子宮がん・がん治療

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子宮がん
 子宮がんは女性のがんの中では胃がん,乳がんについで罹患率の高いがんです。子宮は大人のこぶし程度の大きさで,子宮上部の子宮体と,下部の細くなった子宮頸部に分かれます。頸部に発症するがんを子宮頸がん,子宮体に発症するがんを子宮体がんと呼びます。

 子宮がんの発症率や死亡率は近年減少傾向にあります。これは子宮がんの中で子宮頸がんの発症が減少したためで,これとは逆に子宮体がんの発症率は近年急増しています。

 子宮頸がんは20~40歳代の女性に多く発症し,これに対して子宮体がんは50~60歳代に多く発症しています。この子宮体がんは乳がんと同様に,閉経後の肥満が大きく影響していると言われます。
 

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 子宮頸がん
子宮頸がんの原因
 現在,子宮頸がん発症の多くがウィルス感染が原因と考えられています。このがん発症の原因ともなるウィルスはヒトパピローマウィルス(HPV)と呼ばれ,多くの型がありますが,その中で特に16型や18型,58型などが関係していると言われています。

 子宮頸がんの中で
粘膜から発症する扁平上皮がん患者のほとんどが,また腺がん患者の70%がこのウィルスに感染していると考えられています。

 
 男性器にあるHPVが性行為で子宮頸部へ感染しますが,発症するのはごく一部で,多くの場合,免疫力によって排除されます。感染を防ぐには性行為の際にコンドームを使うことが有効です。また清潔な性生活も大切です。

 このウィルスは感染すると細胞内に進入し,細胞の分裂を抑える遺伝子「Rb」や傷ついた細胞を自滅させがん化を防ぐp53遺伝子のはたらきを止めてしまいます。そして細胞が変化し,無制限に増殖するがんとなってしまいます。

子宮頸がんの症状
 
早期では自覚症状はないことが多いのですが,症状として多くみられる症状は,性器からの出血で,性行為の後や生理以外の時に出血が見られることがあります。またおりものの量が増え,ピンクや茶の色がつくこともあります。

 しかし,これらの症状は膣炎,子宮内膜炎,子宮頸管ポリープ,子宮筋腫など良性の病気でもみられますので,これらの症状があってもすぐにがんとは言えませんが,早めに子宮がん検診を受けましょう。

子宮頸がんの検査

 子宮頸がんの検査は産婦人科で行いますが,子宮頸部の表面から細胞を採取し,染色したものを顕微鏡で観察して判断します。これによりほとんどの子宮頸部のがんや前がん病変を発見できます。

 上記の細胞診で異常な細胞が発見された時には,膣拡大鏡で直接観察したり,組織の一部を採取して,顕微鏡で調べるなどして,総合的に診断します。

 細胞診の検査結果は以下のようにクラス分類され判定されます。

細胞診のクラス分類
クラスⅠ (陰性) 正常
クラスⅡ (陰性) 炎症はあるが正常細胞
クラスⅢ(偽陽性) 軽度~中度の異形成細胞がある
高度の異形成細胞がある
(前がん段階)
クラスⅣ (陽性) 上皮内がんを想定する
(がん病期分類・ステージ0期)
クラスⅤ (陽性) 浸透がんを想定する
(がん病期分類・ステージⅠa期以上)

 診断の結果クラスIIIa以上の場合は精密検査を行います。
 このクラス分類はあくまで個々の細胞の異常度を示したもので,
よくがんの進行度を示した病期(ステージ)と混同されることが多いので注意しましょう。
 
 
たとえばクラスⅢbであっても,異型化からがんに変わる可能性があるというレベルで,病期のⅢ期とは全く異なりますし,膣拡大鏡検査やがんの疑いがある部分を切除して検査する組織診まで行わないと,クラスⅣやクラスⅤでもがんとは断定できません。
    

子宮がん
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子宮頸がんの病期(ステージ)
 
病期 進行状態 おもな治療法
0期 早期のがん。病巣は子宮頸部の上皮内のみにとどまっている状態。 ・レーザー治療・高周波凝固治療・凍結療法・円錐切除術・子宮全摘出術
1期 a がんは子宮頸内にとどまり,顕微鏡でのみ診断できる状態。 ・子宮全摘・両側付属器切除(卵巣は温存)
・円錐切除術
・準広汎または広汎子宮全摘術(3~5mmのより深い浸潤がある場合)
・腔内照射
浸潤の深さは3ミリ以内で,広がりが7ミリ以内
浸潤の深さが3ミリ~5ミリで,広がりが7ミリ以内
b がんは子宮頸部にとどまっているが,肉眼的に明らかに診断できる状態 ・腔内照射と外照射の併用
・広汎子宮全摘術(リンパ節郭清
・術後放射線治療
がんの大きさが4cm以内のもの
がんの大きさが4cm以上のもの
2期 がんが子宮頸部を越えて拡がるが,骨盤壁または,膣壁の下1/3には達していないもの ・腔内照射と外照射の併用

・広汎子宮全摘術(リンパ節郭清)

・術後放射線治療

a 子宮頸部を越えて拡がるが,膣壁の下1/3を超えず,子宮頸部周囲の組織には拡がっていないもの
b 子宮頸部を越えて子宮頸部周囲組織に拡がっているが,膣壁の下1/3を超えず,骨盤壁に達していないもの
3期 がんが骨盤壁まで達するもので,がんと骨盤壁との間にがんでない部分を持たないもの,または膣壁の下部分1/3を越えるもの ・腔内照射と外照射の併用

・放射線治療と化学療法の併用

・免疫療法
a がんは膣壁の下方部分1/3を越えるが,子宮頸部周囲組織への拡がりは骨盤壁にまで達していないもの
b がんの子宮傍組織への拡がりが骨盤壁にまで達しているもの,または腎臓と膀胱をつなぐ尿管が閉塞され,腎機能への影響がみられるもの
4期 がんが小骨盤腔を越えて拡がるか,膀胱・直腸の粘膜にも拡がっているもの ・腔内照射と外照射の併用

・放射線と化学療法の併用

・全身化学療法,免疫療法
a 膀胱や直腸の粘膜へがんが拡がっているもの
b 小骨盤腔を越えて,肺のような遠隔臓器に転移があるもの

外科治療

レーザー治療
 レーザー光線を患部にあて,治療します。光に反応し,かつがん細胞に集まりやすい物質を注射し,低出力光線でその物質の反応によりがん組織を破壊する方法と高出力でがん病巣に広く照射し,破壊する方法があります。

高周波療法
 病巣に針を刺して電極を入れ,電極の先端から高周波電流を流します。このようにして,がんのたんぱく質を凝固させることで,がん細胞を死滅させます。

凍結療法
 金属製の針の先端から液体窒素を用いマイナス185度の超低温で冷却した高圧ガスを噴出してがん組織を凍結し死滅させます。凍結療法は切除手術に比べ,体への負担が少なく痛みがないのが特長です。凍結により死んだ細胞は時間がたつと吸収されて消失します。

円錐切除術
 がん病巣のある子宮の頸部組織を円錐状に切除します。メスの代わりに,レーザー光線や高周波電流を流す,リング状ワイヤーを使って,組織を焼き切る場合もあります。円錐切除術後は早産,流産をしやすくなるなどの問題点があります。

単純子宮全摘出術
 がんに侵された子宮のみを摘出する手術です。通常は骨盤内のリンパ節や膣は温存します。また卵巣に転移することは少ないため,これを摘出ことあまり行いませんが,閉経後であれば,ときに両側付属器切除術といい,卵巣・卵管も切除されることがあります。

広汎子宮全摘出術
 患部を子宮と膣の一部を含め,骨盤壁近くから広い範囲で切除します。子宮頸部がんに関連する所属リンパ節も同時に切除します。卵巣や卵管は可能ならば残します。
 
 最近では開腹せずに内視鏡下で,子宮やリンパ節を切除できるようになってきています。またこの手術では,膀胱や直腸の神経切断により,排尿や排便をコントロールできなくなることがあり,問題点と言えます。

骨盤内臓全摘術

 この手術は非常に進行したがんに対し,行われるもので,がんが子宮頸部だけでなく,さらに大きく拡がっている場合,子宮,膣,膀胱,大腸の一部など,骨盤内の内臓を摘出する手術です。
 
 術後,腸の一部を使った膀胱や人工肛門(ストーマ),回腸導管(回腸を用いた人工的尿路)などの形成手術が必要となります。この手術は後遺症が大きいため,近年では行われることは少なくなっています。


放射線治療
 
子宮頸がんはステージⅠ~Ⅱ期までは手術で行われることが多く,手術が困難なⅢ期~Ⅳ期は主に放射腺や化学療法で治療します。欧米ではⅠ~Ⅱ期でも放射線が使われることが多く,手術と同等の治療成績が得られています。しかし,Ⅲ期~Ⅳ期の場合,放射線治療ではあまりよい治療成績は得られていません。
 
 放射線治療には,身体の外から放射線を病巣に照射する外部照射法と,直接放射線を発生させる物質をがんのある部位にプラスチックの筒を通して挿入する膣内照射があります。病状により方法を選択します。
 放射線治療と化学療法との併用は,副作用はありますが,高い治療効果を示しています。

 放射線治療の副作用には,下痢や食欲不振などがあります。また直腸の炎症による出血がみられることもあります。 特に近接照射した場合,閉経する場合もあります。
 

抗がん剤治療
 子宮頸がんでは手術と放射線治療が中心であり,抗がん剤使用は手術前の腫瘍縮小のための補助療法として,また手術が難しいⅢ期~Ⅳ期の患者の放射線との併用で用いられることが多いようです。
 
 子宮頸がんの抗がん剤治療は特に標準的な治療として確立している組合せはありませんが,シスプラチンや5FUなどはよく使用されます。
これらは悪心,嘔吐,リンパ球減少などの副作用がみられます。

ワクチン療法
 子宮頸がんの最大の原因はヒトパピローマウィルス(HPV)によって,遺伝子が影響を受けることと考えられ,このウィルスに対するワクチンが開発されています。FDA(アメリカ食品医薬局)では,子宮頸がんを予防するワクチン(ガーダシル)を承認しました。

 このHPVは100種類以上の型があり,ガーダシルはこのなかで特に子宮頸がんに関係が深いとされる16,18型にはたらき,予防効果があることが分かっています。 現在国内では臨床試験中です。

 子宮体がん
 子宮体部がんは子宮内膜がんとも呼ばれ,子宮の内側にある子宮内膜から発生するがんです。また子宮の筋肉に発生するものに,子宮肉腫がありますが,これは悪性腫瘍であり,がんとは区別され,発生頻度も少ないものです。またこの筋肉に発症する良性腫瘍が子宮筋腫と呼ばれるものです。

子宮体がんの原因
 現在のところ,原因ははっきりと解明されていませんが,女性ホルモンのエストロゲンに長い間さらされるとがん発症リスクが高くなると考えられています。

 したがって初潮年齢が低かったり,閉経年齢が高かったり,出産経験がない人や30歳以降に出産した人は発症リスクが高くなります。

 またがん抑制遺伝子であるPETN遺伝子の異常が,子宮体がん患者の30から50%に認められ,がん発症と関係していることがわかっています。 

子宮体がんの症状
 
性器からの不正出血が90%の患者にみられます。閉経前は月経過多になったり,閉経後でも出血がみられたりします。

 またおりものの色がピンクや茶に変わったり,不快なにおいがすることもあり,貧血や下腹部痛もみられるようになります。
 

子宮体がんの検査
 
子宮内膜から採取した細胞の,顕微鏡による病理学的検査が必要です。この検査で異常が見られた場合は,子宮内膜の組織を採取し,検査します。また子宮内に内視鏡を挿入して,観察し診断します。

 ここで子宮体がんと診断されると,進行度を調査するために,X線や,CT,MRIなどの診断装置での検査も行われます。

子宮体がんの病期(ステージ)
病期 進行状態 おもな治療法
0期 子宮内膜の異型細胞が増殖している。 ・単純子宮全摘術
・卵巣,卵管摘出
・子宮内膜掻爬
・ホルモン療法
1期 a がんが子宮体部にのみ認められるもの(子宮頸部,その他にがんは認められない)。 ・単純子宮全摘術
・卵巣,卵管摘出
・子宮内膜掻爬
・ホルモン療法

(・リンパ節郭清)子宮全摘出術
b
がんの子宮筋層への浸潤が筋層の1/2以内のもの。
c
がんの子宮筋層への浸潤が筋層の1/2を越えるもの。
2期 がんが子宮体部を越えて子宮頸部に拡がったもの(がんは子宮の外に出ていない)。
a がんは頸管内の浸潤が粘膜内にあるもの。
b がんは頸管内の浸潤は粘膜を越えて深く浸潤しているもの。 ・広汎子宮全摘出術    ・リンパ節郭清
・化学療法
・ホルモン療法
3期 がんが子宮外に拡がっているが,骨盤を越えて外には拡がっていないもの。または骨盤内あるいは大動脈周囲のリンパ節に転移を認めるもの。 ・広汎子宮全摘出術    ・リンパ節郭清
・化学療法
・ホルモン療法
a がんが子宮の外の膜や骨盤の腹膜あるいは卵巣卵管に転移しているもの。あるいは腹水中にがん細胞が認められるもの。
b 腟壁に転移を認めるもの。
c
骨盤内,あるいは大動脈周囲のリンパ節に転移を認めるもの。もしくは,骨盤を支える靭帯(じんたい)に浸潤を認めるもの。
4期 がんが骨盤を越えて身体の他の部位へ拡がるか,または膀胱,あるいは腸の粘膜に浸潤しているもの。 ・広汎子宮全摘出術(リン  パ節郭清)
・化学療法
・放射線療法
・ホルモン療法
a 膀胱あるいは腸の粘膜までがんの浸潤を認めるもの。
b 骨盤を越えた遠隔臓器転移を認めるもの。あるいは腹腔内や鼠径部(そけいぶ)のリンパ節に転移を認めるもの。


子宮体がんの治療
 
 子宮体がんの治療には,手術,放射線,抗がん剤,の三大がん治療の他にホルモン療法の4つがありますが,
子宮体がんは,ほとんどが腺がんであり,子宮頸がんのように放射線による治療はあまり期待できません。
 
 したがってほとんどの場合,手術による病巣部の摘出が中心となり,放射線は補助療法として使用されることが多いようです。

 0期では単純子宮摘出手術が一般的ですが,妊娠を希望する場合などは,子宮摘出は行わず,子宮内膜掻爬とホルモン療法で治療することもあります。1期~3期は単純子宮全摘術,両側付属器(卵巣)摘出,広汎子宮全摘術などが進行度に応じて行われ,必要ならば,骨盤内あるいは大動脈周囲のリンパ節も郭清(摘出)します。

 Ⅳ期でも手術が可能ならば,拡大手術を行い,緩和療法として,放射線治療,化学療法,ホルモン療法を単独か組み合わせて治療します。

子宮体がんのホルモン療法
 
 女性ホルモンには,卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)があり,エストロゲンは子宮体がんの増殖を促し,プロゲステロンは子宮体がんの進行を抑制するはたらきがあるといわれています。

 したがってエストロゲンのはたらきを抑えたり,プロゲステロンを投与したりすると,子宮体がんの増殖を抑えることができます。これがホルモン療法(内分泌療法)です。
 
 エストロゲンやプロゲステロンががん細胞に作用するためには,がん細胞にこのようなホルモンと結合するレセプターが必要です。したがって,このようなホルモン療法は,手術の際摘出された腫瘍組織を調べ,レセプターがあることを確認してからおこなわれます。


 このようなホルモン療法は,妊娠の可能性をのこすために子宮を温存したい場合や,全身の状態が悪く化学療法が難しい場合,再発予防を目的とした場合などに用いられます。

 ホルモン療法ではでは一般にプロゲステロン製剤が使用されますが,エストロゲンががんと結びつく作用をブロックする抗エストロゲン剤のタモキシフェンやエストロゲンの分泌を抑えるLH-RHアナログ剤もあります。

 ホルモン療法の副作用として,血管内で血液が固まる,血栓症が起こることがあり,注意が必要です。