がん治療はしない方がよいという近藤理論(がん放置療法)について考える

 
 近藤理論  (がん放置療法)とは
 

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近藤誠医師が提唱する「がんは無治療がよい」とする「がん放置療法」

   
         


現在,このサイトを閲覧している方なら近藤誠医師が主張されている「がんは無治療がよい」とする「がん放置療法」をご存じの方も多いと思います。

彼は放射線科の医師であり,元慶應義塾大学医学部の専任講師です。

彼は今から20年近く前に『患者よ、がんと闘うな』(文芸春秋社)という書籍を執筆し,「抗がん剤や手術は,患者の寿命を縮めるだけでなく,いたずらに苦しめるものであるのでしないほうがよい。」という主張をされ,ベストセラーにもなりました。

その他にも,『あなたの癌は、がんもどき』(梧桐書院)や『抗がん剤は効かない』(文藝春秋)など多数の書籍を執筆されており,よく売れているようです。

現在,彼の主張を受け入れ,支持している患者さんも多く,「がんは放置するのが一番よい選択だ。」と考え,医師が治るからと手術をすすめてても,「近藤先生の言うことに間違いはない。」と,頑なに手術を拒否する方もいれば,常に近藤医師の書籍を持ち歩き,彼を批判しているブログをバッシングするなど,熱烈に信じている方も多いようです。

こうなると彼の「近藤理論」は「近藤教」とか,「がん放置教」とも呼べそうな新興宗教のような感じすらします。

この近藤誠医師の「がんは放置するのが最もよい。」という現在の医療を全面否定するような主張が,多くの患者さんに受け入れられ,多大な影響を与えているという実態を知るにつけ,このサイトでも取り上げる必要性を感じました。


 
 

「がん放置療法」をすすめる根拠は「がんもどき」と「本物のがん」

   


この近藤誠医師のがん放置療法の中核をなすものは,がんは,がんのように見えて実は転移や進行もしない「がんもどき」と転移や浸潤能力のある「本物のがん」の2種類に分けられるという考えです。

近藤医師の主張は,『医師から「がんです。」と告げられ,手術したとしても,それが本物でない「がんもどき」である場合も多く,それは放っておいても,進行や転移がみられないがんなので,治療は意味がないだけでなく,患者に負担をかけ,寿命を縮めているだけだ。

また,『「本物のがん」であったとしたら,幹細胞として発生した時点で,すでに転移を起こしているので,患者が助かることはなく,手術や抗がん剤による治療は無意味だ。ということです。

すなわち,以上の理由から『「がんもどき」あるいは「本物」どちらであっても,がん治療は無意味であるだけでなく,患者を苦しめているにすぎない。ということです。

さらには,このような理由から,『がん検診で早期に発見しても,治療は無意味であるので,がん検診はいたずらに,必要のない過剰な医療で患者に負担をかけているに過ぎない。』と主張されています。

ということは,これまで,手術や抗がん剤治療,放射線治療で患者が根治したケースは,すべて本物でない「がんもどき」であったからで,すべて無駄な治療であった,ということになってしまいます。


 
 

「がんもどき」は本当に「もどき」のままなのか?

   


現在の医学で「がんもどき」という概念はありません。実際に顕微鏡で細胞を分析してがんと診断されても,ほとんど進行や転移をしないおとなしい「がん」は存在し,そのようながんを近藤医師が「がんもどき」と呼んでいるようです。


現在,早期にがんが発見されたとして,それが転移や浸潤能力を持つがんなのか,あるいは放っておいても,進行しないおとなしいがん,すなわち近藤医師のいう「がんもどき」なのか,識別することは不可能です。

がんは,もとは正常細胞が変異し,増殖を促進させる遺伝子のはたらきが活発になったり,細胞の増殖を抑制し,ブレーキをかける遺伝子が機能しなくなったり,さらにはこれらの遺伝子のエラーを修復する遺伝子の異常などが,いくつも積み重なって起こるものです。

がん細胞は細胞分裂をするなかで,さらに変異する場合も多く,事実,分子標的薬が効かなくなるのは,がん細胞の変異による標的タンパクの喪失や変異にあるとされています。

このように考えると,正常細胞が細胞の変異により,いつ,がん化するのか予測が不可能であるのと同様に,進行の遅いがんが,いつ,変異して悪性化するのかなどという予測は今後も不可能でしょう。

また,早期に発見されたとして,それが仮に,近藤医師のいう「がんもどき」であったとして,それがいつまでも「もどき」でいるという保証はないし,また,「もどき」のままでいるという証明もされていないのです。




 
 

近藤理論の最大の問題点は,がん治療により助かる機会を失うこと

   


あなたが,仮に近藤理論を正しいと信じていると仮定しましょう。

たとえば医師から,「あなたのがんはステージTの早期がんなので,手術で治る見込みは高いでしょう。」と言われたとしましょう。

でも,近藤先生なら,『ステージTのがんでも,もし「がんもどき」なら放っておいても,大丈夫だし,もし「本物」であったら,すでに転移しているので,この治療は無駄だ。』とおっしゃるであろうから,「私は手術は受けません。」と決めたとします。

そして,無治療のまま,時間の経過と共に,がんが進行し,転移したり,さらには痛みなどを伴うような状態になった時に,あなたが,「これは本物のがんであったのだから,あのとき治療を受けておいても,すでに転移はしているであろうから,結果は同じであった。」「手術なんか身体の負担となるものなどしなくてよかった。」と,心底思えますか?ということです。


現在,多くの医師,識者が指摘し,近藤理論の大きな問題点とされているのは,
『近藤理論を信奉する患者さんが,ほぼ確実に治るであろう治療も拒否し,後で取り返しがつかなくなるケースが多発している。』という点です。

すなわち,当初は近藤理論を信じて,治療を拒否したものの,腫瘍が大きくなるにつれて,不安になり,他の病院を訪れた時には,もう手遅れで,治療のすべがなく,悔やんでも悔やみきれないという患者さんが,数多くいらっしゃいます。

また,近藤医師の書籍では,患者さんが痛みなどの苦痛を感ずるのは,抗がん剤や手術によるものがほとんどであるということが強調されています。

しかし,発生する部位や個人差にもよりますが,治療しなくてもがんは痛みを伴うことが多く,特に骨転移の痛みなどはかなりきついものがあります。




がんが発見されたとき,それは,放っておいても転移や浸潤能力のみられないおとなしいがん,すなわち近藤医師のいう「がんもどき」かもしれないし,あるいはやがて,浸潤や転移を起こす「本物」のがんかもしれません。

でも,この先どうなるのか,現在の医学では予測が不可能なので,進行したり,転移するリスクを防ぐ意味でも,治療するのがよい選択だといえるのです。


また,近藤医師の「がんは幹細胞として発生した時点で,すでに他の部位に転移しているので,治療は無駄である。」という主張も彼だけの持論であり,証明されたものではありません。

目に見えず,しかもどこに転移するのかわからないがん細胞が,発生後どの時点で転移するかという証明は困難であり,幹細胞として発生した時点で他に転移しているという証明など,どこにもないのです。

また,仮に他へ転移したとしても,免疫細胞によって排除される可能性もあり,その点も彼は無視しています。



ところで,ある臨床研究報告では,早期胃がんと診断されながら,なんらかの理由で手術が半年以上遅れたり,または手術を受けなかった人61名がその後どうなったかという,データが残されています。

その結果は,早期がんのままは23例で,残りの38例は進行がんに進んでしまっていたというものです。

この事例で言えば,早期がんでも半数以上は進行がんとなるわけで,これでも治療を拒否する理由があるでしょうか?




また,ここ8年で,ほとんどのがんにおいて,治療後の5年生存率は向上しています。

全がん協のホームページでは1997年から2005年までのがんの生存率のデータが公表されており,それによれば,1997年のすべてのがんの5年相対生存率は61.7%であり,それが2005年では68.0%と向上してます。

これは,早期発見の診断技術,手術,抗がん剤,放射線などの治療技術が進歩したからに他なりませんが,もし,近藤理論が正しいとするならば,ここ8年で「がんもどき」が,確実に増加しているということになってしまいます。


そうでしょう?

治療後5年後に生きていたということは,多くのがんで,ほぼ根治したと考えられるわけで,5年生存率が向上したということは,根治した患者さんの割合が増加したということです。



近藤理論によれば,根治できたのは,すべて「がんもどき」の場合だからであり,この理論が正しいとすれば,ここ8年で,「本物のがん」は減り,本物でない「がんもどき」が増加しているという常識では考えられない状況になってしまうのです。


 
 

近藤誠医師の近藤理論が支持される理由とは?

   


このように,理論的に考えてもおかしいと思われる近藤理論が,多くの患者さんに支持され,彼の書籍がベストセラーになるにはどのような理由,背景があるのでしょうか?

多くの,研究者や医師は,患者さんやそのご家族が,現在の医療に対する不信感を抱いているからだと指摘しています。

医師から,標準治療ではこれしかないといわれ,抗がん剤治療を受けてはみたものの,副作用に苦しみながら亡くなってしまった。

手術を受けないなら,助かるという保証はできないので,今後この病院での治療は受けないでくれ。と脅されるような言い方をされた。

標準治療で使用できる薬剤は1種類のみで,それで効果がなかったらホスピスをおすすめします。と突き放されたように言われた。など

そこには,患者さんの立場を考慮せず,マニュアル(標準治療)がすべてと,治療を強引にすすめる姿勢がある一方で,

患者さんの体やこころの苦しみを理解し,寄り添い,少しでも楽にしてあげようというあたたかさが感じられません。


また,近藤医師は,『抗がん剤をやたら使いたがるのは,製薬会社や病院や医師の利益を守ろうとする巨大利権構造が存在するからだ。』と,批判しています。

確かに,製薬会社主体で,新薬承認のための臨床試験が計画されたり,自社の薬剤を売り込むため医師へのはたらきかけが普通ではない側面はあり,近藤医師の批判は否定できない面はあります。

このような発言から「医療界の巨大悪に一人立ち向かい,真実を語る孤高の人が近藤医師」というイメージが,読者の中でできているのではないかと推察されます。

また,特に,抗がん剤治療の場合,その効果や副作用の程度は,個人差がとても大きく,投与してみないと結果は医師でもわからないという難しい側面はあるのです。

抗がん剤の副作用が強く出てしまい,苦しみながら,不幸にも亡くなってしまった場合,そのご家族が「この治療は何だったんだ?」という不信感をもたれることも当然だと思います。

このような,医療界に対する不信感や近藤医師への共感から,「がんは無治療が最もよい。」という近藤理論の支持につながったのだと考えられます。


現在,ネット上では,特に「抗がん剤は猛毒で効かない」という情報があふれています。
確かに,近藤医師が「患者よがんと闘うな」という書籍を執筆された20年近く前でしたらこのことはかなり当てはまったかもしれません。

しかし,現在では,分子標的治療薬も開発され,患者さんの遺伝子が薬剤に適合すれば,延命もかなり期待できるようになっています。

一方,放射線治療においても,IMRTや重粒子線などのピンポイント照射技術の開発により,副作用も軽く,負担のない治療法も確立されています。


確かに,がんもかなり進行してしまった場合,手術や抗がん剤などの積極的治療は,患者さんの体力を奪い,寿命を縮めるだけなので,痛みを取るなどの緩和ケアを選択すべきでしょう。

しかし,医療技術がかなり進歩している現在,がん治療をすべて拒否してしまうということは,ほぼ確実に助かるというチャンスを自ら否定してしまうことにもなるのです。


ただし,患者さんの心の底に医療に対する不安や不信感がある以上,医師側も患者さんに過剰な医療を強いていないか,反省する必要もあるでしょう。

また,コミュニケーションを十分にとって,患者さんの立場に立ち,最もよい選択肢は何なのか,患者さんやご家族と共に考えていくという姿勢が必要だと思います。

一方,患者さんの立場としては,ご自分が治療方針を理解できるまで,医師に説明を求める積極性も必要でしょうし,セカンドオピニオン,さらにはサードオピニオンまで受け,納得できる治療を受けることが大切かと思います。

今後,医療界も近藤理論をトンデモ理論と一蹴するのではなく,近藤理論が支持されるのには,それなりの理由があるということをよく考えていただき,弱者である患者さんの立場にたった医療というものを展開していただくことを真に願うものであります。 


 
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