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がんワクチンとは何か。
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最近では,がんワクチンの治療法が話題となり,TV番組でも特集が組まれるなどしてマスコミからも注目を集めています。
では,がんワクチン療法とはそもそもどのような治療なのでしょうか?
一般的なワクチンは,予防接種のワクチンと呼ばれるように,病気を予防するために使用されます。
一般的なワクチン療法とはウィルスや細菌を弱毒化,あるいは死滅したような状態にして,病気になる前に体内に投与することで,ウィルスや細菌に対する抗体をつくり,生きているウィルスや細菌が侵入したときに免疫細胞がすぐに攻撃できるようにしておくことです。
このワクチン療法のはしりといえる方法を考えた人物がイギリスのジェンナーです。
彼は牛の乳搾りをしている人が,牛の天然痘といえる牛痘にかかっても,人が感染する天然痘にはかからないことに気付きます。
牛痘では手に水疱ができるものの死ぬようなことはありません。そこで,牛痘にかかった人の水疱からとった液体を少年に投与し,その後,天然痘を少年に接種しましたが,少年は天然痘にかかりませんでした。
これが,世界ではじめての免疫療法ともいえる治療法です。
現在行われているがんワクチン療法とは,がん細胞の表面にでているがん抗原と同じものを患者に投与することで,免疫細胞にがんを認識しやすくし,がん細胞を攻撃する力を高めるという免疫療法です。
現在では,インフルエンザワクチンや子宮頸がんワクチンの接種がおこなわれていますが,これらは病気のもとになるウィルスを不活性化したものを投与することで,これらの病気の発生を予防しています。
このように一般的なワクチンは病気の予防のために使用されており,このがんワクチン療法は,すでにがんになっている患者にワクチンを投与する方法なので,本来のワクチンとは多少意味合いが異なるといえます。
そこで,アメリカではこのがんワクチン療法を「治療用がんワクチン」(Therapeutic cancer vaccine)と呼び,予防的な一般的ワクチン区別しています。
このワクチン療法で,すでに治療法もないと言われた患者のがんが消失したたという報告もあり,副作用も注射部位の発疹,かゆみや発熱の程度で,抗がん剤のように重くないことから,がん患者にとっては大きな朗報といえます。
この治療法は,免疫力を強化し,がんを攻撃する能力を高める免疫療法の一種といえます
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がんワクチン療法の種類
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がんワクチン療法は研究段階の治療法であり,まだ,標準治療として確立しているわけではありません。
がん抗原は免疫細胞が,がんを攻撃する時の一つのターゲットになるものですが,がんワクチン療法の一つの課題として,このがん抗原をどのように手にいれるのかという問題があります。
患者自身の腫瘍からがんワクチンをつくり,患者に投与する自家ワクチン療法と呼ばれる治療法があります。
これは手術をして摘出した腫瘍を病理診断用にホルマリン漬けにしたものを,特殊加工で粉砕し,無毒化して患者の体内に注射で投与するという治療法です。
この時に免疫活性剤を共に投与することが免疫効果を得る上で必要です。
このがんワクチン療法では,生検から得られる程度では,がん細胞の数が足りず,必ず手術が必用ですので,再発予防が主な目的となります。
このように患者から手術により摂取したがん細胞から抗原を得ることはある面理想ではありますが,すべての患者が手術が可能というわけではないし,保存には執刀医の協力が不可欠です。
したがって,がんの抗原を手に入れられない場合,人工のがん抗原を使用することになります。
がん抗原ではタンパクが分解された一部が提示されています。すなわちアミノ酸がつながったペプチドと呼ばれる状態です。
がんワクチン療法では,このペプチドを投与することになります。これががんペプチドワクチン療法です。
このがん抗原を,患者のがんに応じてどのように変えればよいのか,また共通のがん抗原は存在するのかという点も大きな研究課題です。
広い意味でがんワクチン療法をとらえると,このがん抗原,がんペプチドをどのように免疫細胞に認識させるのかによっても治療法が異なります。
一般的な予防接種のワクチンと同様に,皮内に注射する方法もあれば,免疫細胞の司令塔でもある樹状細胞にワクチンを投与し,がん抗原を認識した樹状細胞を患者の体内にもどすという方法もあります。
現在,がんワクチン療法はワクチンを患者に直接投与する方法と患者の樹状細胞に投与する方法とで大きく2種類に分けることができるといえます。
その認識のさせ方も樹状細胞に電気的刺激を与え,効率を高めたりする方法や,がん細胞と樹状細胞を融合させ,よりがん抗原を提示しやすくする方法も考案されました。
このほかに,温熱療法,抗がん剤,放射線治療と組み合わせたりする統合医療でより効果を高めようとしている研究機関やクリニックもあります。
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がんワクチン療法のまとめ
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がんワクチン療法はまだ,研究途上であり,効果が認められるもののまだ臨床試験のデータも十分ではありません。
これまでも,分子標的治療薬など,がん治療の夢の新薬といわれたものも登場しましたが,それだけでがんが完治するほどがんは甘いものではありませんでした。
がんワクチンとて同様で,これまでの臨床試験の結果からいっても効果は限定的といといえるでしょう。
しかし,培養施設などに多額の費用がかかる免疫細胞療法と比較すると,治療にそれほど費用がかからないがんワクチンは今後普及する可能性もありそうです。
手術,抗がん剤,放射線治療の三大治療で見放されたがん難民と呼ばれる患者が救われるケースもあり,国民の関心や期待がこの治療法に集まるのは当然ともいえます。
また,この治験に参加できる可能性があるということは費用もかからず,治療法がないと言われた患者には最大の朗報といえそうです。
中村祐輔教授も語っていましたが,がんがある程度大きくなると,がんワクチンで増やせる免疫細胞には限りがあり,がんに数で勝てないということがあるそうです。
そのようなことから考えると,放射線治療や免疫力を下げない分子標的治療薬との併用でがん細胞の数を減らすことは効果が高いといえますし,再発予防には向いた治療法ともいえます。
また,治療に大きな費用がかかるものの,がんワクチンとNK細胞を併用する治療法はより多くのがんに対応できるという意味で効果が高いともいえます。
がんを自己免疫力で治すという方法は自然の法則にかなった治療法であり,今後研究が進めば,手術,抗がん剤,放射線治療,免疫療法が,がんの四大治療法として確立する日がくると思われます。
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