減少,血小板減少,高血糖,糖尿病,発熱,口内炎 内服
パニツムマブ
ベクティビックス

 
KARS遺伝子野生型治癒切除不能進行・再発大腸がん 皮膚障害(ざ瘡様皮膚炎,乾皮症など),間質性肺疾患,倦怠感,食欲不振,発熱,悪寒,下痢 静脈注射
テムシロリムストーリセル  根治切除不能,転移性腎細胞がん 間質性肺疾患,無力症,発疹,貧血,悪心,高脂血症,食欲不振,高コレステロール血症,口内炎,粘膜炎 静脈注射
 
 

   

新しい抗がん剤 分子標的治療薬

   

 
 
従来型の抗がん剤は細胞分裂を行う際に正常細胞とがん細胞の両方に攻撃するため,大きな副作用が問題となっていました。そこで,がん細胞のみに選択的にはたらく治療薬として開発されたものが分子標的薬です。
 
 この新しい抗がん剤は近年の分子生物学の進歩により,がんだけが持つ特異抗原やがんの増殖を引き起こす酵素やタンパクが明らかになになったため,開発が可能になりました。

 この治療薬はがん細胞の表面に存在する特異抗原に作用するタイプのものと細胞内,核内の分子を標的として細胞内に入り込んで作用するタイプのものとがあります。

 後者のタイプのものには,ソラフェニブやスニチニブのように,がんの増殖や血管新生を促進する信号経路を複数箇所で遮断できるタイプのものも登場しています。
 
 このあたらしい治療薬はこれまでのものと異なり正常細胞への影響は少なく,がん治療に有効な薬剤と期待されていましたが,投与してみると従来のものと同様,副作用はあり,一部に予想外の重篤なものも報告されています。

 しかし,これまで,有効な薬剤がなかったがんの患者には朗報となりました。特に転移性腎細胞がんには,ソラフェニブ,スニチニブ,エベロリムス,テムシロリムスが近年続けて承認され,治療成績も劇的に向上しています。

 また,有効な抗がん剤の治療法がなかった進行肝臓がんにもソラフェニブの開発,承認により生存期間の延長が報告されています。
 

 このような分子標的治療薬の開発により,生存率が向上したがんも多く,以下に例をあげて解説していきたいと思います。


乳がん
 トラスツズマブ(ハーセプチン)の登場により,再発・転移した乳がんの生存期間も伸びています。トラスツズマブはがん細胞の表面に存在するHER2受容体に結びつく抗体で,転移性の乳がんの中でも,HER2強陽性と判定された患者に効果があります。
 この作用のメカニズムはリツキシマブと同様に,HER2受容体に結びついたトラスツズマブがNK細胞やマクロファージのターゲットとなり,結合することで,がん細胞を破壊するというものです。
 この抗がん剤により,予後も大幅に良いものとなりました。
また,13年にはTDM-1やperutuzumabという新薬の承認も予定されています。


慢性骨髄性白血病
 血液のがんとも言えるこの慢性骨髄性白血病は造血幹細胞のがん化によって生じます。1999年までは「不治の病」といわれていたがんで,幸運にも慢性期にドナーが見つかって骨髄移植を受けられても,移植が成功する割合は30%程度で,残りの30%は,移植後100日以内に死亡し,40%は移植片対宿主病(GVHD)という合併症のため,免疫抑制剤の投与が必要でした。この白血病の5年生存率は30%以下という低いものだったのです。
 ところが,2001年にイマチニブ(グリッベック)という抗がん剤が承認されからは5年生存率は90%以上になり,移植はほとんど必要なくなりました。
 さらに,このイマニチブが効かない場合や効かなくなった場合の新薬も登場しています。


多発性骨髄腫
 10年ほど前には骨折や感染症が原因でQOLが悪化して,寝たきりとなり,発病後平均2年で死亡するなど難病で,これまでは,メルファランとプレドニゾロンの併用やシクロホスファミド,ビンクリスチンなどによる多剤併用療法が行われてきましたが,長期の使用では効果も上がらなくなります。
 しかし,ボルテゾミブ(ベルケイド),サリドマイド(サリド),レナリドミド(レブラミド)が登場してからは,生存期間や生存率が向上しています。


悪性リンパ腫
 悪性リンパ腫にはいくつかの種類があり,中には薬が効かないものもありましたが,新しい抗がん剤の登場により期待が高まっています。
 成人T細胞白血病・リンパ腫の新薬としてモガムリズマブが登場しました。モガムリズマブは、2012年からポテリジオ点滴静注20mgという製品名で,再発または難治性のCCR4陽性の成人T細胞白血病リンパ腫の治療薬として,国内で販売され,適応疾患を検証するために多くの臨床試験を国内外で実施しています。
 また,ホジキンリンパ腫に対する新薬brentuximab-vedotin(商品名「ADCETRIS」)が登場し,アメリカのFDAではすでに承認されています。
 この新薬は抗体と抗がん剤を組み合わせた新しいタイプで,副作用は少なく,効果も高いといわれています。2013年には日本でも承認される可能性が高い抗がん剤です。


大腸がん
 大腸がんは2000年ころまでは,再発した場合,有効な抗がん剤がなく,生存期間が1年を超えることは
まれでした。データによれば,奏効率はわずか20%で,生存期間も6ヶ月伸びる程度でした。
 現在では,ベバシズマブ(アバスチン)の登場により,他の抗がん剤と組み合わせる多剤併用療法が標準治療となりました。ベバシズマブはヒトVEGF(血管内皮増殖因子)に特異的に結合し,これが血管内皮細胞上に発現しているVEGF受容体と結合することを阻止することで,がん細胞の血管の新生を抑制します。
 これにより,生存期間も3年近くまで伸びています。


  

国内で承認された分子標的治療薬

トラスツズマブ(ハーセプチン) 2001年承認
 トラスツズマブは乳がんの分子標的治療薬として,日本で最初に認可された抗がん剤です。
 トラスツズマブはがん細胞の表面に存在するHER2受容体に結びつく抗体で,転移性の乳がんの中でも,HER2強陽性と判定された患者のみに効果があらわれています。
 この作用のメカニズムはリツキシマブと同様に,HER2受容体に結びついたトラスツズマブがNK細胞やマクロファージの標識となって結合し,それらの免疫系細胞のはたらきにより,腫瘍細胞を攻撃するというものです。
 他の抗がん剤との併用で奏効率や生存期間の延長が得られ,乳がんの新しい治療薬として期待されています。
 副作用としては
最も現れやすいものが発熱と悪寒で,その他頭痛,倦怠感なども出る場合もあります。また,頻度は少ないものの重篤な副作用として心臓機能の低下や呼吸器の障害が出ることがあります。

リツキシマブ(リツキサン) 2001年承認
 悪性リンパ腫の治療に使われ,リンパ腫のCD20抗原にはたらくモノクローナル抗体で,単独で30%以上の奏効率を示しています。
 この作用のメカニズムはCD20抗原に結びついたリツキシマブがNK細胞やマクロファージの標識となって結合し,それらの免疫系細胞のはたらきにより,腫瘍細胞を攻撃するというものです。
 海外の報告ではリツキサンと抗がん剤治療を併用した患者群は,リツキサンを併用しない患者群に比較して,長期生存する人が10パーセント増加しています。
 悪性リンパ腫における長期生存とは病気が治癒したものと同義と見なされ,その値が10パーセント改善したのはとても画期的なことといわれています。
 従来型の治療薬よりは副作用は少ないのですが,
副作用は見られ,主なものに発熱,悪寒,虚脱感,かゆみ,頭痛,ほてり,血圧上昇,頻脈,多汗,発疹などがあります。
 また,白血球の減少,好中球の減少,血小板の減少などの他,重篤な症状として,アナフィラキシー様症状,肺障害,心障害などの副作用があります。

イマチニブ(グリベック)2001年承認
 慢性骨髄性白血病CML)や消化管間質腫瘍GIST)の治療薬です。異常細胞を産生させるBCR-ABLチロシンキナーゼという酵素を選択的に阻害するはたらきがあります。
 イマチニブを服用した慢性骨髄性白血病患者の5年生存率は95パーセントと,大変高い奏効率を示しており,現在では,イマチニブが慢性骨髄性白血病の第1選択の治療法になっています。
 消化管間質腫瘍(GIST)は,食道や胃,小腸,大腸などの消化管粘膜の下層に発生する腫瘍ですが,この腫瘍に対しては50%の患者に有効です。
 この抗がん剤は経口薬で,通院で治療できることも患者に大きなメリットですが,副作用として,顔や脚のむくみ,皮膚の発疹,骨髄抑制,吐き気,血小板減少症などが認められています。

ゲフィチニブ(イレッサ) 2002年承認
 小細胞肺がんの治療に使われ,がんの増殖に関係するチロシンキナーゼという酵素を阻害する薬剤です。
 20%の患者の腫瘍が縮小し,腫瘍の成長の停止まで含めると60%の患者に効果があったという報告がありますが,一部に急性肺障害や間質性肺炎などの副作用が報告されています。
 この副作用は特に放射線治療を受けた患者に多いというデータがあります。放射線で傷ついた細胞が修復される時に発現するレセプターが細胞の増殖に関するもので,これはがん細胞が発現しているレセプターと同じものです。
 したがって増殖しようとする正常細胞までがこの治療薬の影響を受けてしまうことが副作用の原因であるとも考えられています。
 ゲフィチニブは従来型の抗がん剤と比較して吐き気,脱毛などの副作用は少ないというメリットがあり,患者によっては劇的に効く場合もあります。
 よく見られる副作用として発疹,かゆみ,下痢などが見られますが,投与する患者100人につき1~2人の割合で,間質性肺炎などの重い副作用が起きているので注意が必要です。

ボルテゾミブ(ベルケイド) 2006年承認
 ボルテゾミブ(ベルケイド)は再発や難治性の多発性骨髄腫の治療薬です。
 この抗がん剤は細胞中の不要なたんぱく質を分解する酵素プロテアソームの働きを阻害し,骨髄腫細胞の増殖を抑制する機能を持っています。
 これまで多発性骨髄腫に対し,メルファランとプレドニゾロンの組み合わせやシクロホスファミド,ビンクリスチンなどによる多剤併用療法が行われてきましたが,長期間の使用では効果も上がらなくなります。
 そのような理由からボルテゾミブ(ベルケイド)に対する期待も高まりました。
 副作用としては,下痢や食欲不振などの消化管症状や,手足がしびれるなどの末梢神経障害などがあります。また,日本では間質性肺炎が多く,使用量が多いと,血小板が減少して出血しやすくなります。
 骨髄の正常な細胞にも作用するため,白血球や赤血球などの血液細胞が減少する「骨髄抑制」が高い頻度で起こります

ベバシズマブ(アバスチン) 2007年承認
 アバスチンは転移性大腸がん,切除不能進行・再発非小細胞肺がんの治療薬です。
 ベバシズマブは,がん細胞が自分の細胞に向かって新たに血管をつくるはたらき(血管新生)を阻害し,がん組織への栄養・酸素の供給を遮断し,腫瘍の拡大,転移を阻害するというものです。
 ベバシズマブは血管を増殖させる信号を血管に与える,がん細胞の糖タンパクであるヒトVEGF(血管内皮増殖因子)に特異的に結合し,これが血管内皮細胞上に発現しているVEGF受容体と結合することを阻止することで,がん細胞に向かう血管の新生を抑制し,すでに新生された未熟な血管をも退縮させます。 

 アバスチン単独ではがん縮小効果は弱いものの,抗がん剤と併用することでよい治療成績が得られ,海外の臨床試験では,アバスチンを長期間使用したほうが生存期間が延長すると報告されています。
 アバスチンに特有な副作用として,出血,血栓症,消化管穿孔,血圧上昇などあります。全国調査(07年6月~12月)では,血栓症は0.9パーセント,消化管穿孔は0.4パーセントと低い数値でした。

エルロチニブ(タルセバ) 2007年承認
 非小細胞肺がんの治療薬で作用メカニズムはイレッサと同様で,がんの増殖に関わるがん細胞の表面にあるEGFR(上皮増殖因子受容体)チロシンキナーゼを標的とし,そのはたらきを阻害します。
 化学療法無効患者や化学療法後のがん悪化患者を対象にした臨床試験では,偽薬投与群の延命が平均4・7カ月だったのに対しタルセバ投与群は平均6・7か月延命したと報告され,効果はイレッサ以上ともいわれています。

 EGFRに特定の遺伝子変異がある場合,タルセバはより高い治療効果が期待できることがわかっています。 したがって遺伝子検査の結果が,タルセバの効果を判定するデータとなります。
 しかし,遺伝子変異がない患者でも,一般的な化学療法と遜色がない程度には延命効果があることが明らかになっています。
 副作用として,EGFRチロシンキナーゼ阻害薬で特徴的に現れるものに皮疹などの皮膚障害があります。イレッサでも発現しますが,発現率はタルセバのほうが高く,ほとんどの患者に見られます。
 また,イレッサ同様,間質性肺疾患も見られ,その副作用の発症率は国内の臨床試験では4.9%でした。 その他,下痢,口内炎などの副作用も見られます。
 また,タルセバは膵臓がんに対する臨床試験の結果,効果が得られたとして,中外製薬が2009年膵臓がんに対する効能・効果追加の承認申請を厚生労働省に行いました。

イブリツモマブ(ゼヴァリン) 2008年承認
 イブリツモマブ(ゼヴァリン)はがん細胞にCD20抗原が発現しているB細胞性非ホジキンリンパ腫の治療薬です。
 ゼヴァリンはリツキサンと同じようにB細胞表面上のCD20抗原をを標的としていますが,ゼヴァリンはこの抗体に放射性同位元素を結合させているという点に特徴があります。
 ゼヴァリンはマウスの抗体を利用し,イットリウム90という放射性同位元素を結合させています。この抗体がCD20抗原を標的にしてがん細胞に取り付くと,放射性同位元素から出る放射線が,がん細胞を攻撃します。
 ゼヴァリンの優れている点は放射性同位元素が放出するベーター線が,CD20陽性リンパ腫細胞に加え,その周囲のCD20抗原を持たないリンパ腫細胞まで攻撃することができるということです。
 ゼヴァリンはリツキサンが効かない場合などに,使用されますが,リンパ腫細胞が骨髄に浸潤をきたしているときなどは,造血幹細胞にダメージを与え,骨髄抑制という副作用起きるため, 使用が難しくなります。
 臨床試験ではリツキサンに対して抵抗性のある濾胞性リンパ腫54人にゼヴァリンを投与した場合の奏効率は74パーセントでした。
 また,主な副作用は,投与後6~7週間後に出現する骨髄抑制があり,その他の副作用として,倦怠感,頭痛,便秘,口内炎,発熱,悪心,下痢,食欲不振などが臨床試験で報告されています。

ソラフェニブ(ネクサバール) 2008年承認
 切除不能または転移性腎細胞がん,または切除不能の肝細胞がんの治療薬です。
 腎臓がんに対する初めて認可された抗がん剤で,細胞の増殖やがんに栄養を運ぶ血管新生に関わる複数のキナーゼを標的としています

 がん細胞の増殖や血管新生にはキナーゼというある種の酵素が関係しています。この治療薬は複数のキナーゼを阻害することで,がん増殖や血管新生をうながすシグナル伝達をさまたげます。その結果,がんの成長が抑制されます。
 副作用として腎臓がんを対象としたスニチニブ(スーテント)と同様に,手足が腫れたり皮膚が乾燥してはがれたりする「手足症候群」が,約半数程度の患者に現れています。これは痛みをともなうこともあります。
 次に多いのが,下痢や吐き気など消化器症状,そして高血圧です。 また,AST(GOT)やALT(GPT)の上昇を伴う肝機能障害や黄疸が現れることがある他,脱毛なども見られます。
 また,新生血管を阻害するため,妊婦および妊娠している可能性のある女性には使用できません。高脂肪の食品はこの薬の血中濃度を低下させるので食事と薬の服用の時間を開けることが必要です。

スニチニブ(スーテント) 2008年承認
 イマチニブ抵抗性の消化管間質腫瘍,切除不能または転移性の腎細胞がんの治療薬です。
 腫瘍増殖や血管新生にかかわる複数のキナーゼ群を標的分子とし,がん細胞や血管内皮細胞の表面にある複数の受容体に働きかけ,がん細胞の増殖因子や血管新生をの信号伝達をブロックすることでがんの増殖を抑制します。
 これまで使われてきた同類薬のイマチニブ(グリベック)がよく効かない場合や副作用で使えないときに用いられます。

 これまで国内の臨床試験で確認された主な副作用としては,血小板減少や手足症候群,食欲不振,肝機能異常,疲労感,リンパ球減少などです。
 これらの副作用の安全対策のため,使用出来る施設はがん化学療法に精通し,副作用への緊急対応が可能な医療機関に限定されます。また,一定期間,効果や副作用の調査をおこなうことになっています。

セツキシマブ(アービタックス) 2008年承認
 EGFR抗原を発現している切除不能または再発大腸がんの治療薬です。
 アービタックスは,がん細胞が増殖するために必要なシグナルを受け取るレセプターであるEGFR(上皮成長因子受容体)を標的としています。
 アービタックスがEGFRと結合すると,細胞を増殖させるシグナルが遮断され,がん細胞は増殖できなくなります。
 アービタックスについての臨床試験は欧州で実施されたBOND試験で「イリノテカンで進行を止められなかった転移性・進行性の大腸がん患者218人に対して,イリノテカンとアービタックスの併用療法で,半数の患者で進行を4カ月以上遅らせることができ,20%の患者では50%以上の縮小がみられた。」と報告されています。

 
アービタックスに特有の副作用として,海外の臨床試験では皮膚障害,とくににきび様の発疹が報告されています。その他アナフィラキシー様反応,気管支喘息類似の症状,低血圧,心不全,下痢なども見られます。

ダサチニブ(スプリセル) 2009年承認
 イマチニブ抵抗性の場合の慢性期または移行性の慢性骨髄性白血病,再発または難治性の急性リンパ性白血病の治療薬です。
 白血病に対する分子標的薬としてはイマチニブ(グリベック)が良好な治療成績をおさめており,このダサチニブ(スプリセル)はイマチニブでよい結果がだせなかった場合の2次治療薬として使用されています。 フィラデルフィア染色体が作り出す酵素にある2つの結合部に「基質たんぱく」と「ATP」という物質が結合すると,白血病の異常な細胞が増殖してしまいます。 この抗がん剤はこの結合を阻害することにより効果を発揮します。
 副作用としては約半数の患者に血小板の減少が見られるほか,胸水や肺水腫,腹水などの体液貯留が見られます。その他の副作用として,脳・硬膜下・消化管の出血や間質性肺疾患などがあります。

ニロチニブ(タシグナ) 2009年承認
  イマチニブ抵抗性の慢性骨髄性白血病の治療薬です。

 2001年に承認された分子標的薬イマチニブ(グリベック)は,7年全生存率86パーセントと良好な成績が報告されました。
 ニロチニブ(タシグナ)は,慢性骨髄性白血病の患者のなかでイマチニブ(グリベック)で効果があがらない場合や副作用が強く中止せざるを得ない人を対象としています。
 ニロチニブは,慢性骨髄性白血病の発症,進行の原因であるBCR-ABL遺伝子から作られるBcr-Abl蛋白にグリベックよりさらに強く,かつ選択的に結合するように開発された薬剤です。
 グリベック使用の2次治療薬として承認されたニロチニブですが,その効果はイマチニブ以上と言われ,現在,初発の慢性骨髄性白血病患者を対象とした全世界規模での臨床試験が進行中で,その結果によっては慢性骨髄性白血病の患者に対する第1選択薬として認可される可能性も期待されています。
 副作用では白血球減少症や血小板減少があり,歯茎出血・皮下出血など出血が見られる場合があります。その他,体液貯留や不整脈を起こすことがあります。 また,発熱やのどの痛みの他,重い肝障害や膵炎,間質性肺炎も報告されています。

ラパチニブ(タイケルブ) 2009年承認
 手術不能または再発乳がんの経口治療薬です。
 ラパチニブ(タイケルブ)はがん細胞の増殖を促進するHER2(ErbB2)に対して強力な阻害作用を示し,乳がん細胞の増殖を抑制します。
 ラパチニブは低分子化合物で,がん細胞の細胞膜を通過し,HER2の受容体シグナルの元を特異的に抑え,がん細胞の増殖を止め,アポトーシス(細胞の自然死)を促進させます。
 適応となるのは,HER2陽性の乳がんで,トラスツズマブ(ハーセプチン)を含め既存の標準的化学療法で効果が得られない場合もしくは再発した場合です。
 また,抗がん剤カペシタビン(ゼローダ)と併用で,奏効率も向上することが臨床試験で報告されています。
 ラパチニブは,低分子化合物なので,血液脳関門を通過することが動物実験で確認され,乳がんの脳転移に対しても効果を期待されています。
 重篤な副作用としては肝障害と間質性肺炎,心不全,不整脈があげられるほか,カペシタビン併用による手足症候群や骨髄抑制,感染症,下痢などにも注意が必要です。一般的な副作用としては,発疹,かゆみ,口内炎などが見られます。

エベロリムス(アフィニトール) 2010年承認
 根治性切除不能または転移性腎細胞がんの経口治療薬です。
 エベロリムスはがん細胞の増殖や血管新生にかかわっている因子mTORタンパク を選択的に阻害し,腫瘍細胞の増殖抑制と血管新生阻害作用を発揮することにより,抗腫瘍効果を示します。
 この抗がん剤はスニチニブ(スーテント)やソラフェニブ(ネクサバール)などキナーゼ阻害薬による一次治療後に悪化した症例において有効性が認められています。
 スニチニブは国内外の臨床試験で服用後の間質性肺疾患が高頻度に報告されており,頻度は10%の患者に見られます。
 したがって安全対策のため,この薬を処方できるのは一部の病院だけで,副作用への緊急対応が可能な医療機関に限定されます。
 その他白血球減少や血小板減少などを生じる血液障害,高血糖や糖尿病の発症,発熱,口内炎など,副作用も多く,注意が必要です。 また,最近の第3相試験でスニチニブが進行膵内分泌腫瘍患者腫瘍患者の無増悪生存期間を2倍以上に延長したことが第12回世界消化器がん学会で報告されています。

パニツムマブ(ベクティビックス) 2010年承認
 KARS遺伝子野生型の治癒切除不能な進行・再発大腸がんの治療薬です。
 パニツムマブはセツキシマブと同じ抗EGFRモノクローナル抗体製剤ですが,セツキシマブがマウス抗体を一部使用したキメラ型モノクローナル抗体であるのに対し,EGFRへの親和性が高いヒト型モノクローナル抗体である点が特徴です。
 この治療薬はがん細胞が増殖するために必要なシグナルを受け取るレセプターであるEGFR(上皮成長因子受容体)を標的として,細胞を増殖させるシグナルを遮断し,がん細胞の増殖を抑制します。
  このパニツムマブは国内外の臨床試験結果で,KRAS遺伝子の野生型(変異がない状態)患者の治癒切除不能な進行・再発の結腸癌・直腸癌に対して,他の抗がん剤FOLFOX4(フルオロウラシル・フォリン酸・オキサリプラチンの3剤)との併用やFOLFIRI(フルオロウラシル・フォリン酸・イリノテカン)との併用または単独投与で有用性が認められています。
 ただ薬剤の使用に際しては,副作用は単独投与や他の薬剤併用投与(FOLFOX4またはFOLFIRI併用)においても98~99%とほぼ全症例において見られ注意が必要です。
 重大な副作用としては,重度の皮膚障害(ざ瘡様皮膚炎や乾皮症など),間質性肺疾患(間質性肺炎,肺線維症,肺臓炎,肺浸潤),重度の発熱,悪寒,重度の下痢,倦怠感,食欲不振などが認められています。

テムシロリムス(トーリセル) 2010年承認
 根治切除不能または転移性腎細胞がんの治療薬です。
 テムシロリムス(トーリセル)は,点滴静脈内投与により,がん細胞の増殖や血管新生にかかわっている因子mTORタンパク を選択的に阻害します。
 その結果,腫瘍細胞の増殖抑制と血管新生阻害作用を発揮することにより,抗腫瘍効果を示します。

 薬物による前治療を受けていない予後不良の進行性腎細胞癌の患者を対象とした海外第Ⅲ相臨床試験において,全生存期間の中央値は,インターフェロンアルファ(IFN-α)単独投与群で7.3ヵ月であったのに対し,テムシロリムス25mg週1回単独投与群では10.9ヵ月と延長が認められました。
 また,日本,韓国及び中国で進行性腎細胞癌患者を対象として実施した国際共同(アジア)第Ⅱ相臨床試験において,トーリセル25mgを週1回投与した奏効率(完全奏効+部分奏効)は11.8%,臨床的利益率(完全奏効+部分奏効+24週以上の安定)は47.4%と日本人を含むアジア人の進行性腎細胞癌に対する有効性が確認されました。
  海外での第3相臨床試験では93.8%の患者に何らかの副作用が認められています。 副作用としては無力症(39.9%),発疹(33.7%),貧血(32.7%),悪心(26.0%),高脂血症(24.5%),食欲不振(22.6%),高コレステロール血症(20.7%),口内炎(19.7%),粘膜炎(18.3%)が報告されています。
  重大な副作用は,間質性肺疾患があり,国内を含む国際共同(アジア)第Ⅱ相臨床試験では,全82症例のうち,医師報告による間質性肺疾患が14例あり,うち1例が死亡した例が1例あります。 
 この薬剤は安全性確保のため,製造元のファイザー社の意向により施設要件を設定することで販売先を特定しています。

分子標的治療薬の問題点
 
 正常細胞に影響を与えない,画期的ながんの治療薬として開発され,期待された分子標的治療薬ですが,効果があるのは患者の一部であり,また,がんが進行していくと効果が薄れていくことが多いということがわかってきています。

 これはがんの変異した遺伝子は1種類ではなく複数あり,進行すると遺伝子の変異が増加し,対応しきれないことが効果があがらない原因の一つと考えられています。

 また,従来型の抗がん剤と同様,多くの分子標的治療薬に副作用が見られるだけでなく,一部の患者には上記に示したような間質性肺疾患など重篤な副作用も見られ,正常細胞にも影響を与えていることもわかりました。


 現在のところ,固形がんを単独で治癒できる分子標的薬はなく,従来型の薬剤と併用されるケースが多いというのが実情の様です。
 

 
セカンドオピニオンの重要性

 がん治療法は医師の間でも意見が分かれることも多く,よく言われるように,セカンドオピニオン(主治医以外の第二の意見)を大切にしてほしいと考えます。
  
 アメリカでは医師がセカンド・オピニオンを尊重し,定着していますが,日本では主治医に気兼ねをすることも多く,まだ普及していないのが現状です。
 
 がん治療法が多岐にわたり,しかも新しい治療法が次々と開発されているがん治療では,情報の収集とセカンド・オピニオンが何より大切になってきます。
 
 医師には得意な分野があり,どうしても得意な分野での治療法を患者にすすめる傾向がありますが,医師の提示される治療法がベストとは限りません。

 最近ではセカンドオピニオン専門の窓口を設ける病院も増えています。あとで後悔しないためにも,一人の医師の意見を絶対と考えず,積極的にセカンドオピニオンを求めましょう。

 このHPでもセカンド・オピニオン外来窓口設置病院を紹介していますので参考にしてください
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